陰部のしこり(女性):医師が考える原因と対処法|症状辞典

陰部のしこり(女性)

メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】

女性の陰部には膣口を取り囲むように大陰唇(だいいんしん)小陰唇()陰核()膣前庭(ちつぜんてい)などが存在しています。表面は粘膜で覆われている部分が多く、膣分泌物や経血などからの刺激や性行為による損傷を受けやすいため、さまざまなトラブルが起こりやすい部位でもあります。

  • 陰部に痛みや発赤を伴うしこりができた
  • 陰部にしこりができ、おりものの量や色、においの変化、かゆみなどの症状を伴う
  • 陰部に何の症状も伴わないしこりができたが、徐々に大きくなっている

これらの症状がみられた場合、原因としてどのようなものが考えられるのでしょうか。

陰部はさまざまなトラブルが生じやすい部位ですが、生活習慣が大きく関わっている場合があります。主な日常生活上の原因とその対処法は以下の通りです。

陰部は尿や便のカス、膣分泌物などが溜まるため不潔になりやすい部位です。また、女性の場合は下着やストッキングなどによる蒸れでさまざまな細菌が繁殖しやすいのも特徴です。陰部が不衛生な状態が続くと、細菌が繁殖して毛嚢炎などを発症する原因になることがあります。

陰部を清潔に保つには

陰部の衛生状態を維持するには、入浴時などに陰部の汚れをしっかり洗浄するのはもちろんのこと、通気性のよい下着や衣類を身に付けるようにし、月経時にはこまめに生理用品を交換することが大切です。ナプキンの常用によって陰部のかゆみが発生する場合もありますので、肌にあった下着の着用が大切です。

膣内には膣や外陰部の自浄作用を持つ常在菌が多く存在しています。このため、膣内を過剰に洗浄すると常在菌が減少して自浄作用が低下することがあります。

膣内を洗うときには

膣内は基本的に石鹸で過剰に洗浄する必要はありません。常在菌への影響が比較的少ない陰部用の石鹸で優しく擦って適度に汚れを落とすようにしましょう。

陰部のしこりは、性感染症が原因になることがありますが、性感染症のほとんどはコンドームを使用しない場合に感染します。

性感染症を防ぐには

安全な性行為を行うには、コンドームを使用することが大切です。経口避妊薬を服用中の人はコンドームを使用しないことが多々ありますが、経口避妊薬で性感染症を防ぐことはできないので注意しましょう。

日常生活上の対処法を行っても陰部のしこりが改善しなかったり、悪化したりするときには何らかの病気が原因である可能性が考えられます。婦人科や皮膚科など通いやすい病院をなるべく早めに受診するようにしましょう。

女性の陰部は不衛生な状態になりやすく、性感染症などのリスクもあるため、さまざまなトラブルが起こり得る部位です。中には、陰部に塊を触れる「しこり」が形成されることがありますが、主な原因として以下のような病気が挙げられます。

陰部の粘膜はデリケートなため些細な刺激で炎症を引き起こしたり、性感染症による症状が現れたりします。以下の病気は、症状のひとつとして陰部にしこりを形成することがあります。

外陰毛嚢炎(がいいんもうのうえん)

大腸菌やブドウ球菌などの細菌によって、陰部の毛嚢(もうのう)(毛穴)に炎症が生じる病気です。いわゆる「おでき」と呼ばれるもので、炎症を引き起こした毛嚢は内部に(うみ)などが溜まって弾力性のあるしこりを形成することがあります。また、重症化すると毛嚢同士が癒合して大きくなったり、しこりが多発したりします。

通常は強い痛みを伴い、しこり周辺粘膜の発赤や腫れを生じます。

バルトリン腺嚢胞(せんのうほう)

膣口付近の左右に存在するバルトリン腺が閉塞して内容物が溜まることでしこりができる病気です。通常は痛みなどの自覚症状を伴いませんが、しこりが大きくなると歩行時や性行為時に擦れて痛むことがあります。また、嚢胞の内部に細菌感染が生じると炎症を引き起こして、しこりが赤く腫れたり痛みを伴ったりするようになります。重症化して嚢胞内にが溜まり、(のうよう)を形成することも少なくありません。

尖圭(せんけい)コンジローマ

陰部にヒトパピローマウイルスが感染することによって、先端が尖った硬いイボを形成する病気です。性感染症の一種であり、若い世代に多くみられます。イボは通常痛みなどを伴わず、大きくなると先端が割れてカリフラワーのような形状になります。

尖圭コンジローマ
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梅毒

性感染症の一種で、梅毒トレポネーマに感染することで発症します。潜伏期間が長く、病気の進行が非常に緩やかなのが特徴です。感染して3週間ほど経過すると、陰部に小豆大の硬いしこりが現れ、さらに進行するとしこりの中心部に潰瘍が形成されるようになります。痛みは伴わず、自覚症状がないことも多々あります。その他、鼡径(そけい)リンパ節の腫れなどがみられ、治療をしなくても数週間で自然に消失しますが、治癒したわけではなくその後3か月ほどして全身に皮疹がみられる段階に移行します。

梅毒
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陰部の粘膜にはがんを始めとした以下のような病気が生じることがあり、病変部をしこりとして触れることがあります。

外陰がん

陰部に発生するがんで、早期段階では痛みやかゆみなどの症状を伴わないこともあるため発見が遅れることも少なくありません。しかし、進行すると鼡径リンパ節などに転移を生じて足の付け根にしこりを触れたり、陰部がん病変が大きくなって粘膜に潰瘍を形成し、痛みやかゆみ、熱感、出血などを引き起こしたりすることがあります。

外陰がん
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陰部良性腫瘍

陰部には、脂肪腫や線維腫、筋腫などの良性腫瘍が発生することがあります。まれな病気であり、自覚症状がない場合は治療を必要としないこともありますが、しこりが大きくなって歩行や性行為などに支障を来たす場合には切除手術が必要になることがあります。

陰部のしこりは自覚症状がないケースもあり、気付いたとしても見過ごされがちな症状のひとつです。しかし、中には重篤な病気が潜んでいる可能性もあるため注意が必要です。

特に、強い痛みや、おりものの変化、陰部のかゆみなどを伴う場合や、徐々に大きくなる場合は治療が必要な場合が多いため、早めに病院を受診するようにしましょう。

受診に適した診療科は婦人科や産婦人科ですが、かかりつけの皮膚科がある場合はそこで相談するのもよいでしょう。受診の際には、いつからしこりがあるのか、痛みやかゆみなどの随伴症状、大きさの変化、しこり以外の症状などを詳しく医師に説明するようにしましょう。また、パートナーが性感染症にかかった場合や不特定多数との性行為で性感染症のリスクが高いと考えられるときは医師に伝えるのもポイントです。

受診の目安

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • おりものが多い、臭い、かゆみ、痛みなどがある
  • しこりに触れると痛む
  • 皮膚の表面に発疹などがある
  • 以前はなかった場所にしこりを発見した

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 触ると動く小さなしこりで、長年変わらず同じ場所にある
原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。