腟がかゆい:医師が考える原因と対処法|症状辞典
メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
腟やその周辺には神経が多く走っている部分であるため、わずかな体の変化でかゆみが生じます。成人女性に起こりやすいトラブルですが、時に小児や高齢の方にも生じます。
特に注意が必要な場合は以下の通りです。
このような場合、どのような原因が考えられるでしょうか。
日常生活にも腟のかゆみの原因がある場合があります。
ナプキンや化学繊維などの物理的な刺激で外陰部のかぶれや腟の炎症が起こることがきっかけとなり、腟のかゆみやおりものの増加が生じることがあります。
化学繊維のショーツやきつすぎるズボンを着用することや、ナプキンやおりものシートなどの長時間の使用も外陰部が蒸れて、腟炎が生じる一因となります。外陰部を清潔に保ち、刺激の少ない衣服やナプキンを選ぶようにしましょう。また、規則正しい生活や栄養にも気をつけることで免疫力が上がり、腟炎を起こしづらくなります。
生活に気をつけていてもなかなか症状が改善しない場合は、自己判断で対応せず一度婦人科を受診されることをおすすめします。
腟のかゆみが起こる場合、病気が隠れている場合があります。
以下のような病気が原因で腟のかゆみが起こります
腟炎の中でも一般的なものが、カンジダという真菌(カビ)の一種が増える外陰腟カンジダ症です。性行為以外にも、妊娠や薬、糖尿病、免疫力低下に伴い起こることがあります。
女性の場合の主な症状は腟の強いかゆみとおりものの増加です。炎症により外陰部に軽いむくみ、赤みを認める場合があります。おりものは酒粕状、粥状、ヨーグルト状などと表現され、白色の塊としてみられます。その他の症状としては、外陰部や腟の痛み、性交痛、排尿障害等が挙げられます。
トリコモナス腟炎は原虫が原因です。においを伴い、泡立ったサラサラの黄色いおりものが増えます。
腟トリコモナスは性行為以外の感染経路があることが知られ、性交経験のない女性や幼児、中高年の方など幅広い年齢層で感染者がみられます。症状には腟のかゆみのほか、おりものの異常(泡状で黄白色のおりものが増える)などがあります。約10~20%は感染していても症状がないといわれています。
性器ヘルペス症は、単純ヘルペスウイルスの感染によって発症する性感染症のひとつです。単純ヘルペスウイルスは、腟や子宮頸管などにも病変を作ることがあります。そのため産道に病変がある女性が経腟分娩すると、新生児に感染を起こすことがあります。
ウイルスへの初感染だけではなく、免疫力の低下、疲労、月経によって神経節に潜むウイルスの再活性化が起こることでも症状がでます。女性の性器ヘルペスでは、おもに、外陰部、腟、肛門、太ももの皮膚のただれ、強い痛みやかゆみをともなう皮膚粘膜症状です。
尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルスによる外陰部の良性腫瘍病変です。鶏冠状といわれる特徴的な腫瘍ができます。
放置しても原則的に悪性腫瘍になることはありません。約20~30%に自然治癒が観察されますが、多くは何らかの治療が必要です。痛みなどの自覚症状はないことがほとんどですが、初期には腟のかゆみを伴うことがあります。
尖圭コンジローマにかかった方の中から、悪性型のHPVが同時に発見されることがあり、この悪性型のHPVは子宮頸がんを引き起こすことがわかっています。
ケジラミが陰毛に寄生することで生じます。一時減少しましたが、再び増加傾向にあります。おもに性行為が原因となりますが、寝具・衣類を介した家族内感染もあります。症状は外陰・腟のかゆみが主体です。
疥癬はヒザンダニの皮膚感染による感染症です。成人では性行為による感染もしばしばありますが、家族内の感染で小児に発症することもあります。近年、病院や老人ホーム、養護施設などで集団発生が増え問題となっています。主症状は腟のかゆみです。
特定の微生物以外の原因で腟のかゆみが起こる場合があります。
委縮性腟炎は、閉経後や卵巣を摘出した女性に生じます。卵巣から分泌される女性ホルモンが少なくなるため、腟粘膜が薄くなって分泌物が減り、炎症が起こりやすくなることで発症します。高齢者の腟のかゆみの場合、多くの方がこの萎縮性腟炎と診断されます。
代表的な症状としては腟のかゆみのほかに少量の不正性器出血、腟のひりひりとした感じや性交痛です。黄色いおりものが認められ、時には血が混じることがあります。
腟のかゆみは、多くの女性が経験する症状ではありますが、羞恥心などもありなかなか受診につながらない症状でもあるといえます。
しかし、かゆみが強く、なかなかおさまらない場合や、おりもののにおいや色に変化があったとき、外陰部の皮膚に変化がある場合には早めの受診が必要です。特に性感染症は自分のみでなく、パートナーも治療をしないと再発し完治しないため、注意が必要です。
受診科目は婦人科がよいでしょう。もし外陰の皮膚に異常を伴う場合は皮膚科でもかまいません。
受診の際にはいつごろから症状があるのか、何か思い当たるきっかけがあるか、外陰の皮膚やおりものなど体に変化があるかをあわせて伝えるとスムーズでしょう。