しゃっくり:医師が考える原因と対処法|症状辞典
埼玉医科大学病院消化管内科 診療部長 教授
今枝 博之 先生【監修】
急いでごはんを食べたとき、お酒を飲んだとき、緊張したとき、しゃっくりは誰でも経験したことがあるのではないでしょうか。しかし、原因や伴う症状によっては注意が必要なこともあります。
このような場合、考えられる原因にはどのようなものがあるでしょうか。
日常生活でしゃっくりを起こしやすい原因には、以下のようなものがあります。
大量の食べ物や飲み物が一気に胃に入ると、その刺激でしゃっくりの原因となる横隔膜のけいれんを引き起こします。
食べ物を一気にかき込むことや、食べすぎや飲みすぎは控えましょう。一口ずつゆっくりよく噛んで食べる、飲み物は一口ずつ飲むなど、胃に負担を掛けない食べ方をしましょう。
タバコを吸いすぎると肺への刺激となります。その刺激によって横隔膜のけいれんを誘発してしまい、日常的にしゃっくりが出やすくなることがあります。
健康面への影響を考えると禁煙が望ましいといえます。
まずは、生活する場所と喫煙する場所を分けましょう。家の外やベランダで喫煙するようにすれば、食事後やテレビを見ながらタバコを吸い続ける習慣を改善しやすくなります。また、思い切ってタバコやライターを処分したり、喫煙したくなったら深呼吸したり水を飲んだり、ガムを噛むといった代わりの行動を決めておくと控えやすくなります。
どうしても自分の力だけでやめることが難しいときには、禁煙外来などで相談するのもひとつの方法です。
しゃっくりは基本的に大きな心配のいらない症状ですが、以上のような対処法を行っても長期間続くようなときには、思いもよらぬ原因が潜んでいるかもしれません。一度医師に相談してみましょう。
ほとんどのしゃっくりは心配がいらないものです。とくに短時間で止まる場合は心配ありません。しかし、しゃっくりが長期間続く、頻繁に繰り返すようなときは、病気である可能性を考える必要があります。
しゃっくりが症状として現れることのある病気には、主に次のようなものが考えられます。
逆流性食道炎は胃液などが食道に逆流し、食道の粘膜に炎症を引き起こす病気です。
主な症状として胸焼けや、すっぱいものが胃から戻ってくる感じのする呑酸、げっぷなどが代表的な症状です。人によっては胸の痛みや咳、声がれ、しゃっくりなどの症状が出ることもあります。風邪は治ったのに咳が長引くと思っていたら逆流性食道炎だった、というケースも珍しくありません。
胃潰瘍は、ピロリ菌の感染や消炎鎮痛剤などによって胃の粘膜を保護する力が弱まり、胃の壁に潰瘍という深さのある傷ができる病気です。胃痛や吐き気、食欲不振などの症状が多く、潰瘍が深くなると血管を傷つけ吐血などが起こることもあります。
胃がんでは、初期には症状がほとんど見られないことも多いですが、胃の痛みや胸焼け、吐き気、食欲不振などの症状が見られることもあります。
いずれの場合も、代表的な症状ではありませんがしゃっくりが起こることもあるといわれています。
しゃっくりは食道と胃の病気の他にも、さまざまなことが要因となり起こることがあります。
脳血管障害とは、脳の血管が詰まる脳梗塞や血管が破れる脳出血、動脈のできたコブが破裂してくも膜の下に出血が広がるくも膜下出血といった脳卒中のことです。これらの病気にかかったことがある人で、しゃっくりが出やすくなる・繰り返すことがあります。
長期にアルコールを飲み続けると、脳の機能が影響を受け、さまざまな症状が現れることがあります。しゃっくりは横隔膜のけいれんですが、この横隔膜の動きを調整する神経などに影響が出ると、しゃっくりの原因となることがあります。
他の症状には、主にアルコール血中濃度が下がってきたときの手の震えや、幻覚、多量の汗、時間や場所がわからなくなるなどアルコール依存症の症状があります。
一部の薬の副作用にしゃっくりがあります。主なものとして、気管支拡張薬や血圧降下薬、ステロイド薬といった薬の一部で出やすいことが知られています。
新しい薬を飲み始めた後にしゃっくりが止まらないようなことがあれば、処方を受けた病院で相談してみましょう。
短期間でしゃっくりがおさまらず、数日続く場合や生活に支障を及ぼす程度の症状が見られるときは医師の診察を受けましょう。
しゃっくりの原因となっていることによって専門の科目は分かれますが、まずは近くの内科やかかりつけの医療機関などで相談するとよいでしょう。
受診の際には、しゃっくりがいつから、どのぐらい続いているか、治療中の病気や服用している薬はないかのほか、既往歴について伝えるとよいでしょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。