息が苦しい:医師が気にする危ない症状|症状辞典
急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
国際医療福祉大学救急医学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 救急科部長
志賀 隆 先生【監修】
息の苦しさで注意が必要な場合とは、じっとしているのに息苦しい、時間が経っても苦しさが取れないなどが挙げられます。
こういった場面で考えられる病気や受診のポイントとはどのようなことでしょうか。
階段を駆け上がったなど、運動による息苦しさではない場合、その原因は何らかの病気の症状である可能性があります。
息苦しさを引き起こす代表的な病気には、以下のようなものが挙げられます。
急に起こる息苦しさは、早めの受診や治療が必要なことが多いため注意が必要です。以下は、急に息苦しさが生じる代表的な病気です。
肺炎・気管支炎はその名の通り、肺もしくは気管支に炎症が起こる病気です。
症状としては、発熱や全身のだるさ、関節の痛み、咳や痰、胸の痛みなどが多くみられます。
気胸とは、肺に小さな穴が開くなどで肺が膨らみにくくなり呼吸が苦しくなる病気です。
息苦しさを強く感じることが多いほか、咳などの症状も多いといわれています。
比較的若い痩せ型で高身長の男性によく起こるほか、たばこを吸っている方に起こりやすい病気です。
もし心当たりがあれば早期の治療が必要なので、早めに病院の受診を検討しましょう。
アナフィラキシーショックとは、特定の成分に対して体の抗体が異常に反応してしまうことでさまざまな症状が出る、アレルギー症状の一種です。
そのため、虫に刺された、初めての食材を食べた、元々さまざまなものにアレルギーを持っている方などが突然息苦しさを感じた場合には可能性の1つとして考えられます。
息苦しさのほかに、嘔吐や皮膚が赤くなる、意識障害などが代表的な症状で、もしこのような症状があった場合には迅速な治療が必要となります。
気管支喘息は慢性的な気道の炎症が起こる病気ですが、これがほこりやペット、疲労やストレスなどが引き金となって炎症が急激に悪化し発作が起こると息苦しさを強く感じることがあります。
喘息の発作が起こると強い息苦しさや咳によって呼吸が困難になるほか、息に合わせて“ヒューヒュー”という音が聞かれます。
もともと喘息を持っている方にこのような症状が現れた場合はすぐに受診した方がよいでしょう。
パニック発作・過換気症候群とは、ストレスや緊張・不安などによって必要以上に呼吸を繰り返してしまう病気です。
症状による苦しさから強い恐怖を感じ、パニック状態になってしまうこともあります。
狭心症・心筋梗塞とは、心臓を動かすために必要な酸素や栄養を送っている血管の一部が狭くなったり詰まったりする病気です。
突然締め付けられるような胸の痛みや冷や汗が代表的な症状で、場合によっては肩や背中が痛むように感じる場合もあります。もしこのような症状がある場合にはすぐに病院の受診を検討しましょう。
心筋梗塞などにより急に心臓の機能が低下し、肺がむくむことにより息が苦しくなります。また、元々慢性心不全といわれていた方が風邪などきっかけに急に悪化する場合もあります。
急な息苦しさを引き起こす病気のほかに、長く続く息苦しさを引き起こす病気もあります。
貧血とは、血液がなんらかの原因で酸素を運びにくくなってしまっていることで全身の酸素が不足してしまう病気です。
貧血が改善しない限り酸素が不足している状態が続くため、息苦しさを感じやすい状態が続くと考えられます。
またそのほかにも、酸素不足による疲れやすさや立ちくらみ、動悸といった症状も現れます。
慢性心不全とは、さまざまな原因によって心臓そのものの機能が低下する病気です。
特に心臓の大切な役割である血液を全身に送るというポンプ機能が低下してしまうため、全身が酸素不足の状態となって息苦しさを感じるほか、咳や痰、体のむくみや脈拍が早くなるといった症状も起こります。
慢性閉塞性肺疾患とは、肺の機能そのものが低下し肺が膨らみにくくなり空気の通り道が狭くなる病気です。たばこを長年吸っている人に多い病気で、息苦しさのほかにも咳、痰など、さまざまな呼吸にまつわる症状を引き起こします。
肺塞栓症とは、血栓(血の塊)などが血流に乗って肺動脈に移動し、血管を詰まらせる病気です。
飛行機や車で長時間移動したように長らく動きを制限された状態や、肥満や妊娠、悪性腫瘍などが原因で発症しやすいと考えられています。息切れのほか、胸痛や喀血*、ふらつき、失神などの症状を伴います。
命に関わる可能性があるため、早期の診断と適切な治療が重要です。
*喀血:呼吸器から生じた血が口から出ること
息切れが生じるまれな病気としては、酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症が挙げられます。まれな病気は専門医でなければ診断が難しく、複数の医療機関を受診して診断に結びつくことも少なくありません。気になる症状がある場合は、医療機関の受診を検討しましょう。
急に息苦しさを感じる場合は、比較的早期の受診が必要なものが多いと考えられます。
受診する際にはいつから息苦しさが出ているのか、症状が出たきっかけは何か、また息苦しさのほかに症状はあるかなどを医師へ伝えることが大切です。
なかには、放置する期間が長ければ長いほど、症状はより深刻になっていく病気もあります。そのため、たとえ息苦しさの程度が軽いとしても、症状が長く続く場合には、原因を調べるために医療機関への受診を検討しましょう。また、以前ならできていた運動が息苦しさのためできなくなっている場合にも、早めの受診を検討しましょう。
長い間息が苦しい際に考えられる病気は多岐にわたるため、まずは近くの内科を受診し原因などについて相談するとよいでしょう。
受診する際には、いつから息苦しさがあり、ほかに症状があるか、またどういった場面で症状が強く出るかなどを伝えるとスムーズです。
日常生活上の習慣などによって息苦しさが生じる場合もあります。
激しい運動をすると、エネルギーを作り出すために脳がより多くの酸素を取り込もうと指令を出すため息切れにつながります。
運動の後にはしっかり体を休めましょう。安静にしても息切れが続く場合は何らかの病気が原因となっている可能性があります。
年を重ねると、肺や呼吸筋などの呼吸に関係する器官や筋肉のはたらきが少しずつ低下するため、息苦しさを生じることがあります。
筋力の低下を防ぐため、無理のない範囲でウォーキングや腹式呼吸などを心がけるとよいでしょう。加えて、たばこは呼吸機能の低下を招くため、喫煙している方は禁煙を心がけることも重要です。
上で述べたような日常生活上の対処を行っても息が苦しい症状が続く場合、背景に思わぬ病気が隠れていることがあります。軽く考えず、できるだけ早めに病院の受診を検討しましょう。