喀血:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典

喀血

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • コップ半分程度以上の血を吐いた
  • 意識が遠のく、息が苦しいなどの症状がある

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 血痰が続いている
  • 咳、体重減少、微熱がある
  • 周囲に結核にかかった人がいる

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 鼻血や歯茎からの出血など原因がわかっており、その後繰り返さない

医療法人えいしん会 理事/病院長、岸和田リハビリテーション病院 喀血・肺循環センター長/呼吸リハビリセンター長/喀血研究所長

石川 秀雄 先生【監修】

喀血(かっけつ)とは、気管支や肺などの呼吸器臓器から出血した血液を口から吐くことを指します。多くの場合、咳と共に泡の混じった真っ赤な血液を吐き出し、気道出血(airway bleeding)とも表現します。

  • 突然、またはかぜのような咳・痰などの症状が続いて、咳をしたら真っ赤な血が口から出た
  • 最近少し息苦いような感じがして、たまに咳と共に血が出ることがある

喀血は呼吸器からの出血によるもので、通常は何らかの呼吸器系の病気の症状の1つとして現れます。喀血と似た症状に吐血(胃など消化管からの出血)がありますが、いずれにせよ速やかに受診するべき症状となります。

喀血の多くは気管支や肺の病気によるもので、さまざまな病気が原因となって起こります。

気管支拡張症

気管支拡張症とは、何らかの原因によって気管支が広がってしまった状態を指します。

気管支が広がると痰と咳が出るようになり、気管支の血管が傷ついて喀血が生じることもあります。また、肺の感染症を合併することが多く、その場合には発熱したり呼吸が苦しくなったりすることもあります。

気管支拡張症
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感染症(結核、真菌症、非結核性抗酸菌症など)

結核菌が原因となる結核、真菌(カビ)に感染する肺真菌症(特に肺アスペルギルス症)、近年世界的に急激に増加しつつある非結核性抗酸菌症など、さまざまな肺の感染症でも症状の1つとして喀血がみられます。これらの病気は、喀血のほかに咳や熱が長く続く、体のだるさ、息苦しさなどが典型的な症状です。

結核
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非結核性抗酸菌症
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肺がん

肺がんとは、肺に発生するがん悪性腫瘍(あくせいしゅよう))のことで、肺そのものに発生したものを原発性肺がん、ほかの臓器から転移したものを転移性肺がんといいます。

肺がんの種類や発生部位、進行度によって症状は異なりますが、主に咳や痰、喀血、体重の減少、体のだるさ、胸痛などが現れます。進行がんにならないと無症状であることが大半です。

肺がん
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肺塞栓症

肺塞栓症とは、肺動脈に血液の塊(血栓)が詰まる病気のことです。

もっとも多い症状が息苦しさで、次いで胸痛(息を吸い込むとき)がよく起こるといわれています。喀血を伴うことも多く、重症の場合には失神やショックに陥ることもあるため、速やかな受診が必要です。

肺塞栓症
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特発性喀血症

肺に基礎疾患がまったくないのに喀血することがある場合、特発性喀血症の可能性があります。特発性喀血症の場合は、喀血以外には症状は一切ありません。喀血の原因のうちの約2割を占め、3番目に多い原因です。

喀血は窒息による死亡が10~20%にもおよぶ(喀血で入院した患者さんの1か月以内の院内死亡率)生命に関わる病気であり、できるだけ早く病院を受診する必要があります。特に呼吸器内科を受診してください。また、特発性喀血症以外の約80%には背景に肺の病気があります。

喀血であると判断ができる場合には呼吸器内科への受診でよいですが、吐血などとの区別が自分では分かりづらいこともあります。迷う場合にはまず内科を受診しましょう。

診察を受ける際には、いつ何がきっかけで喀血が起きたのか、どのくらいの出血量か、血は何色か、ほかの症状はあるのかなどを具体的に伝えましょう。出血量や血の色に関しては口頭で伝わりにくいことが多いので、スマートフォンなどで写真を撮っておくのもよいでしょう。

喀血は一般的に何らかの病気が原因で起こります。そのため、日常生活上の原因は特にありません。喀血が生じた場合、まずは呼吸器内科か内科を受診しましょう。

また、日常生活の中で喀血を悪化させることや、別の原因の出血を喀血と勘違いすることもあります。

痰に血液が混ざった状態を指す“血痰(けったん)”が出ている際は、肺の血流がよくなるようなことをすると喀血を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。具体的には、入浴や家事などを含めた運動、飲酒などを控え、安静にすることを心がけましょう。血痰の症状が続いている場合や量が多い場合などには、医療機関の受診も検討しましょう。

鼻血は乾燥や鼻炎などで鼻の粘膜が傷つくことによって起こることがほとんどですが、量や頻度によっては何らかの異常が疑われることもあります。また、鼻血が出た際に横になると血液が喉を伝って口に入ってきたり、咳込むことでまるで“血を吐いた”ように見えてしまったりすることがあります。

歯を磨いたり、食事をしたりしたときに歯茎から出血することもあります。特に歯茎が炎症を起こしているときは、出血する頻度や量も増えるため、歯茎からの出血を喀血と勘違いする可能性があります。

前述のような原因が思い当たらない場合には、思いもよらない病気が背景にある可能性があります。軽く考えず、一度受診して医師の診察を受けるようにしましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。