口をもぐもぐさせる:医師が考える原因と対処法|症状辞典

口をもぐもぐさせる

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 意識がなくなったり戻ったりする
  • 意識がなく、けいれんを起こしている

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 抗精神病薬などの薬剤を使用後、口元や手足、全身が無意識に動いてしまう
  • 体のどこかにこわばりやつっぱり感がある

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 短期間で改善し、その後繰り返さない

国立精神・神経医療研究センター 訪問看護ステーション 施設長

吉田 寿美子 先生【監修】

自分の意思とは無関係に口をもぐもぐしてしまうときには、どんな原因が考えられるのでしょうか。ここでは口をもぐもぐさせる原因として考えられることを解説します。

病気で口をもぐもぐさせる場合の主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。

てんかんとは、脳の神経細胞に異常な電気的興奮が生じ、発作的にけいれんや意識障害を生じる病気です。脳のさまざまな場所で生じるため、その場所に応じて多彩な症状がみられます。てんかんの発作には大きく“全般発作”と“部分発作”があり、口をもぐもぐさせる場合には部分発作が疑われます。中でも“複雑部分発作”は成人のてんかんでもっとも多く認められる発作のタイプであり、特に高齢者のてんかんでは約半数がこの発作であるといわれています。

複雑部分発作では、意識が薄くなったまま無意識にさまざまな行動を起こし、口をもぐもぐさせる、手足をもぞもぞ動かす、顔をなでる、歩き回るといった様子がみられます。

てんかん
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遅発性ジスキネジアとは、抗精神病薬などを長期間にわたって使用すると現れることがある、無意識に生じる体の動きを指します。遅発性ジスキネジアでは、口をもぐもぐさせるほか、繰り返し口をすぼめたり突き出したり、舌を左右に動かす、歯を食いしばるなどの口唇周囲の症状や、手足が勝手に動いてしまう、手に力が入って動かしにくいなどの全身症状がみられます。

遅発性ジスキネジア
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特発性口腔顔面ジスキネジアは、認知症やアルツハイマー病、統合失調症、自閉症などの中枢性の病気が原因で遅発性ジスキネジアと同じような症状が現れる病気です。サイズの合わない入れ歯の使用が発症リスクになるとも考えられています。特発性口腔顔面ジスキネジアの場合、会話や食事、睡眠、口を大きく開けるなどの動作によって症状が消失することが特徴です。

意識がなくなり、口をもぐもぐさせたりする場合には、てんかんの疑いがあります。てんかん発作は一日中続くわけではないため、受診にあたっては発作の起きやすい時間帯や頻度、状況、症状などを把握し医師に伝えることが重要です。発作が疑われる状況に出くわしたら、ご家族がカメラ付き携帯電話やスマートフォンでその状況を撮影し、医療機関に提示することで診断につながるケースもあります。このような場合には、脳神経内科、脳神経外科、精神科を受診しましょう。

また、治療のため何らかの薬剤を使用しており、口をもぐもぐ動かしてしまうなど無意識の体の動きを認めた場合には、決して自己判断で使用をやめることはせず、医師に相談しましょう。受診科目はかかりつけもしくは神経内科、精神科が適しています。

日常生活上の原因によって口をもぐもぐさせてしまうこともあります。原因として、以下のようなものが挙げられます。

ストレスが原因で口腔内環境が悪化し、違和感や癖によって口をもぐもぐさせてしまうことも考えられます。ストレスはむし歯歯周病顎関節症など口腔内のさまざまな病気を引き起こす原因になるほか、無意識に口を動かしてしまうなどの癖を習慣付けてしまうこともあります。口をもぐもぐさせることが癖になっていると、なかなか気付けずに慢性化してしまうことも考えられます。

ストレスによって口をもぐもぐさせることを改善するためには

まずは、口をもぐもぐさせてしまっている癖に気付くことが大切です。付箋などに“口をもぐもぐさせない”と書いて目に付く場所に貼っておいたり、それを目にしたときに口に力が入っていたら、力を抜いて深呼吸したりするとよいでしょう。口の中が乾燥していたり、口の周りが緊張したりしている場合には、ガムを噛むことで唾液の分泌が促進され、顔や顎の筋肉が刺激されてリラックス効果も期待できます。食事の際にゆっくり噛んで食べることも効果的です。このほか、ストレスを改善するため十分な睡眠や規則正しい食生活などを心がけましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。