唇のできもの:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典
メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
唇は他部位よりも角質層が薄く、ターンオーバー(表皮の生まれ変わり)が速いことが特徴です。また、会話や食事などによって物理的な刺激を受けやすい部位であるため、ダメージを受けてさまざまな症状が現れることがあります。その中でも唇のできものはよくみられる症状です。
このような症状がみられた場合、考えられる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
唇のできものは、日常生活での習慣が原因になっていることがあります。唇のできものを引き起こす日常生活上の原因には以下のようなものが挙げられます。
唇は角質層が薄く、バリア機能が低いため、乾燥や日焼けなどの刺激によって荒れやすい部位です。このため、些細な刺激で炎症を起こして湿疹ができることがあります。
唇の荒れは、リップクリームによる保湿や日焼け止めなどを用いてセルフケアを行うとよいでしょう。ただし、自身の肌質に合わないケア用品を使用すると炎症を助長することがあるため、使用して刺激を感じるようものは続けて使用しないようにしましょう。
唇が乾燥しやすい冬場などは舌舐めずりが癖になっている人も多いでしょう。しかし、舌舐めを繰り返すことで、唾液中の細菌がダメージを受けた唇に炎症を起こしてできものの原因となることがあります。
舌舐めずりは、唇がカサカサと乾燥しているときに無意識に生じやすいです。そのため、日頃からこまめにリップクリームをつけて唇を保湿するようにしましょう。また、冬場の外出時にはマスクを着用するのもおすすめです。
日常生活上のセルフケアや対処法を行っても症状が改善しない場合は、何らかの感染症や病気が潜んでいる可能性があります。中には、口唇がんなどのように早期治療が望まれる病気のこともあるため、受診に適した診療科を早めに受診するようにしましょう。
唇は紫外線や乾燥などの刺激によってダメージを受けやすいため、びらん(ただれ)やできものができやすい部位ですが、以下のような病気が原因の場合もあります。
細菌やウイルスに感染することで唇にできものができることがあります。唇のできものの原因となる主な感染症は以下の通りです。
単純ヘルペスウイルスの感染が原因となり、唇やその周囲に水疱が形成される病気です。水疱は癒合して大きくなり、内部に膿が貯留した膿疱になることもあります。口唇ヘルペスでは、ピリピリとした痛みを伴います。また、一度感染するとウイルスは体内に潜んでいる状態となり、疲れが溜まったときや体調が悪いときなどにウイルスが活性化して再発することが特徴です。
水痘、帯状疱疹ウイルスの感染が原因となって全身にかゆみを伴う水疱ができる病気です。帯状疱疹の場合は限られた神経支配領域のみに水疱が現れます。体幹や頭頚部と同様に、唇でも片方のみにできることが多く、ピリピリとした神経痛を伴うことがあります。一方、水疱瘡は小児に多くみられ、全身の水疱と高熱、咽頭痛などの症状がみられます。
いわゆる、いぼと呼ばれるできもので、ヒトパピローマウイルスに感染することで発症します。疣贅では、長細く先端が白っぽいできものが形成されます。通常は痛みや熱感などを伴うことはありません。
唇のできものは、唇自体に発生する病気によって引き起こされることがあります。
皮脂腺がない唇に異所性に皮脂腺が形成される病気で、皮脂腺が白いポツポツとしたできものとして触れるようになります。フォアダイスでは、痛みや腫れなどの症状は伴いません。
唇にできるがんで、多くは下唇にできるとされています。早期段階では痛みを伴わないしこりが触れるのみで発見が遅れることも少なくありません。進行すると唇の腫れや病変部(病気による変化がみられる箇所)の潰瘍がみられ、痛みや出血を伴うようになります。
唇はさまざまな刺激によって荒れやすく、できものができやすい部位であるため、唇にできものができたからといって病院を受診する人は少ないでしょう。しかし、中には感染症や唇の病気が潜んでいる可能性もあることや美容的な観点からも避けたいものであるため、症状が改善しない場合は病院を受診することがすすめられます。
できものの数が多い場合、痛みや出血を伴う場合や美容的に気になる場合、できものが徐々に大きくなるような場合には病院を受診しましょう。受診に適した診療科は皮膚科ですが、口の中にもできものがある場合には口腔外科でもよいでしょう。
また、受診時には、いつからできものが現れたのか、以前も同じようなできものができたことがなかったか、できもの以外の随伴症状などをしっかりと医師に伝えるようにしましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。