唇の乾燥:医師が考える原因と対処法|症状辞典
メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
唇は角質層が薄いため、さまざまな刺激によって炎症を起こし、湿度の低い冬場には乾燥しやすくなります。唇の乾燥は日常的に起こりうるトラブルのひとつであるため軽く思われがちですが、長引く症状は何らかの病気のサインである可能性もあります。
このような症状がみられた場合、どのような原因が考えられるでしょうか。
唇の乾燥は、日常生活上の習慣などが原因の場合もあります。主な原因としては以下のようなものが挙げられます。
唇は飲食物や会話時の開閉などによる物理的な刺激を受けやすい部位です。このため、他部位よりもこまめなセルフケアが必要となりますが、十分なケアを怠った状態が続くと乾燥を引き起こすことがあります。
唇は水分が失われやすいため、保湿効果に優れたリップクリームやリップポマードでケアする必要があります。また、唇は過敏な部位であるため、自身の肌質に合わない刺激を感じるようなケア用品は炎症を招くことがありますので、無理に使用を続けないようにしましょう。
唇は常に外界に晒されており、日焼け止めを塗り忘れやすい部位であるため、思わぬ日焼けをすることが多々あります。日焼けによる唇の炎症は、水分の喪失による乾燥を引き起こすため注意が必要です。
唇の日焼けは外出時や運転時に、日焼け止め効果のあるリップクリームなどを使用することで予防することができます。長時間の外出時には、知らず知らずの間にリップクリームが落ちていることもあるため、こまめに塗りなおすようにしましょう。
唇は飲食物の刺激をダイレクトに受けるため、過度な塩分や香辛料、アルコールなどは唇にダメージを与えて乾燥の原因になることがあります。
唇への刺激を抑えるためには、刺激物の摂取を控えることが大切です。特に唇の荒れがある場合は、刺激物はなるべく控えるようにしましょう。
これらの日常生活上の習慣を改善しても、症状がよくならない場合や悪化する場合は何らかの病気が潜んでいたり、セルフケアだけでは改善しない炎症が生じていたりする可能性が考えられます。放置せずに、症状に適した診療科を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。
唇の乾燥はよくみられるトラブルですが、以下のような病気が原因で引き起こされていることもあります。
唇の病気によって乾燥が生じることがあります。主な原因には、以下のような病気が挙げられます。
唇に炎症を生じる病気です。多くは、外気の乾燥や紫外線の刺激などによって唇のバリア機能が低下することが原因です。飲食物や唾液などの些細な刺激にもしみるような痛みを生じ、悪化すると唇の皮が剥けたり、亀裂や出血を引き起こしたりすることがあります。
小児から高齢者まで幅広い年代に発症しますが、特に小児では口唇炎による唇の乾燥を気にするあまり、唇への舌舐めを繰り返して炎症が唇周囲の皮膚にまで波及することがあります。
特定のアレルゲンに晒されることで、一時的に蕁麻疹や皮膚のかゆみなどを引き起こす病気です。唇にアレルゲンが触れてアレルギー反応による炎症が生じ、それによって唇に保持されていた水分が失われて乾燥の原因となることがあります。
唇以外の部位にも蕁麻疹やかゆみなどを伴うことが多く、重症な場合には嘔吐や下痢、呼吸困難などを生じることがあります。
唇は細菌やウイルス、真菌などに感染して皮疹を生じることがあります。代表的なものはカンジダやヘルペスで、唇の表皮にダメージを与えて乾燥を引き起こすことがあります。症状はそれぞれの感染症によって異なりますが、一般的には皮疹以外の部位に乾燥が生じやすくなります。
唇の乾燥は、以下のような全身性の病気の一症状として現れることがあります。
新たな粘膜や表皮の形成に必要なタンパク質などの栄養素やビタミンB2、B6、Cなどのビタミン類が不足すると唇の荒れによる乾燥を生じやすくなります。
栄養素の不足による唇の乾燥は、亀裂や表皮剥離、口角炎などを併発することが多く、出血を伴うケースも少なくありません。
唇は水分保持能力が低いものの、体内のさまざまな部位の中でも高い水分保持量があります。また、角質層が薄く表面から真皮までの距離が短いため、深層部の変化が表面に現れやすく、脱水症に陥ると唇の弾力性が失われたり、乾燥がみられたりするようになります。
脱水症では、そのほかにも動悸やめまい、吐き気、頭痛など、全身にさまざまな症状が現れます。
唇には口唇腺と呼ばれる小唾液腺が開口しており、唇に潤いを加える役割も担っています。シェーグレン症候群は自己免疫性疾患のひとつであり、唾液腺が侵されることで唇や口腔内の乾燥がみられます。また、涙腺も侵されるため、目の渇きや痛みを伴うことが多く、関節痛や疲労感、抑うつ気分など全身にさまざまな症状を引き起こすことがあります。
唇の乾燥は日常的によくみられるトラブルですが、中には重篤な病気が潜んでいることもあります。
リップクリームなどのセルフケア用品を使用しても症状が一向に改善しない場合、皮疹やびらん、出血、亀裂などの症状を伴う場合、痛みが強い場合、唇以外の部位に何らかの症状がある場合には病院を受診することがすすめられます。
受診に適した診療科は皮膚科ですが、唇以外の部位にも症状がある場合や栄養不足の自覚がある場合には内科やかかりつけ医に相談するのもよいでしょう。また、精神的な原因で食思不振になっているような場合には精神科や心療内科もおすすめです。
受診の際には、症状が現れた時期や誘因、セルフケアの有無や効果、乾燥以外の唇症状、全身症状などを詳しく医師に説明するようにしましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。