口の中が荒れる:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医歯学専攻 老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野 教授、東京医科歯科大学病院 摂食嚥下リハビリテーション科 科長
戸原 玄 先生【監修】
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医歯学専攻 老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野 講師
山口 浩平 先生【監修】
口の中は細菌が繁殖しやすく、飲食物による刺激を日常的に受ける部位です。また、口の中はデリケートな粘膜で形成されているためダメージを受けやすく、さまざまなトラブルを引き起こします。中でも“口の中の荒れ”は日常的によく見られる症状であり、原因は多岐にわたります。
これらの症状が見られた場合、原因としてどのようなものが考えられるのでしょうか。
口の中の荒れは日常生活上の好ましくない習慣によって引き起こされることがあります。原因となる主な習慣とそれぞれの対処法は以下の通りです。
口の中は細菌が繁殖しやすく、不衛生になりやすい部位です。このため、些細なきっかけで口の粘膜に炎症を引き起こすことがあります。
毎食後ごとの丁寧なブラッシングはもちろんのこと、歯の隙間の汚れなどは歯間ブラシできちんと取り除きましょう。また、定期的に歯科医院を受診して歯垢除去などのクリーニングを受けることも大切です。
極端に偏った食生活は口内炎の原因にもなり、口の中の荒れを引き起こすことがあります。
たんぱく質やビタミン、ミネラル、糖質、脂質などの栄養をバランスよく含んだ食事を心がけましょう。また、香辛料や過度な塩分は粘膜に刺激を与えて炎症を引き起こすことがあるため、ほどほどに控えましょう。
唾液には口の中の衛生状態を維持する自浄作用があります。このため、口の中が乾燥することによって自浄作用が低下し、粘膜の荒れを引き起こすことがあります。
こまめに水分補給を行い、口の中の乾燥が気になるときにはガムを口にするなど唾液の分泌を促す対策を行いましょう。
日常生活上の対処法を講じても症状が改善しない場合は、思わぬ病気が原因の可能性もあります。軽く考えずにそれぞれの症状に合わせた診療科を受診して、早めに検査・治療を受けるようにしましょう。
口の中にはさまざまなトラブルが起こり得ますが、口の中が荒れるのはよく見られる症状のひとつです。原因はさまざまですが、中には病気によって引き起こされるものもあります。口の中の荒れを引き起こす病気には以下のようなものが挙げられます。
口の中の荒れは、口の中の粘膜に生じる病気によって引き起こされることがあります。原因となる主な病気は以下の通りです。
特定のアレルゲンにさらされることによって種々のアレルギー症状を引き起こす病気です。口腔内はアレルゲンとなりうる飲食物にさらされる機会が多く、アレルギー反応を生じることで口腔粘膜に痛みやかゆみなどを引き起こし、重症の場合にはただれや発赤、水疱などを形成します。また、くしゃみや鼻水、蕁麻疹、目のかゆみなど口の中以外の部位のアレルギー症状が見られることもあります。
口腔内の粘膜は非常にデリケートな構造をしており、熱いものを食べたり飲んだりすることで粘膜が傷つき、痛みを伴うただれを生じることがあります。通常は数日で自然に軽快しますが、病変部に細菌感染を生じると化膿し、強い痛みや熱感を生じることがあります。
口腔内の粘膜に表面が白い偽膜で覆われた潰瘍を形成する病気です。発症原因はさまざまですが、栄養不足やストレス、ウイルス感染、物理的なダメージなどが挙げられます。
一般的には病変部を中心に痛みが生じ、悪化すると出血やびらんなどを引き起こすことも少なくありません。また、ウイルス感染によるものでは発熱や咽頭痛などの症状を伴うこともあります。
口の中にカビの一種であるカンジダが異常増殖する病気です。カンジダは皮膚や口腔内の常在菌ですが、体調が悪いときや疲れがたまっているときなど、免疫力が低下しがちになると異常増殖して発症することがあります。
口腔カンジダでは、口の中にカッテージチーズのような膜を形成します。通常は痛みやかゆみなどを伴わないのが特徴で、膜が剥がれると粘膜のびらんや出血、痛みなどを引き起こすことがあります。
口の中に発生するがんです。早期の段階では、病変部に潰瘍やしこりを形成するのみですが、徐々に病変が大きくなるのが特徴です。凹凸のある硬いカリフラワー状のしこりを形成し、粘膜のびらんや出血を伴うようになります。また、頸部リンパ節に転移しやすいのも特徴のひとつです。
口の中の荒れは、口の中以外の部位に生じる病気によって引き起こされることがあります。原因となる主な病気は以下の通りです。
溶連菌に感染することによって、扁桃炎を引き起こす病気です。非常に強い喉の痛みや高熱、倦怠感などの症状が現れ、口の中や舌に発赤・びらん、全身に細かく赤い発疹が見られるのが特徴で小児に多く発症します。また、症状が軽快した後に腎炎や弁膜症を発症することがあるため、治癒後でも慎重な経過観察が必要になります。
頻回な嘔吐を生じると口の中が胃酸によってダメージを受け、粘膜が荒れることがあります。また、栄養が不足しがちになることで粘膜の修復が正常に行われず、荒れが長引いたり悪化したりして化膿することも少なくありません。
口の中の正常な粘膜を形成するには、たんぱく質やビタミン類などの栄養素が必要であり、極端な栄養不足が長期間にわたって続くと粘膜の荒れを引き起こすことがあります。
現在では正常な食生活を営んでいれば栄養不足に陥ることはまずありませんが、消化管の異常による栄養吸収障害、神経性食思不振症やうつ病などによる栄養摂取量の減少などによって栄養不足に陥ることがあります。
口の中の荒れはさまざまな原因によって引き起こされますが、中には思わぬ病気が潜んでいることもあります。早急な治療が必要となる場合もありますので、荒れが続くときは病院を受診することがすすめられています。
特に、口腔内の痛みやかゆみなどを伴う場合、何らかの全身症状がある場合や荒れが改善しない場合は早めに病院を受診するようにしましょう。
受診に適した診療科は口腔外科・頭頸部外科や皮膚科ですが、明らかな全身症状がある場合はかかりつけの内科などで相談するのもひとつの方法です。受診の際には、いつから荒れを生じているのか、その誘因、それに伴って生じている症状や現在罹患している病気などを詳しく医師に伝えるようにしましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。