唇が荒れる:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典

唇が荒れる

唇は皮膚のバリア機能を持つ角質層が非常に薄いため、些細な刺激でダメージを受けやすく“荒れ”が生じやすい部位です。唇の荒れは日常的によく起こりうるトラブルですが、長引く唇の荒れや他の症状を伴う場合は思わぬ病気が潜んでいる可能性もあるため注意が必要です。

  • セルフケアを行っても唇の荒れが改善せず、再発を繰り返す
  • 唇や口角のただれ、亀裂、出血などの症状を伴い、強い痛みがある
  • 唇だけでなく、全身のさまざまな部位の皮膚が荒れている

このような症状が見られた場合、考えられる原因としてはどのようなものがあるのでしょうか。

唇の荒れは日常生活上の習慣が大きく関与していることがあります。主な原因としては以下のようなものが挙げられます。

唇は常に外界に晒されているため紫外線の刺激を受けやすく、バリア機能が低いため他部位の皮膚よりも日焼けを生じやすい部位です。唇は思わぬ日焼けによって炎症を生じ、荒れや痛みを引き起こすことがあります。

唇の日焼けを防ぐには

唇の日焼けは紫外線遮断効果のあるリップクリームや唇にも使用できる日焼け止めを塗ることで予防できます。外出時には必ずこれらのセルフケア用品を使用するようにしましょう。

唇は気候や環境の影響を受けやすく、湿度が低くなると容易に水分を失って乾燥して荒れることがあります。ヒリヒリとした痛みを伴うことが多く、重症化すると唇の亀裂()や出血などが見られます。

唇の乾燥を防ぐには

唇の乾燥は、保湿効果のあるリップクリームやリップポマードを使用することで予防できます。ただし、肌質に合わないケア用品はかえって唇の炎症や乾燥を助長して荒れが悪化することもあるので注意しましょう。

日常生活上の習慣を改善し、セルフケアを続けても症状が改善しない場合は、思わぬ病気が潜んでいる可能性があります。放置せずに、それぞれの症状に適した診療科を受診して治療を行うようにしましょう。

唇の荒れは日常的に発症頻度の高いトラブルの一つですが、中には以下のような病気が原因の場合もあります。

唇に生じる病気の症状として、荒れが見られることがあります。主な原因となる病気には以下のようなものが挙げられます。 

口唇炎

紫外線や乾燥、唾液などの刺激によって唇に炎症が生じる病気です。ピリピリとした痛みを伴い、飲食物やリップクリームなどに触れるとしみるような痛みを生じるのが特徴です。小児では重症化しやすく、炎症が唇の周りの皮膚まで波及()したり、唇の表皮剥離()亀裂()、出血などを伴ったりすることも少なくありません。

口唇炎
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接触性皮膚炎(かぶれ)

アレルゲンに触れることで皮膚に炎症を引き起こす病気です。唇は飲食物や食器などさまざまなものが触れる部位であり、特定のアレルゲンに触れることで接触性皮膚炎を発症することがあります。唇の荒れやかぶれ、腫れなどが見られますが、多くは一時的な症状であり自然に改善していきます。

感染症

唇は細菌やウイルス、真菌に感染して皮疹や荒れを生じることがあります。代表的なものではヘルペスや帯状疱疹()、カンジダ、いわゆる“とびひ”などが挙げられます。それぞれの病原体によって症状は異なりますが、唇の周囲に皮疹や痛みを生じ、発熱や関節痛などの全身症状を引き起こすこともあります。

また、ヘルペスや帯状疱疹()は一度感染すると、体内にウイルスが潜んだ状態となります。そのため、症状が改善した後も免疫力が低下したときなどに再発を繰り返すのが特徴です。

唇の荒れは、唇自体の病気ではなく以下のような全身の病気の一症状として現れることがあります。

アトピー

かゆみを伴う湿疹が繰り返し生じる病気で、小児に好発します。アレルギー体質の方が発症しやすいと考えられていますが、成長と共に症状の改善が認められることがあります。

アトピーによる皮膚炎は全身のさまざまな部位に生じますが、唇の周囲に発症することもあり、唇の乾燥や湿疹、ただれ、かゆみなどを引き起こします。

栄養不足

唇はターンオーバー(皮膚の新陳代謝)が速いため、表皮を形成するのに必要なたんぱく質やビタミンB2、B6などの栄養素が不足すると、ターンオーバーが乱れて荒れを引き起こすことがあります。

現代の日本で栄養が不足することはまずありません。しかし、末期がんや腸管の炎症性疾患、神経性食思不振症()などのように栄養摂取量や吸収量が著しく低下する場合に起こり得ます。

唇の荒れは一般的な皮膚トラブルであるため、リップクリームなどを用いたセルフケアを行う人がほとんどでしょう。しかし、長引く唇の荒れは何らかの病気が潜んでいる可能性があるため注意しましょう。セルフケアを行っても荒れが改善しない場合、びらんや出血、痛みなどの症状を伴う場合、全身のどこかに別の症状がある場合には早めに病院を受診することがすすめられています。

受診に適した診療科は皮膚科です。しかし、アレルギーが関与していると考えられる場合や、ほかの全身症状がある場合には内科やかかりつけ医で相談するのもよい手段です。

また、受診の際には、唇の荒れが生じた時期や誘因、セルフケアの効果、ほかの症状などを詳しく医師に伝えるようにしましょう。がんなどの病気が分かっている人は既往歴を伝えるのを忘れないことも大切です。

受診の目安

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 腫れ、痛みなどがある
  • ひび割れ、発疹など見た目の異常がある
  • しみて食事などに支障がある
  • 保湿など自分でできるケアをしても改善しない

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 保湿など自分でできるケアでよくなり、他の症状がない
原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。