「精子凍結保存」という言葉をご存知ですか?
精子凍結保存とは、精液を凍結保存し、後日不妊治療に使用するという試みのことを言います。この取り組みは以前より行われており、数多くの不妊に悩むご夫婦を救ってきました。
精子凍結保存の用途は、主に以下の4つです。
今回は4にある、「がん治療前の精子凍結」について、横浜市立大学附属市民総合医療センター・生殖医療センター部長の湯村寧先生にお伺いしました。
近年、若年者のがん治療後の回復の見通しは飛躍的に改善していると言われています。治療自体は肉体的にも精神的にもつらいものがあると思いますが、治る可能性が高いということは、治った後の人生を考える必要も当然出てきます。
そのなかには治療後の進学・就職・結婚・家庭を持つことも含まれます。しかし、がんの治療により男性側に妊孕性(赤ちゃんを作る力)を損ねてしまう可能性があります。例えば、抗癌剤・放射線照射による精巣障害で長期にわたり・または永久に精子が作れなくなる可能性や、手術などによる射精機能の喪失・あるいは精子の通り道自体がなくなってしまうこともあります。
精子の凍結保存は、このような危険性を防ぐため、がんの治療前に前もって精子を凍結保存しておきます。そして将来、がん治療が終了してから子供がほしいと希望された時点で使用する、という方法です。
精子の凍結には主に2つの方法があります。
患者さんの精液を採取し、液体窒素を用いて保管します。
患者さんの精巣組織を外科的に採取し、液体窒素を用いて保管します。こちらの場合は、原則二泊三日程度の入院が必要です。
凍結された精子は、いずれの場合でもがん治療が終了し、お子様を作りたいと希望された時点で返還します。
この治療法は現在のところ、がん治療を受ける予定の男性患者に対する、唯一の妊孕性の維持療法です。
外来ではまず一般的な精液検査を行い、患者さんに説明・同意を得た後、精液または精巣組織を凍結します。
具体的には、精液に「凍結保護剤」という特殊な薬剤を混ぜて、その後精液を液体窒素内に保管します。精巣組織も同様に凍結可能です。なお、一旦凍結に入った精液・精巣組織は半永久的に保存することができます。
精液保存について、患者さんが最も心配するのは費用の問題でしょう。
精液凍結は一般的には保険外診療です。まず初回凍結時、その後は凍結期間の更新毎に料金が発生します。
凍結期間は施設によって異なりますが、横浜市立大学附属市民総合医療センターの場合は1年に一回です。その他、凍結施設によって期間や費用は異なってきますので、利用する施設の説明をよく聞いて理解しておくことが大切です。
精子凍結保存の記事は、「精子凍結保存について(2)―凍結した精子をどのように使用する?」に続きます。
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横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 泌尿器科部長・准教授、田園都市レディースクリニック 臨時職員
横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 泌尿器科部長・准教授、田園都市レディースクリニック 臨時職員
日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医・泌尿器科指導医日本生殖医学会 生殖医療専門医日本癌治療学会 会員日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本生殖医学会認定 生殖医療専門医(泌尿器科)の一人であり、男性不妊治療の専門家。横浜市の不妊相談などを担当し、男性不妊の啓発活動に努めている。また、横浜市立大学附属市民総合医療センターの生殖医療センター部長を務める。同センターは泌尿器科、婦人科に日本生殖医学会認定 生殖医療専門医(泌尿器科)が在籍しており、パートナーと一緒に治療を受けられる神奈川県内の施設である。
湯村 寧 先生の所属医療機関
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