インタビュー

胃ろうの費用。栄養剤や交換にかかる費用はどのくらい?

胃ろうの費用。栄養剤や交換にかかる費用はどのくらい?
日下部 明彦 先生

横浜市立大学 総合診療医学 准教授

日下部 明彦 先生

この記事の最終更新は2015年08月31日です。

胃ろうにかかるコストとはどの程度のものなのでしょうか。「事前指示書」の大切さもあわせ、横浜市立大学総合診療医学准教授の日下部明彦先生に引き続きご説明いただきます。

費用の問題は今まであまり語られてきませんでしたが、意識するのは大事なことかもしれません。目の前の患者さんに対して、医療者は医療コストについてはほとんど無視して、治療方針を決めていることが多いです。家族は医療コストに関して少し考慮しているかもしれません。実はかなり考慮しているのかもしれませんが、医療者の前でなかなか口に出せることではないでしょう。将来的に胃ろうの選択を迫られるかもしれない私たちは、胃ろうにかかる医療コストをおおよそ知っておき、事前指示書を書くときの参考にするといいかもしれません。

事故や重症疾患によって患者さんの意思決定能力が失われたときに、どのような医療を希望・または拒否するのかを、患者さんの意識が清明なうちに表明しておくこと(リビングウィルと同義)

胃ろう造設には1週間ほどの入院期間が必要です。たとえば75歳以上の後期高齢者(1割負担)であれば、1カ月の入院自己負担金の上限は44,400円になります。おそらく何らかの病状で自力で経口摂取ができない状態になり、1週間以上の入院をすれば、胃ろう造設術をしてもしなくても自己負担は同じです。ですから胃ろうの手術で余計にお金がかかることはありません。

  • 経管栄養カテーテル交換法 200点(1点は10円)
  • 材料費 バルーン型約8000円(1~2か月ごとに交換) 

バンパー型約20000円(6か月ごとに交換)

多くの患者さんが使用している人工栄養剤は医薬品扱いのものであり、医師が処方します。つまり人工栄養剤は医療費であるため、保険が適応されます。医薬品扱いの人工栄養剤の1か月分(1mlで1キロカロリー、1日1200キロカロリーとして30日分で計算)の費用は20000円~35000円の範囲内です。

胃ろうの方の多くは、在宅医療を受けていることが多いです。在宅医療を受けるとなると、胃ろうの管理料と月2回の訪問診療で、一般的にひと月6万円強の医療費がかかります(医療機関の施設基準によって少し差があります)。一般の75歳後期高齢者の外来の自己負担金上限は12000円ですので、薬剤費はあまり個人の負担には影響はないものと思われます。

以上より、胃ろうにおいてかかる初期費用とランニングコスト(胃ろうの管理に必要な費用のこと)はそこまで大きく影響しないと言ってよいでしょう。

ただし、胃ろうによって長生きすることでかかってくるコストについては予測が不可能ですので今回は考慮していません。

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