インタビュー

低血圧とは―低血圧のさまざまな種類

低血圧とは―低血圧のさまざまな種類
佐藤 敦久 先生

国際医療福祉大学塩谷病院 病院長

佐藤 敦久 先生

この記事の最終更新は2015年11月20日です。

高血圧に比べると、低血圧はあまり問題視されないという面があります。しかし、低血圧にもさまざまな種類があり、その裏には意外な病気が隠れている場合もあるのです。国際医療福祉大学三田病院 内科部長・副院長の佐藤敦久先生にお話をうかがいました。

低血圧とは、めまいや失神などの症状があらわれるほど血圧が低い状態をいいます。多くの場合、薬の影響や体内の何らかの障害によって、身体の血圧維持システムがうまく働かなくなって起こります。血圧が下がりすぎた場合、最初に影響を受けるのは脳です。血圧が低すぎて脳への血流が不足すると、脳の機能不全や失神を起こします。

収縮期血圧(最高血圧)が100mmHg未満であることを低血圧の定義とした場合、30歳以上では男性の0.7%、女性の3.2%がこれに当てはまります。さらに30歳未満の女性では10.4%になることから、若い女性に低血圧の方が比較的多いということがいえます。

低血圧は下記のように分類することができます。

本態性低血圧は一般的に低血圧と言われているもので、特にこれといって低血圧を引き起こす疾患や異常がなく、血圧だけが正常値よりも低いものをいいます。症候性低血圧は原因となる疾患などがあって血圧が低下してしまうもので、二次性低血圧ともいいます。

症候性低血圧を引き起こす原因には、下記のようなものがあります。

心臓疾患

心筋梗塞心筋症狭心症心筋炎大動脈弁狭窄症心タンポナーデ、徐脈性・頻脈性不整脈 など

循環血液量の減少

出血、脱水とナトリウム類の喪失、貧血 など

内分泌疾患

アジソン病などの副腎不全、甲状腺機能の低下、下垂体機能の低下、高ブラジキニン血症、低血糖 など

神経疾患

多発性硬化症脊髄空洞症脳腫瘍、脊髄断裂、糖尿病性神経症、純粋自律神経不全 など

代謝性疾患

低ナトリウム血症、低たんぱく血症 など

感染症・中毒

敗血症、エンドトキシックショック、アルコール など

急性低血圧はショック症候群とも呼ばれます。心筋梗塞・大量出血・重症感染症・薬剤性ショックなどが原因で急激に血圧が下がってしまう状態をいいます。このような場合にはただちに医療機関で治療を受ける必要があり、対応が遅れると命に関わる場合もあります。

また、高血圧で血圧を下げる薬を使っている方の場合は、運動で体重を落としたり、入院で食事の塩分が減ったときに、薬が効きすぎて急激に血圧が下がることがあります。環境要因に大きな変化がある場合には主治医に相談することも大事です。

症候性低血圧(二次性低血圧)の場合は、正確な診断のもとで原因となる疾患を治療することが大前提となります。また、急性低血圧の場合も前項で述べた通り、迅速かつ適切な治療が必要になります。

しかしながら、本態性低血圧の場合は、自覚症状がないようであれば治療の必要はなく、むしろ動脈硬化のローリスク群であるとも言えます。めまいなどの症状がある方については治療を検討しますが、基本的に薬物治療は最初に行なうべきことではありません。

生活上気をつけていただくこととして、まず睡眠不足や過労にならないよう、規則正しい生活を行うようにします。本態性低血圧の場合、症状と血圧の間に関係が認められないことが多く、過労による心因反応関連の緊張異常が原因になっているとも考えられています。

食生活においては、水分を多めに摂るようにし、特に他の病気がない場合は塩分も適量を摂るようにします。カフェインも効果が期待できますので、コーヒーなどの飲み物で適度に摂るとよいでしょう。痩せすぎている方はなるべく標準体重に近づけるようにします。

これらの対策を行なってもなお症状が改善しなければ、薬物治療を行う場合もあります。その場合使用するのはフルドロコルチゾンという薬です。これはミネラルコルチコイドという、私たちの副腎から分泌されるステロイドホルモンと同等の働きをするもので、腎臓に作用して食塩の再吸収を促します。つまり、塩分を多めに取り込むことによって血圧を上げます。しかし、一般的な低血圧の方の場合はこのような薬を使用することはほぼありません。

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