インタビュー

妊娠したらアルコールはダメ?妊娠時にNGな薬や成分

妊娠したらアルコールはダメ?妊娠時にNGな薬や成分
青木 宏明 先生

医療法人社団青木産婦人科医院 院長

青木 宏明 先生

この記事の最終更新は2016年01月15日です。

妊婦さんは胎児に影響が及ばないように、食事や運動、薬など、さまざまなことを気にされることでしょう。その中でもアルコールやコーヒーなどの嗜好品は、どの程度胎児に影響するのかというのは気になるところではないでしょうか。今回は、OTC医薬品やアルコールと妊娠について、東京慈恵会医科大学 産婦人科学講座 助教の青木宏明先生にお話しいただきました。

「妊娠時に風邪やインフルエンザにかかった時の薬の注意点」でも述べたとおり、解熱鎮痛消炎薬ではOTC医薬品はなるべく使用せず、産婦人科で処方されたものを使用することが望ましいです。片頭痛を持っている方にはイミプラミン(成分名)などの片頭痛用の薬を処方します。また、湿布薬も妊娠後期に多量に使用すると、胎児の動脈管収縮が起こるため複数枚の連用は避けるのが好ましいです。風邪薬においては、繰り返しになりますが風邪薬に風邪を治す効果はないことを自覚し、妊娠中は安静にして身体を休めることを第一に考えてもらうのがよいでしょう。

ほかにも、葉酸や鉄、マルチビタミンなどのサプリを通常量使用することは問題ありませんが、一部の内容がはっきりしないサプリでは胎児に悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。また、アントシアニン(濃厚プルーン・アサイー)を大量に摂取すると胎児の動脈管収縮が起こる報告や、ビタミンAの過剰摂取は胎児の奇形と関係がありますので、薬に限らず、サプリや健康食品なども医師と相談されることをお勧めします。

絶対過敏期(妊娠2カ月前後)に胎児がアルコールにさらされると、奇形が起こる可能性があり、妊娠後期(妊娠8カ月以降)では、胎児の発育異常や中枢神経系障害が起こることが報告されています。一日のアルコール摂取量が15mL 未満(ビール 350mL缶一本程度)であれば、胎児への影響は少ないと考えられていますが、少量であっても影響が出る可能性は否定できませんので妊娠中は禁酒が重要です。コーヒー(カフェイン)では、1日5〜6杯を毎日飲むと出生体重が平均で60〜70g程度減ったという報告があります。しかし、過剰に飲みすぎることがなければまず問題がないと考えられます。

妊娠や授乳中に心配な薬を服用してしまった場合でも、短期的な服用であれば基本的に問題なる可能性が少ないと考えられます。問題となりうるのは、過剰摂取や長期的な服用です。ただし、不安を感じられる場合は「妊娠と薬情報センター」に相談するか、産婦人科を受診されるのがよいでしょう。

(参考 https://www.ncchd.go.jp/kusuri/

妊娠と薬情報センターや全国にある妊娠と薬情報センターの拠点病院(上記URL参照)では、疫学的なデータ(エビデンス・科学的な根拠)に基づいて回答ができるよう教育や研修会が行われています。

妊娠されると、これまで大きな心配をせず服薬していた薬が「毒」であるかのように思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かに、胎児に影響を及ぼす薬もありますが、基本的には人間を治すためにつくられたもので、医師の指導のもと、適切に服用すれば一部の薬を除いて大きな問題は起こりにくいと考えます。それよりも必要な服薬をやめて、慢性疾患のコントロールができなくなることのほうがリスクとなりうるのです。

 

  • 医療法人社団青木産婦人科医院 院長

    日本産科婦人科学会 産婦人科専門医日本周産期・新生児医学会 周産期専門医(母体・胎児)日本超音波医学会 超音波専門医日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医

    青木 宏明 先生

    東京慈恵会医科大学医学部卒業後、国立成育医療研究センター、東京慈恵会医科大学周産期センター病棟長を経て、現在青木産婦人科医院の院長を務める。「妊婦・ 胎児に対する服薬の影響」に関する相談・情報収集を実施する「妊娠と薬情報センター」での活動経験もあり、周産期医療に尽力している。

    青木 宏明 先生の所属医療機関

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