インタビュー

妊娠時に風邪やインフルエンザにかかった時の薬の注意点

妊娠時に風邪やインフルエンザにかかった時の薬の注意点
青木 宏明 先生

医療法人社団青木産婦人科医院 院長

青木 宏明 先生

この記事の最終更新は2016年01月13日です。

「十月十日(とつきとおか)」と昔からいわれているように、妊娠期間は約10カ月間です。その間には風邪をひいたり、インフルエンザが流行する時期を過ごすことになるかと思います。その場合、風邪薬を服用してもよいのか、インフルエンザワクチンを接種してもよいのかと不安に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はこれらの疑問点に関して、東京慈恵会医科大学 産婦人科学講座 助教の青木宏明先生にご説明いただきました。

かぜ症候群の治療に抗生物質は本来必要がないと考えられますが、細菌の二次感染により気管支炎肺炎が重症化する場合もあります。そのような場合は、妊娠中も安全と考えられているペニシリン系やセフェム系の抗生物質を使用します。アミノグリコシド系の抗生物質では胎児の聴覚障害を引き起こす危険性が指摘されているので注意が必要です。

妊娠中はアセトアミノフェン(成分名)が選択されます。他に解熱鎮痛消炎薬として使用されているのがNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬・Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)と呼ばれるものです。このNSAIDsは妊娠後期(妊娠9カ月以降)に服用すると、胎児の動脈管収縮を起こし、胎児の心不全を招く危険がありますので妊娠中の使用は避けます。

解熱鎮痛消炎薬はOTC医薬品(一般用医薬品)としてドラッグストアなどで購入することも可能です。医師の処方箋なしで手軽に購入できますので、購入される方は多いのではないでしょうか。しかしながら、NSAIDsと呼ばれる解熱鎮痛消炎薬もOTC医薬品として販売されているので、そちらを誤って服用してしまう危険性があります。また、アセトアミノフェンのOTC医薬品の場合でも、1錠の中にアセトアミノフェンだけではなく、他の成分が混ざっていることもあります。混合している成分が必ずしも胎児に影響がないとは言えません。ですから、妊娠中・授乳中は医師から処方された薬のみを服用されることをお勧めします。また、風邪を引かれた場合はなによりも安静にして身体を休ませることが大切です。

妊娠期のインフルエンザワクチン接種は安全性のデータが揃ってきており日本産婦人科学会でも接種を推奨しています。妊娠自体がインフルエンザ合併症(中耳炎・気管支炎・肺炎など)の危険因子であり、妊娠中のインフルエンザは重症化しやすいといわれているためです。ですから、インフルエンザにかからないようにワクチンを接種することをお勧めします。接種するのは不活化ワクチン(細菌やウイルスの毒性をなくしたワクチン)ですので、ワクチン接種でインフルエンザが発症することは通常ありません。

妊娠中にインフルエンザが疑われるときは、重症化するリスクを考慮しインフルエンザ治療薬を使用することが多くあります。インフルエンザ治療薬は、妊娠中の使用に関するデータが揃ってきています。最もデータが多いのがオセルタミビルで、妊娠中でも安全に使用できると考えられています。またザナミビルは吸入薬であるため、お母さんの血中への移行もほとんどなく赤ちゃんにも比較的安全と考えています。他にも日本産婦人科学会の発表によると、ラニナミビルも妊娠期の使用による胎児への影響がなかったと報告されており、インフルエンザを重症化させないように適切な薬を服用することも考慮します。

  • 医療法人社団青木産婦人科医院 院長

    日本産科婦人科学会 産婦人科専門医日本周産期・新生児医学会 周産期専門医(母体・胎児)日本超音波医学会 超音波専門医日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医

    青木 宏明 先生

    東京慈恵会医科大学医学部卒業後、国立成育医療研究センター、東京慈恵会医科大学周産期センター病棟長を経て、現在青木産婦人科医院の院長を務める。「妊婦・ 胎児に対する服薬の影響」に関する相談・情報収集を実施する「妊娠と薬情報センター」での活動経験もあり、周産期医療に尽力している。

    青木 宏明 先生の所属医療機関

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