インタビュー

妊娠時に薬を服用してもよいのか-慢性疾患薬による胎児への影響とは(2)

妊娠時に薬を服用してもよいのか-慢性疾患薬による胎児への影響とは(2)
青木 宏明 先生

医療法人社団青木産婦人科医院 院長

青木 宏明 先生

この記事の最終更新は2016年01月12日です。

前の記事「妊娠時における薬の影響-慢性疾患薬による胎児への影響とは(1)」高血圧糖尿病甲状腺疾患の治療と妊娠についてご説明しました。前の記事に続き、喘息てんかん・精神疾患の治療と妊娠について東京慈恵会医科大学 産婦人科学講座 助教の青木宏明先生にお話しいただきました。

妊娠中の喘息は特にしっかりとコントロールする必要があります。薬が胎児に悪い影響を与えることを心配して喘息治療薬の使用を減らし、喘息状態が悪化してしまう可能性があります。妊娠中に喘息が悪化すると胎児が低酸素状態になる危険性があります。基本的に妊娠中も薬をしっかり使用して喘息をコントロールすることが大切です。妊娠中も喘息の治療は吸入ステロイド薬が中心になり、妊娠中も安全に使用できます。

てんかんも喘息と同様,妊娠を機に薬の服用をやめてしまう方もいますが、妊娠中にてんかんのコントロールがつかないことは危険ですので、しっかり薬を服用することが大切です。さらに妊娠中は通常通り内服していても、抗てんかん薬の血中濃度が変化することもあるため、定期的にかかりつけ医にかかることをお勧めします。

抗てんかん薬はできる限り単剤とし、バルプロ酸を避けることが望ましいです。バルプロ酸を継続する場合は一日の用量を1000mg以下にし、「バルプロ酸 + カルバマゼピン」や「フェニトイン + プリミドン + フェノバルビタール」などの組み合わせは奇形発現を増加させるのでなるべく避けたほうがいいでしょう。(※すべて成分名)

最近の報告では、一般の奇形発生率が約3%に対して、バルプロ酸服用の場合は約6%といわれています。バルプロ酸などの葉酸拮抗薬を飲む場合は、葉酸500mg程度の多めの量を妊娠前から服用することによって神経管開放奇形の発生率を下げることができるといわれています。

妊娠期における抗精神病薬や抗うつ薬使用についての明確なガイドラインはありません。統合失調症うつ病など、人によって病気(症状)や服用している薬はさまざまですので、精神状態を安定させること、そして安定した状態で妊娠に臨むことを第一に考えるほうがよいでしょう。ただし多種類の薬を飲んでいる方もいますので、必要がない薬はやめるなど、本当に必要な薬のみを服用することが望ましいです。一部のSSRI(抗うつ薬)で心奇形が増加の可能性があるという報告がありましたが、否定的な報告もあり見解は定まっていません。ただし、増加するとしても心奇形の自然発生率1%が2%になる程度です。そのほかには、明らかに催奇形性が増えたという抗精神病薬はそれほどありませんので、薬の整理や量の調節などを行い、症状を適切にコントロールすることが大切です。