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インタビュー

血管内再開通治療の課題と再発防止

血管内再開通治療の課題と再発防止
太田 貴裕 先生

東京都立多摩総合医療センター 脳神経外科 医長

太田 貴裕 先生

太い血管が詰まる急性主幹動脈閉塞症になったとき、脳梗塞が完成する前に血流を再開通させる治療法が急速に進歩し、より多くの患者さんを救えるようになってきました。しかし、治療できる施設が限られるなど、いまだ多くの問題があります。急性期治療の最前線で日々奮闘されている東京都立多摩総合医療センター脳神経外科医長の太田貴裕先生にお話をうかがいました。

血管内再開通治療の問題は、実施できる施設が限られることにあります。

人口約400万人の東京都多摩地区には、t-PA静脈内投与による血栓溶解療法を行える施設が30カ所ほどありますが、血栓回収用デバイスを用いた血管内治療ができるところは、5ないし6カ所しかありません(それぞれの治療法については関連記事『急性主幹動脈閉塞症の治療―血管内再開通治療について』を参照)。

また、施設によって治療件数には差があります。たとえば2014年度の脳卒中の治療件数において、東京都立多摩総合医療センターはt-PA静脈内投与を46件行っています。これは東京都内で2位、関東地方で3位の治療件数です。また、血栓回収デバイスを用いた血管内治療は29件行っており、これは東京都内で1位、関東地方で2位の治療件数となっています。

このように、血管内治療が行えるかどうかは、患者さんがどこに運ばれるかによって決まってくるという問題があります。カテーテルによる治療は経験と技術、設備が必要となるため、すべての施設で対応することは不可能に近いでしょう。

そこで今後の取り組みとして考えているのは、アメリカなどで行われている”Drip, ship and retrieve”と呼ばれる医療連携モデルの導入です。

アメリカでは包括的脳卒中センターと呼ばれるメインの病院が設置されており、その周りに脳卒中の初期対応をする病院があります。まずは、搬入された周りの施設でt-PAを点滴しながらセンターに運び、そこで血栓回収治療を行います。

東京都立多摩総合医療センターがある多摩地区でも、ある程度経験がある施設のほうが速く対応できるということから、杏林大学・東京都立多摩総合医療センター・国立病院機構災害医療センター・日本医科大学多摩永山病院などの施設が対応しています。また、「脳卒中の患者が運ばれてきた」と連絡を受けたらすぐ転送してもらい、ここで治療をして、元気になられたらまた帰っていただくといった、患者さんの移動を伴う医療連携の動きが都内でも出てきました。

こういった治療に関する情報は救急隊もほとんど知りませんし、一般の方ならなおさらご存じないでしょう。先に述べたように、施設によって治療レベルの差があるという医療格差の問題もあります。しかし、だからといってすべての患者さんを東京都立多摩総合医療センターに運んでもらうことはキャパシティの点で不可能です。難しいところではありますが、ネットワークというよりも現場レベルでの連携という形が先行して、少しずつ病院間連携の動きが進みつつあります。

東京都多摩地区は都心に比べて病院数が少ないので、治療ができる施設群として患者さんを受け入れ、対応できないときはその中でお互いに患者さんを転送するという方法が良いのではないかと考えています。

新しい血栓回収デバイスが使われるようになって、治療に要する時間は非常に短くなりました。メルシーとペナンブラシステムという器械しかなかった頃は、どうしても2〜3時間はかかっていました。今は患者さんが到着してから再開通するまで、早い方は30〜60分で治療が終わります。その代わり患者さんが到着次第、人手を集めて一気に治療の準備をする必要があります。

太い血管が詰まってしまう方は、心房細動による心原性塞栓がほとんどですので、まずは血栓ができないように抗凝固薬による内服治療を行います。今はワルファリン以外にも「NOAC」と呼ばれる新規経口抗凝固薬が出てきていますので、それを服用していただくことが増えていますが、この薬にも問題がないわけではありません。

まず、NOACはワルファリンに比べて高価であるという経済的な問題があります。また半減期が短いため、飲み忘れるとすぐに効果がなくなってしまい、脳梗塞を再発する恐れがあります。さまざまな理由で服薬が難しい患者さんには、東京都立多摩総合医療センター心臓外科の大塚俊哉先生が行っている左心耳切除術も考慮すべき選択肢のひとつであると考えます。実際、脳外科の患者さんで大塚先生の左心耳切除を受けている方もかなりいらっしゃいます。

私たちのところに来て血管内治療を受けた患者さんは、脳梗塞の原因評価のため、必ず循環器科に依頼してきちんと評価してもらうようにしています。その後は私たちの手を離れることになります。

もうひとつ注意すべき点は、太い血管が詰まる原因が心臓にできる血栓ばかりではないということです。動脈硬化で頸動脈が狭くなってプラークができ、そこに生じた血栓が脳に飛んで詰まるという方がおよそ20人に1人の割合で含まれます。そういった方は動脈硬化の治療が必要ですが、これは生活習慣病であり、継続的に管理していくことになります。

 

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