急性主幹動脈閉塞症は、脳の太い血管に血栓が詰まるなどの理由によって脳に血液が行き渡らなくなることをいいます。血管を再開通させなければ脳梗塞を引き起こすため、一刻の猶予も許されない状況です。急性主幹動脈閉塞症について、東京都立多摩総合医療センター脳神経外科 部長の太田貴裕先生にお話をうかがいました。
脳主幹動脈は、脳に酸素や栄養を送っている複数の太い血管の総称です。大脳に血液を送っている内頸動脈・中大脳動脈・前大脳動脈・および小脳や脳幹に血液を送っている椎骨動脈や脳底動脈が含まれます。急性主幹動脈閉塞症は、この主幹動脈が血栓や塞栓により突然閉塞を起こす病態です。
1999年から2012年までに脳卒中データバンクに登録された約10万人のデータによると、虚血性脳卒中では動脈硬化によるアテローム血栓性梗塞・塞栓が31%、ラクナ梗塞が29%、心房細動(しんぼうさいどう)などによる心原性脳塞栓が26%という割合でした。
このうち心原性脳塞栓は年々増加の傾向にあり、日本社会の高齢化にともなってご高齢の方の心原性脳塞栓が増えています。心臓にできる血栓は大きなものが多いので、太い血管が一気に詰まってしまいます。ラクナ梗塞は細い血管が詰まるため症状が比較的軽く、手足の麻痺・しびれ・ろれつが回らないなど症状が限られますが、太い血管が詰まると脳全体に血液が行き渡らなくなるため、意識がなくなる・言葉が出ないなど症状がより重くなります。なおかつ、心原性塞栓は発症後の経過が悪く、重症度が高くなることが特徴です。
急性主幹動脈閉塞症の原因には、主に以下の2種類があります。
●心原性:心房細動などにより心房内にできた血栓が脳に運ばれ、脳の血管を詰まらせる
●非心原性:脂質異常症(高脂血症、高コレステロール血症)、糖尿病、高血圧症などの疾患によって動脈硬化が進み、頸動脈にたまったプラークや血栓が飛んで脳の血管を詰まらせる
太い血管が詰まる急性主幹動脈閉塞症は、治療によって再開通しなければ必ず脳梗塞に発展します。また、細い血管が詰まるラクナ梗塞のように比較的軽症にとどまることは少なく、重症化することが多いといえます。
脳梗塞になったのが脳の右側か左側によって症状の出方は違います。脳の右半球・左半球のうち、言語や思考などの高次機能を受け持つ側を優位側といいますが、右利きの方のうち95%以上が左半球優位のため、左側に脳梗塞が起きるとより重症になりやすい傾向があります。
先に述べたように心原性塞栓が増えているということは、より重症の患者さんが増えているということになります。しかし、関連記事『急性主幹動脈閉塞症の治療―血管内再開通治療について』でお示ししている通り、詰まった血管の流れを再開通させる有効な治療ができるようになり、より高い治療効果が得られるようになってきました。
頭部MRI(拡散強調画像)
MRI(Magnetic Resonance Image:核磁気共鳴画像)の拡散強調画像では、新しくできた脳梗塞が白く映ります。急性期の脳梗塞の場合、基本的にはこの拡散強調画像を必ず撮影します。
MRA(MR angiography)
太い血管が詰まっているのかどうかを見るためにMRA(MRアンギオグラフィー)を撮影します。
東京都立多摩総合医療センター 脳神経外科 部長
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