インタビュー

国立がん研究センターにおける遺伝子診療、これまでの取り組み

国立がん研究センターにおける遺伝子診療、これまでの取り組み
吉田 輝彦 先生

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所 遺伝医学研究分野 分野長 /同研究支援センター ...

吉田 輝彦 先生

この記事の最終更新は2016年04月25日です。

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院では1998年から遺伝相談外来を開設し、2013年には個々の患者さんの治療選択における網羅的遺伝子検査の有用性を検証する臨床研究「TOP-GEARプロジェクト」をスタートさせています。また、2015年の末には臨床検査としての品質管理がなされた網羅的遺伝子検査室を院内に設置し、個別化治療としてのゲノム診療を開始するための体制整備を進めてきました。そして今回、網羅的な遺伝子診断に基づく診療を本格的に導入するため、「遺伝子診療部門」を開設しました。がんの遺伝子診療におけるこれまでの取り組みについて、国立がん研究センター中央病院遺伝子診療部門の部門長である吉田輝彦先生にお話をうかがいました。

相談外来チャート
相談外来チャート

早い方では10代のうちにポリープができてくるのですが、年齢が高くなるとこのポリープの中からがんが発生してくる可能性が高くなります(下図棒グラフ参照)。そこでポリープの治療及びがんの予防として大腸切除をするという治療を行ないます。この治療は保険適用となっています。

1998年の開設以来、どの疾患もほぼ一定の相談受診者数で推移していました。しかしアメリカの女優、アンジェリーナ・ジョリーさんが自らの病気のことや予防的に乳腺や卵巣を切除したという事実を公表したことがきっかけとなり、日本でも社会的関心が高まったことなどから、その時期を境に遺伝性乳がん卵巣がん(下図グラフ中のHBOC)の相談受診者数が急に増えています。

遺伝性乳がん・卵巣がんの遺伝子診断は日本でも導入されていますが、家族性大腸ポリポーシスとは異なり保険適用ではないため、自費で約22万円の費用がかかる検査です。それにもかかわらず、アンジェリーナ・ジョリーさんの報道以降、受診される方が増えています。

そのひとつの理由としては治験が始まったこともあります。遺伝性の卵巣がんや乳がんのための治療薬としてPARP阻害剤(例:オラパリブ)などが出てきました。製薬会社が遺伝子検査の費用を負担する形で企業治験が始まったことも受診者数の増加を後押しする要因であったと考えられます。

国立がん研究センターがオリジナルで開発した検査キット「NCC オンコパネル」を用いて、がん治療に伴う臨床効果と副作用を予測する遺伝子プロファイリング研究のことを指しています。

遺伝子を調べるときに、従来はひとつひとつの遺伝子について調べていました。しかし最近では次世代シークエンサーを使って100個、200個といった多数の遺伝子を一挙に解析し、その患者さんにとって特効薬となる可能性のある薬があるかということを調べます

先端医療科などにおいて、生検や手術で採取されたがん組織のゲノムを調べて専門家チームがその解釈をする。そして医師が患者さんに説明をして、場合によっては臨床試験などに入っていきます。これがTOP-GEARの大きな流れです。

2014年の10月に終了したTOP-GEARプロジェクト第1号の研究を受けて、プロジェクト第2号ではAYA(Adolescence and Young Adult)世代と呼ばれる16~29 歳の若い方たちにも対象を広げています。また、がん組織の生検についても、針で採取することが難しい場合がありますので、血液中に流れているがん細胞やがん細胞由来のDNAを調べるリキッド・バイオプシーと呼ばれる手法の研究も行います。

※画像はすべて国立がん研究センター中央病院「遺伝子診療部門」の概要(PDF)より引用

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  • 国立研究開発法人国立がん研究センター研究所 遺伝医学研究分野 分野長 /同研究支援センター センター長/基盤研究支援施設 施設長

    吉田 輝彦 先生

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