インタビュー

心原性失神(アダムス・ストークス症候群)とは?その検査と治療

心原性失神(アダムス・ストークス症候群)とは?その検査と治療
大塚 崇之 先生

心臓血管研究所付属病院 循環器内科 不整脈担当部長

大塚 崇之 先生

この記事の最終更新は2017年10月24日です。

心原性失神とは、心臓が原因で起こる失神で、不整脈がその原因である場合はアダムス・ストークス症候群ともいわれます。検査で原因さえ突き止めることができれば、ペースメーカーやカテーテルアブレーション、内服薬などで治すことができます。

今回は、徐脈(1分間の心拍数が60回未満)や頻脈(1分間の心拍数が100回以上)などの不整脈が要因となる場合の心原性失神の検査と治療について、心臓血管研究所循環器内科不整脈担当部長の大塚崇之先生にお話を伺いました。

心電図検査をして、心臓に異常はないか、波形から診断します。不整脈を起こしているときの心電図を捉えることが基本的な診断のプロセスです。

症状の程度は、徐脈では心臓が停止している時間の長短、頻脈では脈拍数と頻脈持続時間によって決まります。失神のあるなし、自覚症状を含めて心原性失神を診断します。

洞不全症候群房室ブロックで症状が出ているときに検査にきていただければ、ほぼその場で原因がわかります。ときどき不整脈が出る方には、長期間にわたり心電図を記録することがあります。

心臓の電気的変化を波形に現してグラフ化し、判定します。この検査は外来で受けることができます。

小型軽量装置を身につけ、日常生活のなかで通常24時間の心電図を記録します。

調子がよいときと悪いときがある患者さんの場合や、心電図検査では原因が判明しない場合は、24時間のホルター心電図をつけていただきます。

24時間で原因がわからなかった場合は、2週間にわたってホルター心電図をつけることもあります。

ホルター心電図でも原因がわからない場合は、心臓電気生理学的検査が行われます。

電極カテーテルで電気刺激を加え、脈が遅くならないかを調べます。心臓の電気の情報を取りながら、人工的に不整脈を誘発して原因を明らかにさせます。

植込み型心電図ループレコーダー

 

ホルター心電図でも原因がわからない場合、植込み型心電図ループレコーダーを植え込みます。胸の皮膚と脂肪の間に入れ、発作が起きたときの心電図を記録します。電池の寿命は3年ほどで、局所麻酔にて10分〜15分で入れることができます。

最近の植込み型心電図ループレコーダーは小型化されており、よほど痩せている方でなければ、皮膚の下に隠れてしまうので、違和感は少ないと考えられます。

また、機械を体から取り出さなくても、体の外からプログラマーという機械を当てて、データの読み出しをすることができます。

心原性失神の原因が徐脈の場合は、心臓のリズムを整えるためにペースメーカーを入れます。

心室頻拍心室細動の場合は、再発防止のため、基本的に植込み型除細動器が第一選択です。

心原性失神の原因が頻脈の場合、患者さんに合わせた抗不整脈薬での治療ができます。徐脈の場合は、適応になる薬剤がありません。

心房細動の場合は、主にリズムコントロールする薬と、レートコントロールする薬の2種類があります。

リズムコントロールでは、心臓を正常なリズムに戻し、心房細動を出しにくくします。

レートコントロールでは、脈が早くなりすぎないように脈拍数をコントロールします。

副作用として、心房細動が止まって正常な脈に戻るときに、回復が遅れて脈が遅くなりすぎてしまうことがあります。薬は万能ではないため、このような副作用に注意しなくてはなりません。

特に、高齢者の場合、抗不整脈薬や高心拍操作薬などの心房細動を抑えるための薬が原因で、脈が遅くなりすぎて洞不全をきたしてしまうことがよくあります。その場合は、薬の量を減らすか、または別の治療法を考える必要があります。

心原性失神の原因が頻脈の場合は、カテーテルアブレーションで治療をすることができます。アブレーションはカテーテルの先端が電極になっており、先端部から高周波で熱を出せるようになっています。足の付け根の血管から心臓にカテーテルを入れて、不整脈の原因となる場所に、電極をあてて、火傷の状態を作ります。火傷を作ることでその場所の筋肉を動かないようにして頻脈を治します。手術後は、6時間程度の安静が必要です。

高周波のカテーテルアブレーションは、1990年頃から使い始め、1990年代後半から心房細動に対してもカテーテルアブレーションで治療ができるようになりました。その後劇的にカテーテルアブレーションの技術が進歩し、患者さんの負担は少なくなりました。カテーテルアブレーションが主流になる前までは、直流電流で電気ショックをするような治療法だったのです

当院だと、カテーテルアブレーションの8割以上を、心房細動の治療で行っており、私は、2017年現在まで3,000件ほどカテーテルアブレーションの手術をしてきました。

カテーテルアブレーションのリスクとしては、心房細動が原因であれば、心タンポナーデ(ショック状態)が軽いものを含めて1%の確率で起こります。また、手術中の脳梗塞が0.2%の確率で起こります。

心原性失神の病院選びに関しては、基本的に不整脈専門医がいる施設であれば幅広い治療法で対応できるのでよりよいです。失神や不整脈は、突然起こることがあり予防が難しく、繰り返すこともあります。症状が出たら速やかに病院を受診してください。早急な対応が予防につながります。

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