インタビュー

横浜市の地域密着型病院、横浜市立大学附属市民総合医療センターが目指すこれからの地域医療

横浜市の地域密着型病院、横浜市立大学附属市民総合医療センターが目指すこれからの地域医療
後藤 隆久 先生

横浜市立大学附属病院 病院長

後藤 隆久 先生

この記事の最終更新は2017年12月27日です。

横浜市立大学附属市民総合医療センターは、横浜市南区にある地域密着型の病院です。1871年(明治4年)に誕生した全国で2番目の洋式病院が始まりであり、長年にわたり地元住民の方たちに頼りにされてきました。

地域密着型でありながらも、医療の最先端を走る同センターの現在の取り組みや今後の展望について、院長である後藤隆久先生にお話を伺いました。

※この記事は、2017年7月の取材に基づいて記載されています。現在とは状況が異なる場合があります。

古くから横浜市南区浦舟の地にある当センターは、2016年(平成28年)に創立145周年を迎えた、歴史ある病院です。

この地域は横浜市内でも比較的、高齢化が進んでおり、世帯あたりの人数は減少傾向にあります。当センターを長くかかりつけの病院にしている患者さんも多く、今でも以前の名称である十全病院、浦舟病院と呼ぶ方もいるほどです。

10科の疾患別センターと20科の専門診療科、726床の病床を擁しています。病床利用率は2016年(平成28年)の平均値で88.5%です。地域の医療機関との連携、特に退院支援を強化しており、他院からの紹介率は85.5%、他院への逆紹介率は76.3%となっています。

1991年(平成3年)まで横浜市立大学医学部は、当センターのすぐ近くにあり、当センターは大学本院でしたが、医学部が金沢区に移転したとき、横浜市立大学附属病院が同じキャンパス内に開院しました。しかしそれ以後も、当センターは本院より病床数や手術件数の多い病院として、県内・市内の医療を支えてきました。

特に、当センターは周産期母子医療、高度救命救急、心臓血管や精神医療などの医療を強みとし、横浜市立大学附属病院はがんや難病に対する医療を強みとしてきました。しかし、2つの病院は医療圏が重ならないので、完全に機能分化をしていると患者さんにとって不便です。どちらの病院も病院としての基本的な機能をしっかりと持ちつつ、得意なところは明示する。当センターと横浜市立大学附属病院は、2つで1つの病院であるようなイメージです。

また、医学部の定員が増えてから、当センターでも医学部生の実習を多く受け入れるようになりました。以前は、横浜市立大学附属病院にない総合周産期母子医療センターや高度救命救急センターなど、いくつかの診療科だけでしたが、現在はいろいろな診療科で実習を受け入れ、医師の育成にも力を入れています。

当センターの特徴のひとつが、内科と外科を分けずに治療を行っていることです。心臓血管センターや消化器病センターなどでは、内科と外科が協力して診療にあたっているため、患者さんに受診していただきやすくなっています。

心臓血管センターでは、合併症のある心血管系の手術やカテーテル治療を多数行っています。なかでも虚血性心疾患胸部大動脈瘤大動脈解離は症例数が多く、全国でも有数の施設です。

消化器病センターでは下部消化管の症例数が多く、大腸がんの手術件数は横浜市内で2位の実績です。また、当センターは肝疾患診療連携拠点病院となっており、肝炎や肝臓がんの患者さんの診療を多く行っているのも特徴です。

当センターは、特定不妊治療指定医療機関に指定されています。不妊治療を専門に行う診療科として、2012年4月に生殖医療センターが新設されました。

同科の特徴は、神奈川県内で唯一、泌尿器科と婦人科が一緒に生殖医療を行っていることです。男性不妊の治療も積極的に行われているので、夫婦そろって同じ病院で治療を受けることができます。

*横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 部長 湯村 寧 先生のプロフィールおよび記事はこちらから

もともと当センターでは、泌尿器科と婦人科、それぞれの診療科で男女別に不妊治療が行われていましたが、生殖医療センターが新設されたことによって、両科で連携がしやすくなり、効率的に治療ができるようになったのです。

また、抗がん剤治療前の精子凍結や、遺伝相談の専門外来も行っています。  

当センターの形成外科内で設けられている専門外来のなかに、乳房再建外来があります。

ここで行われる乳房再建は、当センターの形成外科のなかでも特に専門性の高い領域です。当センターの乳腺・甲状腺外科や関連する病院とも連携しながら、患者さん一人ひとりに合わせた乳房再建を年間200件以上行っています。

今後、iPS細胞を使った乳房再建を臨床応用していくことも視野に入れています。

当センターの眼科は、緑内障網膜剥離の治療成績がよいことが特徴です。世界的にも評価されており、神奈川県内だけでなく、全国から受診に訪れていただいています。

網膜剥離をはじめとした網膜硝子体疾患には、すべての症例で患者さんの負担の少ない小切開硝子体手術を行っており、術後早期に回復することが期待できます。年間の手術件数は、500件以上行っています。

痛みの診断や治療を行う専門外来であるペインクリニックでは、2016年4月から多角的なアプローチを行う集学的痛み治療を実践導入しています。

2011年、厚生労働省の提言によって「痛みセンター連絡協議会」が設立され、全国で20大学が参加しています。当センターは、2017年4月に神奈川県内ではじめて参加登録されました。

従来の痛み治療は薬の内服や注射が主な治療でしたが、この集学的痛み治療では、看護師、臨床心理士、理学作業療法士、栄養士や鍼灸師など、さまざまな専門医療者が協力して治療にあたります。

必要に応じて、麻酔科以外にもリハビリテーション科、精神科や整形外科などの診療科からも協力を得ながら、患者さんの痛みを多角的に診て治療を進めています。

今後、神奈川県内の慢性痛治療の拠点病院として、発展していくことを目指しています。

当センターの医師は、とても明るくフラットな雰囲気が特徴です。先輩からの指導も手厚く、後輩の面倒をよくみる伝統があり、上下関係や診療科間の隔たりも感じさせないので、自由に研修や助言を求めることができます。この風土があるからこそ、患者さんに高度で安全な医療を提供することができると思っています。

医療者で神奈川県の医療を一緒に作ってくれるような方、もちろん、グローバルな活躍をしたいと思っている方は大歓迎です。誰にでも可能性のある学びの場だと思いますので、やりたいことがある方はぜひ相談にいらしてください。

都市部ではこれから高齢者が激増していくなか、地方に比べてまだ介護力が弱いといわれています。

療養型や回復期の病棟を見つけるのは難しく、在宅に戻るには環境を整えるのが難しいなど、急性期を終えた患者さんたちの転院先に苦慮することが多くあります。都市部には都市部ならではの問題があり、地域ごとに対応していかなくてはなりません。

そこで必要なのが、当センターが地域の医療インフラの構築にどうお役に立てるか、という見識です。病院完結型で医療を考えるのではなく、薬局や訪問看護などとも協力しながら、地域づくりや街づくりに貢献していかなくてはならないと考えています。 

当センターがある南区は、これからまだ整えるべき医療インフラがたくさんあります。これからどのようにそれらを構築していくのか、地域の関連機関のみなさんと一緒に考えていきたいと思っています。

これからも当センターは、市民のみなさまに信頼され愛される病院を創造していきます。

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