北海道済生会小樽病院は、1924年に済生会小樽診療所として小樽市に開設されました。2002年に現在の名称に変更され、2013年に現在の場所に新築移転しました。
258床という中規模病院で、古くから地域に密着した医療を提供し続けている済生会小樽病院ですが、高齢化が進む小樽地区で、どのような取り組みを行っているのでしょうか。院長である和田 卓郎先生にお話を伺いました。
北海道済生会小樽病院は、全国に370か所以上ある済生会グループの医療機関のひとつです。整形外科、神経内科、リハビリテーションを得意とする病院で、急性期から回復期まで一貫した医療を受けることができます。
小樽地区は、全国よりも急速に高齢化が進んでいる地域で、複数の疾患を抱える高齢者も増えてきています。時代の変化に合わせて地域住民のニーズ対応できるよう、近隣医療機関と連携しながら医療の提供を行っています。
当院は整形外科に強みを持っており、整形外科の担当医が7名在籍しています(2018年現在)。手・肘センター、脊椎・腰痛センター、関節外科センターという3つの専門外来を開設しています。
7名いる医師のうち、院長である私を含めて日本手外科学会の専門医資格を取得している医師が2名おり、小樽地区外からも患者さんが訪れます。
上肢に関しては、肘の外側が痛くなるテニス肘という疾患の内視鏡手術に強みを持っており、この治療に関しては東京など遠方からも受診される方がいらっしゃいます。
整形外科部長である織田医師は、手の外傷に関する治療に強みを持っており、経験した症例数も豊富です。局所麻酔での日帰り手術も多く、麻酔法を工夫した、痛みの少ない手術を心がけています。
また、骨粗しょう症の治療も積極的に行っています。骨粗しょう症になると、転倒して関節や大腿骨を骨折するケースが増加してしまうため、それを予防する試みを地域全体で協力しておこなっています。
地域のクリニックの先生と連携して、当院に紹介してもらって骨塩量を計測し、どのような治療をおこなったらいいかアドバイスします。その後、クリニックに戻って治療してもらい、1年に1回程度は定期的に骨塩量を測るというような取り組みです。
骨粗しょう症が原因で起こる骨折は、手関節と腰椎圧迫骨折、大腿骨頸部骨折が多いです。なかでも、年齢的に最初に起こりやすいのが手関節の骨折であり、手関節の骨折が起こると、そのあとに大腿骨の骨折を起こすリスクも上がると言われています。
早い段階で骨粗しょう症の服薬を開始したり、転倒予防のリハビリをしたりできるよう、地域ぐるみで対策をおこなっているのです。
神経内科では札幌医科大学と提携して、神経内科疾患に対する先端治療をおこなっています。
なかでも神経内科部長である松谷医師は、認知症の診療にも力を入れています。日々の診療だけでなく、済生会グループで行う認知症ケアナースの研修会の講師としても活躍しており、法人全体の医療レベルの向上に貢献しています。
当院の内科は、消化器を主軸にしながら、幅広くどんな疾患でも診察するという形をとっています。本来は、総合医や総合内科として行うことではありますが、自分の専門を持ちながら広くみているという形です。
たとえば、診療部長の水越医師は糖尿病を中心とした内分泌疾患を専門としていますが、それ以外の肺炎なども診察しています。また、明石医師は消化器の専門ですが、がんの緩和ケアにおいても尽力しています。
当院は、緩和ケアを積極的に行っていることも特徴のひとつです。がん治療認定医である医師や緩和ケア認定看護師を中心に、日々のケアに取り組んでいます。
治療は札幌市内の病院でおこなって、終末期を当院で担当するということも少なくありません。できるだけ地域で医療を行い、在宅で過ごせるように配慮しています。
地域住民のみなさん向けに、当院では市民公開講座や健康教室などを定期的に開催しています。出前健康教室では、町内会や職場など、要望に合わせて当院の専門スタッフが伺っています。
健康づくりの一環として、ぜひみなさまに活用していただければ嬉しいです。
病気の治療だけでなく、予防に関しても活動を進めています。当院では、健康増進を目的とした「済生会フェア」というイベントを開催していて、そのときにノルディックウォークを地域の方と行っています。
これは、ストックを持って行うウォーキングのことです。今は院内で行っていますが、今後は、たとえば地域にある大きいショッピングモールと提携して開催し、歩くとポイントが貯まる、といった仕組みでできればと考えています。
小樽は高齢者が多い地域ではありますが、若者が元気に過ごせる環境も大切だと考えています。若者の健康支援の一環として、野球のリトルリーグのチームをサポートしています。
具体的に行っていることは、選手たちのメディカルチェックです。野球をしていると肘や肩を痛めることがあるのですが、年に1回チェックをして、早めに見つけようという取り組みです。
このメディカルチェックでは、エコーなどを使って肘や肩の検診をしたり、全身的なチェックをしたりしています。始めて3〜4年目くらいで、検診で引っかかる子どもが減ってきました。高齢者だけでなく、若者も支えていける取り組みをこれからもおこなっていければと思います。
今後、人口の減少や少子高齢化が進んでいくと考えられるなか、当院に求められる役割にも変化が現れると思います。たとえば、ひとつの疾患に限らず、複数の疾患を抱える高齢者が増えてくると考えられます。
そういった時代の変化と地域のニーズにも対応できるよう、在宅へのシフトも含めて、今後強化していかなければと思っています。
その対策のひとつとして、看護部の強化を図っています。特定治療行為ができる看護師を増やすために、国が指定する研修施設として申請しています。
特定行為ができるようになると、医師の手順書をもとに自分で治療行為ができるようになります。そういった看護師が在宅で活躍できるような体制を、整えていきたいです。
当院は、急性期から回復期を経て自宅に戻るまで、一貫して切れ目のない医療を提供していることが特徴です。済生会の理念である「施薬救療の精神(分け隔てなくあらゆる人々に医療・福祉の手を差しのべる)」に基づき、地域のみなさまを支える医療の提供を目指しています。医療の質の高さだけでなく、看護部を中心に接遇にも配慮しています。済生会小樽病院を選んでよかったと思っていただける病院を目指し、職員一同、これからも努力してまいります。
当院は、職員同士が普段から連携を密に取ることができ、働きやすい雰囲気なのがよいところだと思っています。
また、医療クラークが非常に充実しているのも特徴で、医師が効率よく働ける環境も整っています。小樽は風光明媚で歴史のある街で、札幌も近く住みやすいです。
地域のなかで医療を学びたいという方に、ぜひ来ていただければと思います。
北海道済生会小樽病院 病院長
和田 卓郎 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。