独立行政法人国立病院機構 甲府病院は、2004年10月に国立病院機構 甲府病院と国立病院機構 西甲府病院が統合してできた病院です。山梨県内における政策医療の中核を担う医療機関として近隣地域の住民からの信頼も厚いと、病院長の萩野哲男先生はおっしゃいます。独立行政法人国立病院機構 甲府病院の機能、診療の特徴、将来像などについて萩野先生に伺いました。
国立病院機構 甲府病院の前身といえる医療機関はふたつあり、国立病院機構 甲府病院は1909年4月に甲府衛戍病院(えいじゅびょういん:陸軍病院)、国立病院機構 西甲府病院は1943年3月に山梨県立結核療養所としてそれぞれ創設されました。両院は2004年10月に合併、国立病院機構 甲府病院として新たなスタートを切り現在に至ります。
当院を受診される患者さんは甲府市内にとどまらず県内全域、診療科によっては東京方面からいらっしゃることもあります。2018年4月現在、15診療科、276床を有しています。
医療の充実と国民の健康を守るため国は国立病院を介して、高度先駆的医療や難病疾患に対する医療の実施、歴史的・社会的要請・他の設立主体では実施困難な医療の提供、救命救急医療、災害医療などを展開しています。こうした国を挙げた医療への取り組みのことを政策医療といいます。
国立病院機構 甲府病院も政策医療を担う病院の一角として、「私たちは良質な医療の提供を通して、患者さんの健康を支え、地域社会に貢献します」という理念のもと、特に周産期医療、重症心身障害医療、小児医療の維持と充実に力を入れています。
妊娠した女性に山梨県内で安心して出産していただけるよう、国立病院機構 甲府病院では周産期医療の充実に取り組んでいます。2017年度は379名が分娩されました。現在、遠隔地にお住まいで里帰り出産や転居等を控えている方でも、電話で分娩予約できます。[注1]
また当院は県内の地域周産期母子医療センターに指定されており、妊娠合併症や妊娠異常症などハイリスク分娩への対応も可能です。
[注1]分娩予約には定員があります。詳しくは当院へお問い合わせください。
重症心身障害者医療では、患者さんが明るく豊かな人生を過ごせるよう、そしてご家族のみなさんが安心してご利用いただけるような環境づくりに力を入れています。
当院には、重度の知的障害と身体障害を併せ持った方々を受け入れる重症心身障害病棟が3棟132床あります。入所されている方は、てんかん、呼吸器障害など何かしらの病気を抱えています。また気管切開、人工呼吸管理、胃ろうなどに対する医療管理が必要な方も増えつつあります。医師や看護師数をはじめ、リハビリテーションスタッフ、療育スタッフなどの職員が連携しあって診療や生活支援をおこなっています。
在宅医療推進の流れを受け、院内に併設する通所支援事業ではデイサービスの受入れを拡大し、病棟でも積極的にショートステイを受入れています。今後は小児在宅医療の実施も検討しています。
重症心身障害及び小児神経疾患に関する専門医療のほか、未熟児を中心とした新生児への集中治療も実施しています。また山梨県内の小児救急医療にも貢献しています。
2018年4月現在では7名の医師が中心となり、関節疾患、骨折など外傷一般やロコモティブシンドロームなど運動器[注2]に対する診療をおこなっています。当院の整形外科はプロ・アマチュア問わず、多くのスポーツ選手が受診されています。2017年度は整形外科で1,183件の手術を実施しましたが、そのうち910件は関節鏡(内視鏡)を使用した、なるべく体に負担をかけない手術でした。
2007年6月にはスポーツ・膝疾患治療センター(センター長 落合聡司先生)を開設して、スポーツが原因のケガ、特に膝の靭帯や半月板損傷など関節疾患に対する治療拠点を作りました。最近では再生医療である自家培養軟骨移植術を行っています。また変形性膝関節症を治療する代表的な手術である人工膝関節置換術にも取り組んでいます。
2018年4月には上肢・手の外科部門(手外科専門医 佐藤信隆先生)を開設、手根管症候群や腱鞘炎など上肢特有の病気に対し、より専門的な手術が可能になりました。
[注2]運動器:骨、筋肉、関節、腱、靱帯、神経などの総称
当院では胃や腸や肝臓など消化器のがんに対する手術が中心となります。特に腹腔鏡手術に力を入れており、手術による傷跡の回復が早いため早期の退院や社会復帰が可能となりました。2017年度に実施した全身麻酔手術164件のうち149件は腹腔鏡によるものです。
腹腔鏡手術に関する学会発表やセミナー参加も積極的におこなっていて、治療方法の研究治療成績の向上にも努めています。
国立病院機構 甲府病院に整形外科の医師として着任して21年、院長に就任して1年が経ちました。着任当時はなんでも診療しなければという思いが強く、また病院の診療科数も今より多く、医師数も充足していました。診療科によっては、かかりつけ医の感覚で受診されるが患者さんが多いのも、こうした当時の名残が関係しているのかもしれません。
これからの病院に必要なのは協調と相互理解です。
医療機関には、それぞれの個性と得意分野をいかした診療を通じて、地域に医療を提供することが求められるようになりました。国立病院機構 甲府病院には、山梨県内における周産期医療、重症心身障害医療、小児医療を担う国立病院機構としての使命があります。そして整形外科は運動器の治療を求めて県内外から、外科では腹腔鏡手術による体に負担の少ない治療を求める患者さんが受診されます。より多くの方に医療を提供するためには、いかに当院の特徴を理解していただけるかが鍵を握っています。
医療を通じて地域の健康を支え続けるため、より多くの患者さんに選ばれる病院になるため、国立病院機構 甲府病院は一歩ずつ前進し続けます。
独立行政法人国立病院機構甲府病院 院長、山梨大学 医学部 臨床教授
独立行政法人国立病院機構甲府病院 院長、山梨大学 医学部 臨床教授
日本整形外科学会 整形外科専門医日本リハビリテーション医学会 リハビリテーション科指導医・リハビリテーション科専門医日本リウマチ学会 リウマチ指導医・リウマチ専門医日本医師会 健康スポーツ医
1987年山梨医科大学部卒業後、同大学整形外科学教室に入局。1997年、国立甲府病院(現国立病院機構甲府病院)に勤務開始、2017年に同病院の院長に就任。同院のスポーツ・膝疾患治療センターの立ち上げに貢献し、多数の手術を手掛けてきた。
整形外科の臨床研究業績も多数あり、学会活動、病院管理運営など多忙な日々を過ごしている。また山梨県ラグビーフットボール協会のメディカル安全対策委員長など、スポーツドクターとして現場でも活躍している。
萩野 哲男 先生の所属医療機関
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