横須賀市立うわまち病院 心臓病と闘う会では、2003年より、「心臓リハビリテーション教室」を年に6回開催しています。当教室の目的は、心臓病の患者さんが積極的に運動に親しみ、生活を改善し、心疾患(心臓病)を克服することです。2018年5月12日(土)には春季2回目となる教室が開催され、46名の方が参加されました。本記事では、院長 沼田裕一先生の講義を中心に教室の様子をレポートします。
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当会では、心臓病の患者さんが積極的に運動に親しみ、生活を改善し、心臓病を克服することを主な目的として「心臓リハビリテーション教室」を開催しています。また、この教室では、心臓リハビリテーション学会運動指導士資格を有する理学療法士による質の高い運動療法、薬剤師による薬の適正使用に関する知識の提供、管理栄養士によるモデルカフェテリアを通じて、心不全を防ぐ美味しい食事の作り方・摂り方の説明、看護師による日常生活のケアの指導などを行っています。また、医療的なケアのみならず、MSW(メディカルソーシャルワーカー)による福祉・介護の支援の相談・社会的支援も実施しています。このような多職種の専門家による取り組みを通して、心臓病の患者さんを包括的にサポートしていきたいと考えています。
リハビリテーションは、社会復帰、名誉回復、復権などと訳されます。私たちが行うリハビリテーションの最終目標は、患者さんが社会に復帰し、名誉を回復し、復権を果たすことです。つらい心臓病を克服した患者さんご自身の社会復帰にとどまらず、人や社会のために役立とうと思う気持ちに達することが、真の社会復帰、名誉回復、復権であり、真のリハビリテーションであると私たちは考えます。私たちは、心臓リハビリテーション教室を通じて、心臓病の患者さんが同じ病気の方をサポートできるくらいまで回復してほしいという目標を持っています。
心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)とは、病気についての理解を深めるとともに、社会復帰を実現させるために、患者さんごとの運動指導、安全管理、危険因子管理、心のケアなどを総合的に行うことを指します。
心臓は、車でいえば「エンジン」のような臓器です。つまり、心臓病の患者さんはエンジンのパワーが低下している状態といえます。しかし、心臓リハビリとして運動療法を行うことで、多くの心臓病(特に、心筋梗塞や狭心症など動脈硬化性の病気)のリスクを軽減できる可能性があるのです。さらに、運動は精神を健康的な状態に保つことにも効果があるといわれています。
「心不全」とは、心臓のポンプ機能が低下することで、血液の循環がうまくいかなくなり、さまざまな症状が現れる状態を指します。つまり、心不全はひとつの病気ではなく、あらゆる心臓病の結果として起こる状態といえます。
そこで、今回は心不全を例に挙げ、「心臓リハビリ」について解説したいと思います。
心臓リハビリには、いくつかの方法があります。
日々、体重と血圧を測る習慣をつけることは大切です。なぜなら、早期に体重や血圧の変化を発見できれば、心不全の重症化を未然に防げる可能性があるからです。
心不全になると、徐々に水分が体に溜まります。一般的に、重症になると3〜5Lの水分が体に溜まり、体重が増加します。たとえば、普段60kgの方が、数日の間で急に65kgになることはほぼありません。もし約3日間で体重が3〜5kg急に増えたという場合には、心不全、あるいは腎臓の病気などを疑います。
血圧の高い状態(高血圧)が長期間続くと、心臓や血管に負担がかかります。そのため、高血圧は心不全の原因になりえます。毎日血圧を測り、きちんとコントロールすることは、心不全の予防につながるため非常に大切です。
心不全になると体に水が溜まり、むくみが起こります。むくみの原因は、基本的に「塩分や水分の取りすぎ」です。また、塩分の取りすぎは「喉の渇き」も招き、むくみを悪化させます。
そのため、心臓リハビリでは、塩分摂取量と水分摂取量の制限を行います。しかしながら、喉の渇きを我慢するのは難しいため、基本的にはまず「塩分摂取量の制限」を行います。
心臓リハビリで行う運動療法の目的は、以下の通りです。
心臓リハビリでは、ウォーキング、水泳、サイクリングなどが推奨されます。なぜなら、これらは運動量が一定で、急に激しく動いたり止まったりすることがないからです。反対に、ボールを追いかけて走る、あるいは人と競うようなスポーツは心臓リハビリに向きません。
心臓病と闘う会では、定期的に「スポーツ心臓リハビリテーションゴルフ」や「心臓リハビリテーションハイキング」を開催しています。(ゴルフやハイキングの様子は、記事2でお伝えします。)
心臓リハビリの運動療法に適している強度の目安は、「ややきつい」と感じる程度です。筋肉に少々の負荷を感じる、息切れしない程度の運動が理想的です。
では、どのくらい運動すればよいのでしょうか。基本的には、毎日少しずつ運動を継続することをおすすめします。目安としては週に900〜1,000kcalほど消費する運動、たとえば1日1時間ほどのウォーキングなどが適当です。
風邪を引いている、気分がよくない、運動をしたら調子が悪くなりそうだなと感じるときには、決して無理をしないでください。
主たる運動を始める前には、準備体操などのウォーミングアップを、運動後には整理体操などのクールダウンを行うことが大切です。特に高齢の方は、転倒による怪我などを防ぐためにウォーミングアップやクールダウンをきちんと行いましょう。
当会では、先に述べたゴルフのほかに、ハイキングなどを開催しています。詳しくは記事2をご覧ください。
「心不全が末期に陥ると、希望に満ちた話ばかりでは終われないことも多々あります。心臓リハビリテーション教室に参加されているみなさんは、心臓病を乗り越えてきました。すべての苦痛を取り去ることは難しいかもしれません。しかし、今後もぜひ当教室をうまく活用して、さまざまな課題を解決していただきたいと思います。」
沼田先生の講義のあとには、看護師の千代森愛美さんより「日常生活について」をテーマにした講義が行われました。お話されたトピックは、以下の通りです。
「心臓リハビリで大切なことは、運動療法、食事療法、禁煙などを長く継続することです。これまで実践されてきた方はそのまま継続していただき、これまであまり心臓リハビリを気にされてこなかった方は、この教室を機に、健康維持に少しでも努めていただけたらと思います。しかし、くれぐれも無理はしないでいただきたいです。もし何か気になること、わからないことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。」
心臓リハビリテーション教室の最後には、横須賀市立うわまち病院の岩澤孝昌先生よりご挨拶がありました。
「先日は、冬のように寒かったですね。寒い時期には、心筋梗塞による心停止が増加することが知られています。また、みなさんにはすでにお話ししたことがあると思いますが、ドイツでは「バイオウェザー(医学気象予報)」というサービスがあります。これは、人々の健康、病気の予防について、天気予報のように予報するものです。
これらのことからわかるように、人間の体は、急激な天候変動によって不調をきたしやすい傾向があるのです。ご自身の体調を整えるためには、環境の変化を前提に、水分摂取量や衣服、行動などをうまく調整することが大切です。
心臓リハビリテーション教室では、包括的に心臓リハビリの指導を行っています。みなさんには、当教室だけにとどまらず自治体の取り組みなども活用しながら、ぜひ最新の情報を獲得し、ご自身の健康に役立ててほしいと思います。」
心臓リハビリテーション教室のあとには、「横須賀市立うわまち病院 心臓病と闘う会」2018年度 総会が開催されました。総会員数140名のうち会員45名が出席、55名が委任状による出席となりました。総会の始めには、沼田院長からの挨拶がありました。
「本日はご多忙のなか、多数のご出席を賜り誠にありがとうございます。横須賀市立うわまち病院 心臓病と闘う会は、心臓病の患者さんやご家族が、心臓病についての正しい知識を学び、治療と予防、健康保持、ならびに会員同士の交流を図ることを目的として発足しました。昨年度は、心臓病に関する講演会や、心臓リハビリテーション教室、心臓リハビリテーションスポーツなどさまざまな行事を開催しました。多くのご参加をいただき、心臓病に関する理解を深めていただいたと思います。活動報告の詳細は、のちほど事務局より行います。」
次に、リハビリテーション科 科長の井上先生より2017年度の活動報告が行われました。
続いて、岩澤先生より、2018年度の活動計画についての説明が行われました。
活動計画の説明のあとには、役員改選が行われ、会長に就任した井上さんより閉会の辞をいただきました。このようにして、無事に総会は終了しました。
横須賀市立うわまち病院 病院管理者、公益社団法人 地域医療振興協会 副理事長
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