院長インタビュー

地域包括ケアの要としての役割を担うJCHO東京蒲田医療センターの取り組み

地域包括ケアの要としての役割を担うJCHO東京蒲田医療センターの取り組み
石井 耕司 先生

JCHO 東京蒲田医療センター 院長

石井 耕司 先生

この記事の最終更新は2018年07月03日です。

東京都大田区南蒲田に位置する独立行政法人 地域医療機能推進機構 (通称:JCHO) 東京蒲田医療センターは、1949年から蒲田地区唯一の公的病院として地域に密着した医療を提供し続けています。2014年より「独立行政法人地域医療機能病院機構」の病院として総合診療医の育成などを含めた、地域において必要とされる医療を行う地域包括ケアの要となっています。また、二次救急の指定病院として急性期医療を行っており、三次救急においても他病院との連携で対応しています。病床数は230床、そのうち49床が地域包括ケア病棟という回復期専用の病棟になっており、さまざまな患者さんを受け入れています。60年以上にわたり地域に密着した病院として機能してきた同院の取り組みについて、院長である石井耕司先生にお話を伺いました。

JCHO東京蒲田医療センターご提供

当院の診療科は、内科においては、消化器内科、循環器内科、呼吸器内科、糖尿病代謝内科、神経内科、外科においては一般・消化器外科、乳腺外科、脳外科、整形外科、泌尿器科、が主だって診療を行っています。さらに眼科、耳鼻科、婦人科、小児科、歯科口腔外科、透析室など、さまざまな診療科をそろえております。当院では、高齢者の方に多いとされる嚥下障害(飲食物が飲み込めなくなったり、飲みこんだ飲食物が肺に入ってしまったりする症状)のリハビリテーションに対して歯科口腔外科と神経内科と耳鼻科でチームを組んで取り組むなど、診療科の垣根を超えたチームワークが特徴です。また、JCHOグループには総合臨床医を育成するという大きな目標があります。そのプログラムに則って内科ではそれぞれの専門医だけでなく、総合臨床医も診療に当たっています。

内科のチームワークが極めてよいということは、当院が自負しているところです。また、消化器内科と消化器外科や、整形外科と循環器内科の連携で、整形外科の手術後の患者さんをみるなど、他診療科同士も密に連携していることが大きな強みです。

また、消化器外科医には腹腔鏡手術の第一人者である医師を顧問に迎え、腹腔鏡下の手術の指導や、実際に執刀していただいています。内科における超音波診断の分野でもまた、大家である医師に超音波、超音波下の処置の指導をしてもらっています。このように経験や技術が豊富な先生方に指導・教育をしていただくことで、医師たちのレベルアップや病院全体の医療の質の向上に努めております。

近年の当院の傾向としてはコニュニケ―ションやチームワークがよく、また、そういった雰囲気が肌に合う先生方が多くなっているように思います。診療科の垣根を超えた連携や、医師同士のコミュニケ―ションが豊富なことは患者さんにとって大きなメリットです。また、ただ仲がよいというだけではなく、切磋琢磨できる環境を整えることも大切だと思っております。そのような環境は個人の技術を引き上げるだけでなく、医療全体の質を向上させることにもつながります。

よい医療を提供するにあたって大切なことは、スタッフにとって働きやすい環境だと思っています。残業時間や夜勤、当直の回数を減らし負担を軽減したり、育児をしている医師に時間短縮勤務、当直免除などのシステムを有効に活用してもらったりしています。このように働きやすい職場を追求しています。医師だけでなく、どのような職種にとってもサポートが手厚く、働きやすい病院でありたいと思います。また、麻酔科医など少人数では責任や負担が大きい職種の場合も、医師を増やし、お互いの負担を軽減しながら、患者さんをスムーズにみていけるように環境を整えようと思っています。このような、さまざまな取り組みによって病院全体の雰囲気がよくなっています。

JCHO東京蒲田医療センターご提供

JCHOは全国ネットで地域住民、行政、関係機関と連携しながら地域医療に必要な医療を届け、また、地域医療の改善や改革を進め、安心できる医療を地域に提供することを目的とした組織です。JCHO病院になって以来、当院は特に地域包括ケアという概念を推進しており、日本医師会との連携を強化しております。当院は東京都大田区のなかでも主に蒲田医師会に所属し、大田区民約60数万人を支えています。私も蒲田医師会の理事として、医師会の方々との交流を深めております。そうして信頼関係を築きながら、よりよい医療をめざしています。開業医の先生方からの紹介や、東邦大学医療センター大森病院からの紹介も増えており、検査から治療に至るまであらゆる面で連携、協力を強め、地域の医療を支えられるよう努めています。

地域包括ケアを支える病院として、開業医の先生方からの紹介や、近隣の大学病院からの紹介、また当院から他院への逆紹介などを通して、連携を強めるよう努めています。そのほかにも、当院の診療科に他病院の医師にきてもらうなど、医師同士の行き来も盛んです。そういった関連病院と密に関わることで、地域の医療を支えています。また、当院から半径3kmほどの範囲の地域には多くの医院、中小規模病院、大学病院も存在しているため地域包括ケアに関してはモデル的な地域といえるでしょう。

当院のある大田区は、東京都のなかでも今後、人口がもっとも減らない地域と予想されています。ご高齢の方も多いなか、若い方の流入率も高いこの地区における当院の使命は、開業医の先生との中継地点としての役割です。それは専門的で高度な医療は大学病院にお任せして、二次救急医療の範囲で地域密着型医療を提供していくということだと思っています。蒲田地区唯一の公的病院として、地域住民のみなさまに充実した医療サービスを提供していきたいと思っております。

健診センターが併設されており、年間2万件ほどの健診を行っています。2016年の9月~11月は各月約4,000名、5月~8月が約2,000名と数多くの方に健診を受けていただいております。この健診のなかで生活習慣病などが見つかることも多く、より多くの疾患の早期発見に努めています。この健診センターでは、健診を予約のうえ、ご来院していただいた際には、経験豊かなスタッフにより、スムーズに検査ができるようになっております。1日に健診を受けられる人数は約200名です。健診センターのほかに院外の健診のバスも運用しているため、より多くの方の健診を受け入れることが可能になっています。2017年7 月には約2,870名の健診をしております。健診センター内で2,168名、院外の健診バスで702名の健診を行いました。院外での健診を取り入れたことにより、とてもスムーズな健診を実現させています。健診の際に問題が見つかった際には、健診センターと併設の当院でさらに精密検査を行い、必要であれば治療まで行えるため、安心して健診を受けていただけます。

当院の検診センターは年間で約2万人と、多くの方にご利用いただいております。そのように多くの方の検査をしておりますが、ただ早いというわけでは決してありません。その健診の質は高く、また、さまざまな検査を選んでいただくことが可能です。肺ドック、脳ドック頭、MRI、MRAなどの精密検査から、子宮頸がん乳がんなどの女性疾患に関する検査、また胃部内視鏡検査や肝炎ウィルスなどの消化器検査、内臓脂肪、アレルギー性鼻炎貧血健診、睡眠時無呼吸簡易検査など生活の質に関する検査など、バラエティに富んだ検査を受けていただけます。

医局派遣では若い先生が多く来てくれています。4~6年目の先生方が消化器内科・糖尿病代謝内科・泌尿器科・脳外科などで活躍してくれています。研修医につきましても、当院所属以外にも東邦大学から一か月程度のローテーションで来てくれています。常に同じメンバーではなく、若い先生がいらっしゃるとさまざまな刺激を与えてくれるので、みんなが活気づくのです。若い先生方は、今後長く続く医師のキャリアのなかで、臨床だけを行うということはないかもしれません。しかし、地域医療に根差し、どんな病気もみるというマインドを持っていてほしいと思っています。たとえ一時的であったとしても、当院のような地域包括ケアの病院でチームワークよく働くのもよいと思います。

当院はみなさまにとって、「近くて頼りになる病院」でありたいと思っております。一次・二次救急はお任せいただいて、当院の設備及びメンバーでは対応が難しいような三次救急は、他院と連携をとり、最適な医療機関に搬送できるよう努めております。そして、三次救急での治療が完了したら、また当院でフォローできるようにしています。近隣の病院や蒲田医師会の開業医の先生方とも、連携や連絡を密に取り、垣根を超えて大田区の患者さんをケアしていきたいと思っております。患者さんだけでなく、連携先の先生や、地域の開業医の先生方にも満足していただけるような医療サービスを提供していけるよう努めていきます。

今後は、麻酔科医や呼吸器内科、透析科の医師の充実や医療機器や建物などの設備も含め、医師同士だけでなく、全職種で垣根を超えてよいチームワークを築いていきたいと思います。また、教育面にも力を入れ、よい人材を育てることをめざしています。もちろん医師だけでなく、すべての職種に対しての教育に力をいれるのが大切であり、それによりさらに質の高い医療を、地域のみなさまに還元していけるよう心より努めて参ります。

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