2019年2月12日、横須賀セントラルホテルにて、横須賀市立うわまち病院(以下、うわまち病院)による、第9回診療連携の会が行われました。これは、うわまち病院が連携している医療機関の医師たちとの連携を深めることを目的とした会です。9回目の開催を迎えた今回は、150名を超える医師たちが集いました。本記事では、診療連携の会の様子をレポートします。
参加者の方々が入場すると、うわまち病院の職員によるマネキンチャレンジが行われており、参加者を大いに驚かせました。微動だにせず動作を止めるパフォーマンスに参加者から大きな拍手が湧き、診療連携の会は和やかな雰囲気で始まりました。
はじめに、うわまち病院の副病院長である池田隆明先生が、開会の辞を述べられました。
池田隆明先生:
この度は、第9回診療連携の会の開催機会をいただきまして、誠にありがとうございます。日頃より病診・病病連携へのご協力をいただきまして、大変感謝しております。
最近、1993年度から25年間分の、消化器内科に入院された患者さんの平均年齢を調べる機会がありました。その結果、消化器内科へ入院された患者さんの平均年齢は、25年前が61歳、10年前が68歳でした。そして昨年の2018年度は71歳で、中央値は74歳でした。この結果をうけ、日本の高齢化の進行が著しく進んでいることを改めて実感しました。深刻な医師不足である日本は、高齢化が進行して医療の需要がさらに増加すると、医療を提供する機能を維持するために医療の機能分担が必要となっていきます。ですから、これからの横須賀市の医療を維持していくためには、皆さまとの密な診療連携が重要になると改めて強く感じました。
また、昨年の診療連携の会を機に、月に1度フロムワン付属診療所 佐藤眞紀子先生に当院にお越しいただいています。その際に、ご紹介いただいた患者さんの経過をご説明したり、治療方法の検討を重ねたりすることができています。そうした経験からも、顔の見える、顔の浮かぶ連携体制が重要だと感じています。ですから本日の会によって、さらに顔の見える、顔の浮かぶ連携体制ができるようになれば、大変嬉しいです。
本日は、日頃感じていることなどについて、ぜひ遠慮なくご意見やご要望をご提示ください。これを持ちまして私の開会の挨拶とさせていただきます。本日は多数のご参加、本当にありがとうございます。
開会の辞のあとは、横須賀市医師会 会長である遠藤千洋先生、鎌倉市医師会 会長である井上俊夫先生によるご挨拶と、三浦市医師会 会長である飯島康司先生より乾杯のご挨拶がありました。
続いて、うわまち病院の病院管理者である沼田裕一先生より、ご挨拶がありました。
沼田裕一先生:
本日はお忙しいところ、たくさんの方にお集まりいただきまして、ありがとうございます。診療連携の会の恒例として、当院の状況をご報告させていただきます。
当院の初診の患者さんの数は、7,8年間ずっと減っています。外来・入院患者さんの数は、基本的には変わりありません。救急車の搬入台数はこれまで約6,000台/年でしたが、ここ数年では約7,000台/年になりました。救急車で搬入された患者さんの入院率は落ちており、昔は50%ほどでしたが、現在は30%ほどの入院率です。つまり、軽傷の患者さんが多くなっているということです。救急科の紹介患者数は、ここ数年ほどは横ばいです。
当院の患者さんの紹介率・逆紹介率は共に伸び続けており、紹介率よりも逆紹介率のほうが高くなっています。今後はよりいっそう先生方のもとへ患者さんの逆紹介を行ってまいります。
そして幅広い受け入れ態勢、低い敷居で、先生方と患者さんの間にある信頼をより強くできるような診療を行っていきますので、今後ともご協力をお願いいたします。
次に、うわまち病院の各診療部門の代表者より21診療部門のご紹介がありました。本記事ではその中でも、循環器内科、小児医療センター、高精度放射線治療センター、心臓血管外科のご紹介をします。
岩澤孝昌先生:
循環器内科では、包括的心不全治療センターを立ち上げ、心不全の治療に力を入れています。またこれまでと同様に、ドクターカーを用いた救急医療も行っています。
年間の冠動脈PCI*は430例、下肢EVT*は50例、計480例のカテーテル治療を行っており、下肢EVTの症例を多くこなしているのは、黒木茂先生と荒木浩先生です。さらにプロフェッショナルチーム、ICU、救命救急センターがこのカテーテル治療を支えており、みんなで「どんな重症患者さんでも救うのだ」という覚悟を持って治療にあたっています。
また、日本医科大学附属武蔵小杉病院の石原 嗣郎先生に週1回お越しいただき、アブレーション治療*を行っていただいています。心臓血管外科と下肢創傷ケアセンターでは、三浦半島の足を救うべく治療にあたっています。肺高血圧症*やファブリー病*の研究も継続しています。
循環器内科のスタッフは、全員が卒後23年以上のベテランスタッフです。ご紹介いただきましたら、LMTや三枝病変のような難しい病変の患者さんでも救えるという気持ちで治療にあたっています。
*PCI…狭心症や急性心筋梗塞などの虚血性心疾患に対して行うカテーテル治療方法
*EVT…末梢動脈疾患に対して行うカテーテル治療方法
*アブレーション治療…カテーテルを用いて不整脈の発生源を焼き切る治療方法
*ファブリー病…ライソゾームに存在する酵素のひとつであるα-ガラクトシダーゼAの活性が低下することにより、体内にグロボトリアオシルセラミドなどの糖脂質が蓄積する先天性の代謝異常症
*LMT…左冠動脈主幹部
*三枝病変…冠動脈の3つの大きな枝(右冠動脈、左冠動脈前下行枝、左冠動脈回旋枝)に狭窄がある状態
*肺高血圧症…何らかの原因によって肺動脈圧が上昇することにより右心系に負荷がかかり、その結果、右心不全をきたす病態
うわまち病院の肺高血圧症についての詳しい記事はこちらをご覧ください。
宮本朋幸先生:
小児医療センターは、新生児疾患、小児疾患、小児の外科系疾患に対する診療や、小児救急の受け入れなど、幅広い範囲の診療を行っています。また当院は、地域周産期母子医療センターや日本小児科学会小児科専門医研修施設になっており、小児科専門医を目指す医師を積極的に受け入れています。
小児医療センターに所属しているスタッフは14名、うち10名は日本小児科学会に認定された小児科専門医です。日本小児外科学会に認定された小児外科専門医は2名おり、さまざまなケアを提供しています。
小児疾患で困ったことがあれば、当院の小児医療センターにおまかせください。
大泉幸雄先生:
高精度放射線治療センターは、開設以来4年が経ちました。ご紹介いただく患者さんの数は増加しており、特に病院からの患者さんが増加している一方で、クリニックや開業医の先生からご紹介いただいている患者さんは減少している状況です。
高精度放射線治療センターでは「より強く より優しく 安全に」というスローガンのもと、腫瘍には多くの線量を、正常組織には少ない線量を心掛けて治療を行っています。今後ともよろしくお願いいたします。
うわまち病院の高精度放射線治療センターで行っている強度変調放射線治療(IMRT)についての詳しい記事は、こちらをご覧ください。
安達晃一先生:
心臓血管外科は、若い患者さんよりも高齢の患者さんが多い診療科です。現在、心臓血管外科で手術する3割ほどが80歳以上で、高齢者の患者さんが非常に多くなっています。90歳以上で手術をした方は、この2年間ほどで10名ほどいらっしゃり、幸いその方々は退院されていきました。そうした方々に、より低侵襲な治療をすることをテーマに、日々努力しています。
すべての高齢の方々を実際に手術できるかどうかは分かりません。しかし、地域で医療を完結するためには、手術や治療後に調子が悪くなった場合も診る必要があります。そのため、いずれ治療が必要になる可能性がある場合は、早めに手術をするという判断はよいことだと感じています。
日頃より患者さんをご紹介いただきまして、いつもありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
うわまち病院の低侵襲心臓手術についての詳しい記事は、こちらをご覧ください。
診療部門のご紹介のあとは、参加者も一緒に、うわまち病院の職員たちと共にマネキンチャレンジを行いました。カウントダウンのあと、全員が思い思いのポーズで動作を停止し、まるで時が止まったかのような空間に変化しました。座長の宮本朋幸先生の掛け声でマネキンチャレンジが終了すると、会場は大きな拍手に包まれ、会場の一体感が増したように感じられました。
最後に、うわまち病院の副病院長である山本和良先生が、閉会の辞を述べられました。
山本和良先生:
本日はお忙しい中、お越しいただきまして誠にありがとうございました。日頃より、先生方にはお世話になっております。今日はぜひ先生方に楽しんでいただきたいと思いまして、新たな試みとしてマネキンチャレンジを行わせていただきました。初めてご覧になる方には驚いていただけたかなと思います。そして、皆さまご協力ありがとうございました。
6年後に当院が久里浜へ新築移転をするまでの間は、現在の少しばかり古い建物で引き続き頑張ってまいります。皆さまとの連携をより密にして、地域医療に貢献していきたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。本日は誠にありがとうございました。
うわまち病院の「第9回 診療連携の会」は大きな拍手に包まれて、閉会しました。
横須賀市立うわまち病院 病院管理者、公益社団法人 地域医療振興協会 副理事長
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