院長インタビュー

がん患者さんの体と心に寄り添う医療を提供する大阪国際がんセンター

がん患者さんの体と心に寄り添う医療を提供する大阪国際がんセンター
左近 賢人 先生

地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター 名誉病院長

左近 賢人 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年07月08日です。

大阪市中央区大手前に病院を構える地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター(以下、大阪国際がんセンター)は、がん治療に特化した病院です。同院は、患者さんの体と心の負担を可能な限り軽減する治療に、力を入れています。

患者さんの体と心に寄り添う医療とはどのようなものか、病院長である左近賢人先生にお話を伺いました。

大阪国際がんセンター 外観
大阪国際がんセンター 外観

成人病の予防・早期発見・治療・研究などを目的として、1959年に、当院の前身病院である大阪府立成人病センターが設立されました。その後、1971年にがん部門を設立したことを皮切りに、当院はがん治療に注力した病院として歩み始めました。2006年には、地方独立行政法人化し、地域の皆さんが求める医療を柔軟かつ適切に提供する体制を整えることができました。

2006年に厚生労働省から専門治療を受けることができる病院として特定機能病院の承認を受けました。また2007年には、大阪府のがん診療の中核となる都道府県がん診療連携拠点病院となりました。

2017年、現在の大阪市中央区大手前に移転し、先進的ながん治療を実践する病院を目指して、「大阪国際がんセンター」に改称しました。大阪国際がんセンターでは、今までの先進的な医療の実践に留まらず、今後は患者さんと同じ目線に立ち、患者さんの体と心の負担を可能な限り軽減する医療にも励んでいきます。

腫瘍循環器科は、常勤医師5名、レジデント1名が在籍し(2019年4月時点)、主に高血圧心不全などの心血管疾患の合併症を有しているがん患者さんの治療前リスク評価を実施しています。治療前リスク評価によって、治療に伴うリスクを事前に把握したうえで各診療科と連携し、それぞれの患者さんに応じた治療を行っています。治療の過程で抗がん剤の副作用による心機能障害や血栓症などを併発したがん患者さんに対しては、薬物治療などを行っています。

腫瘍循環器科では治療前から患者さんの体の負担を軽減する治療の選択に努めるだけでなく、がん治療に伴う副作用などの情報発信も重要であると捉え、診療に励んでいます。

近年、体への負担を可能な限り少なくする低侵襲治療に対する需要が高まっています。内視鏡治療は低侵襲な治療のひとつとして、早期がんに適応されます。そこで消化管内科では、胃がん大腸がん食道がんなど幅広い消化管がんの早期発見・早期治療を心掛け、可能な限り内視鏡治療を行っています。

また食道がんに対しては、内視鏡治療をはじめ、抗がん剤と放射線を組み合わせた化学放射線治療、再発食道がんに対するレーザー治療など多様ながん診療を提供しています。今後も消化管内科では、がん専門病院として患者さんに応じた治療を行うことができる環境を整えていきます。

血液がんは、血液細胞をつくる骨髄にある造血細胞が悪性化したことによって発症します。血液内科では、急性白血病悪性リンパ腫多発性骨髄腫・骨髄異常形成症候群に対し、造血幹細胞移植を行っています。

造血幹細胞移植とは、血液がんの根本治療とされており、放射線治療や薬物治療だけでは治療が難しい患者さんに対して有効な治療法といわれています。血液内科では、これからも造血細胞移植に力を入れていきます。

また、大阪国際がんセンターの開院にともない、血液内科病棟は無菌病床を有する病棟となりました。これらの無菌病床を活かして、造血幹細胞移植をはじめ、放射線治療や薬物治療など複数の治療を組み合わせ、患者さん一人ひとりに適した血液がんの治療に取り組んでいきます。

消化器外科では、大腸がん・胃がん・食道がん・すい臓がんなど、多岐にわたる消化器がんの手術を行っています。患者さんの症状やがんのタイプに合わせてさまざまな手術や集学的治療を行っていますが、そのなかでも内視鏡手術に注力しています。

内視鏡手術は、開腹手術に比べて切開部が小さいため、痛みが少ない手術といわれています。患者さんの体への負担が少ないことから、早期復帰を目指すことができます。

消化器外科では、食道がん・胃がん・肝細胞がんなどに対して、内視鏡手術を行っています。がんの種類や進行によっては、消化管内科と連携して、患者さんができるだけ早く自宅に戻ることができるよう、患者さんの体への負担が少ない手術の提供に尽力します。

大阪国際がんセンター エントランスホール
大阪国際がんセンター エントランスホール

泌尿器科では、前立腺がんと腎がんに対して、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いた手術を実施しています。ダヴィンチは、3D画像による鮮明な視野とロボットアームを用いた繊細な手術手技を可能にします。ダヴィンチを用いた手術では、切開部が小さいため痛みが少なく、出血も少なくて済むため、患者さんの早期回復につながる手術ができます。

泌尿器科では、患者さんのがんの大きさや位置によって、日本泌尿器科学会認定の泌尿器科専門医が総合的にダヴィンチ手術の適応かを判断しています。これからも泌尿器科では、ダヴィンチ手術をはじめとする患者さんの体への負担をより軽減する治療に取り組むとともに、一人ひとりの患者さんの全身状態や希望に応じた医療の提供に努めます。

腫瘍皮膚科では、悪性黒色腫メラノーマ)の診療に注力しています。メラノーマとは、皮膚が黒色化する皮膚がんです。メラノーマの治療としては、主流である切除手術だけでなく、進行に応じて薬物治療や放射線治療などを組み合わせた治療が可能です。

皮膚がんの原因のひとつに、紫外線によって生じるダメージが挙げられます。そこで、腫瘍皮膚科の医師が、紫外線対策や皮膚がんの早期発見のためのポイントなど、皮膚がんに関する情報発信を積極的に行っています。

今後は、メラノーマセンターを立ち上げ、早期発見・早期治療にさらに力を注いでまいります。

当院では、初診から治療や入院まで時間がかかってしまうという課題を解決するために、クイックイン外来を設けています。クイックイン外来では、予約制を導入することによって、検査から治療方針決定までをできる限り早く完結できる仕組みをつくりました。

従来は、紹介状を持って来院し、医師の診断後に採血検査や画像検査などを予約するため、再度来院が必要でした。クイックイン外来の開始以降は、事前に紹介状をいただき、その情報をもとに患者さんに対し問診や必要な検査を実施した後、医師の診察を受けることが可能になりました。クイックイン外来の開設は、患者さんの検査や診察の待ち時間の短縮にもつながっています。

病気を抱える患者さんにとって、待ち時間は長ければ長いほど、体への負担となります。そこで当院では、会計の待ち時間を短縮する新たな会計システム(Medical Gate)を、2019年4月から導入いたしました。

この会計システムでは、患者さんは、診察が終わった後は会計を待たずに帰宅後にクレジットカードによる会計を行うことができます。これによって、患者さんは診療が終わり次第、スムーズに自宅に帰ることが可能になりました。

今後も、患者さんが診療以外の疲労を感じることがないよう、病院の体制整備を含め、新たな取り組みを積極的に行っていきます。

消化器外科カンファレンスの様子
消化器外科カンファレンスの様子

以前は、待ち時間が長時間におよぶ状況が慢性化していました。待ち時間に限らず、当院が抱える状況や環境を改善するためにマスタープランを作成し、その説明会(マスタープラン説明会)を実施し、組織として取り組むべきことについて、職員全員に周知し、議論しました。マスタープランは、病院が抱える課題とそれに対する統一見解を全ての職員が共有するため、医師・看護師から清掃担当の職員まで、全職員を対象に行っています。

当院では、患者さんの立場になって寄り添う医療を、職員一人ひとりが実践できるように、レクチャーを通して職員教育をしてまいります。

医師にとって欠かすことのできない資質は、思考力と行動力です。どちらが欠けてもいけません。深く考え、実践に移せる医師のみが、成長することができます。

若手医師の皆さんは、固定概念を排し、自らの頭で考えたことを周りの職員たちの同意を得て実践する姿勢を大事にしてください。

がん患者さんは、病気そのものによる体の負担に限らず、治療による苦痛や不安な気持ちを抱えていらっしゃると思います。

そこで当院では、治療による体の負担を軽減するだけではなく、がんによる患者さんのさまざまなストレスを軽減することにも尽力していきます。

全ての職員が患者さんと同じ目線に立ち、患者さんの体と心に寄り添う医療を提供するため、これからも努力を重ねてまいります。

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