院長インタビュー

地域の声に耳を傾け、常に患者さん目線の診療を目指す公立館林厚生病院

地域の声に耳を傾け、常に患者さん目線の診療を目指す公立館林厚生病院
新井 昌史 先生

公立館林厚生病院 院長

新井 昌史 先生

目次
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館林市(たてばやしし)邑楽郡(おうらぐん)の地域医療を担う病院として、救急医療を提供したり、市民講座や患者会を開催したりするなど、地域からのニーズに応えるために尽力している邑楽館林医療事務組合 公立館林厚生病院(以下、公立館林厚生病院)。同院では、スタッフ同士が密に連携を図るFace to Faceな関係を大切にしていることから、スタッフ間および診療科間の垣根を超えた体制を可能にしています。そんな公立館林厚生病院の院長である、新井(あらい) 昌史(まさし)先生にお話を伺いました。

公立館林厚生病院 外観
公立館林厚生病院 外観

当院は、地元の方々によって建てられた邑楽相互病院を前身としており、1964年に邑楽館林医療事務組合に運営が委託されることが決まり、公立館林厚生病院として診療を開始しました。2015年には、新病棟が開設されたことにより、病院内は非常に明るい雰囲気になりました。新病棟の開設にあたり、医療機器や設備が充実し、対応できる診療の幅も広がっています。

また、群馬県がん診療連携推進病院の指定を受け、特にがん診療については注力しています。放射線治療機器を導入したり、化学療法や手術を行う体制を整えたりすることで、がん診療により注力できる環境が構築されました。当院は、ご希望される患者さんに対して、通院で化学療法を行うことができるだけでなく、末期の患者さんの受け入れにも対応しています。

救急医療は、当院の特色のひとつです。診療時間外は、内科系と外科系の医師が1人ずつ常駐しており、緊急時にも迅速な対応ができるように努めています。万が一の事態に備えて当直の医師以外も待機体制を取っているため、その日の当直の医師では対応が難しい場合でも、専門医師による急患対応が可能です。

また、当院のもうひとつの特色は、急性期から回復期まで一貫して診られることです。当院は回復期リハビリテーション病棟を設けており、脳神経外科の患者さんを中心に受け入れを行っています。このように、急性期と回復期の患者さんを受け入れることができる設備を同じ病院内に設けることで、救急車で運ばれた患者さんが手術を受けてからリハビリテーションに移行するまでをスムーズに行うことができるようになりました。ほかの病院に移るなどの手間を減らし、積極的なリハビリテーションを継続的に行うことができるのは、患者さんにとっても大きなメリットになると思います。

当院では、脳梗塞脳出血などの脳卒中に関連した病気で運ばれてくる患者さんが多いため、それらの病気に対して迅速に対応できるように努めています。特に、脳梗塞の患者さんに対しては、後遺症をできる限り残さないためにもt-PA静注療法*を取り入れています。治療後は、回復期リハビリテーション病棟に移っていただき、可能な限り早い段階からリハビリテーションを開始します。この治療の流れをスムーズに行うことができるのは、前述したように急性期から回復期までの一貫した治療を可能にする体制があるからだと思います。

ドライビングシミュレーター
ドライビングシミュレーター

また、当院が位置している地域では、車移動が中心です。そのため、リハビリテーションの一貫としてドライビングシミュレーターを導入しています。おそらく、リハビリテーションとしてドライビングシミュレーターを取り入れているのは、珍しい取り組みではないでしょうか。高齢の方の運転などが話題になっていますし、患者さんご本人も退院してから運転することに不安を抱える方は多いです。そのため、当院では退院後も安心して生活していただけるように、積極的なサポートを行っています。

*t-PA静注療法:t-PAという薬剤を用いて閉塞してしまった血管を開通させる治療法

循環器内科で注力しているのが、カテーテル治療です。循環器内科医師が24時間待機しており、必要であると判断される患者さんが来た場合には、すぐに検査と治療ができる体制を整えています。

循環器内科ではDoor to balloon timeといって、血管が何らかの原因で詰まってしまった場合に、開通するまでの時間を90分以内に収められるように努めています。診療放射線技師や臨床検査技師などの医師以外のスタッフも、緊急時には迅速に対応できるよう体制を整えています。これからも、Door to balloon timeのために病院全体が一丸となって取り組んでいきたいと思います。

総合受付 待合
総合受付 待合

当院では、年に1回市民公開講座として、地域の方々に向けた館林邑楽医療フォーラムを開催しています。比較的大きな規模で行っており、テーマは終末期医療や救急医療、がんなど地域の方々に馴染みがあって、なおかつ興味を持ってもらえるようなものを選んでいます。当院の医師も登壇しますし、外部の方に講師をお願いすることもあります。

また、地域の方々の健康増進を目的とした健康講座も3か月に1回開催しています。当院の医師や看護師、栄養士などさまざまな職種のスタッフが講師を務めています。そのため、テーマは幅広く、脳卒中認知症の予防などについて、それぞれの職種の観点から講演を行っています。

そのほか、糖尿病教室も2か月に1回開催しています。当院の患者さんでなくても気軽に受講できる講義になっており、質問や相談ができる時間も設けているため、患者さんご本人だけでなく、そのご家族にとっても役に立つ教室になっています。

当院が注力していることのひとつとして挙げられるのは、患者会の開催です。

たとえば、がんの患者さんとそのご家族が集まるおしゃべりの会です。おしゃべりの会は、十数人で構成されていて、今の悩みや状況を自由に話し合っています。がんの治療は、長引いたり思い通りにいかなかったりということもあるので、患者さんの気持ちを安心させることができたり、がんを患ったからこそ見えた喜びや幸せといった前向きになれるお話を共有したりする場を提供したいと考えています。

また、当院ではリレー・フォー・ライフジャパンというがんに関する会にも積極的に参加しています。この組織には患者さんだけでなく、医療従事者も参加している集まりで、皆でがんに立ち向かっていこうという強い思いの下、患者さんへの支援やイベント、がんに関する研究や医師の育成などを行っています。

そのほか、あざれあ会という呼吸器系の病気を持った患者さんのための会も開催しています。あざれあ会は、自宅で酸素療法を行う慢性閉塞性肺疾患などの病気を持つ患者さんとそのご家族を対象としています。

ありがたいことに、これらの患者会は大変好評をいただいていますので、今後は糖尿病の患者さんへ向けた会なども作りたいと考えています。

病室の様子
病室の様子

当院では、出産後のお母さんと赤ちゃんを対象とした産後ケアを行っています。自治体と連携して行っている取り組みで、主な目的はお母さんのメンタル面のフォローです。

出産後、旦那さんは仕事があり、日中はお母さんと赤ちゃんの2人になる機会が多いでしょう。おそらく、初めての出産であれば、特に不安やつらさなどを感じているはずです。そのように日々育児と奮闘するお母さんたちが少しでも安心できるよう、一時的に赤ちゃんを預かってお母さんの休める時間を提供したり、助産師へ相談できる時間を設けたりしています。一時的に預けている時間は、寝る時間にあててもよいですし、考えごとをする時間にあててもよいと思います。また、お昼ご飯の提供も行っているので、少しは負担を軽くすることができるのではないかと思っています。育児に悩まれている方がいたら、ぜひご相談ください。

当院は、決して医師が多いとはいえません。しかし、そのような状況でも患者さんが安心して受診できるように、スタッフ同士が連携を取り合うFace to Faceな関係を大切にしています。Face to Faceな関係をつちかうことで、診療科間およびスタッフ同士の垣根がなくなると思っているからです。

たとえば、ほかの診療科の病気の可能性が考えられるときや、現在の診療科では原因が分からないときなどに、医師同士が密に連携を取り合って適した診療科を受診できるようにしています。このように、一人の患者さんに対してさまざまな診療科の医師が関わって、あらゆる方向からチームワークを強みとした医療が提供できるのは、当院の特色のひとつでしょう。

また、当院には部活動がいくつかあり、これがチームワークを強みとできている一つの要因かもしれません。仕事となると同じ職種の人とばかり固まってしまいがちですが、“スポーツの試合で勝つ”などの一つの目標があると職種関係なく団結することができます。こうして普段からコミュニケーションを大切にしているからこそ、よい雰囲気でチーム医療を行うことができるのだと思います。

新井先生

当院はまだまだ医師の数が少なく、来ていただいた患者さん全員に対応することができないこともあるかもしれません。それは、病院として大変心苦しいところではあります。当院としても、可能な限りお断りしたりお待たせしてしまったりする時間が短くなるように取り組んでいきたいとも思います。そのため、患者さんや地域の方々には、紹介制度の利用にご協力いただきたいです。そうすることで、お断りする機会やお待たせしてしまう時間を少しでも減らせますし、診療時間を確保できることからより適切な医療を提供することができるはずです。ぜひそういった制度を上手に利用していただき、患者の皆さんとも協力して、適切な医療が行き渡る環境を構築していきたいと思います。

これからの医療を担う若手の医師の皆さんには、ぜひ自分の専門範囲を狭めることなく、さまざまなことにチャレンジしてほしいと思います。いかに広い分野に興味を持ち、さまざまなことに挑戦できるかによって、のちの医師人生が変わってくるでしょう。

また、一緒に働いてほしい医師という面でいうと、やはり優しい心を持ち合わせた方です。忙しいなかで患者さんに優しくできる医師は素晴らしいと思いますし、重宝されると思います。特に、当院は地域との距離が近い病院なので、その分患者さんとの距離も近いです。そのため、専門性の高さももちろん必要ですが、患者さん目線に立って優しく接することができるということは重要な要素になると思います。ぜひ、この地域で医療を提供していきたいと思う方は、一緒に頑張っていきましょう。

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