医療法人川崎病院(以下、川崎病院)は、1936年に川崎造船所(現・川崎重工業)の企業病院として開設。1950年に医療法人として独立しました。
神戸市内の二次救急医療施設として24時間365日体制で活動しており、同時に在宅医療などの地域医療の充実のために、近隣の医療機関、各種施設との連携にも注力しています。
同院の診療体制の特徴や、患者サービス、職員へのサポートなどについて、病院長の西村 元延先生にお話を伺いました。
当院は、神戸市の二次救急医療施設として、救急医療に力を入れています。搬送される患者さんのために、救急科処置室やHCU、心臓カテーテル検査室、放射線科、さらには心臓血管病センターなど、各部門を西館3階に集約させています。そのため、搬送後すぐに迅速な集中管理が必要である重症患者さんへの対応がスムーズに行えるというメリットがあります。24時間365日、可能な限りいつでも対応可能な体制にしています。
当院は、内科系疾患全てに対応する一般内科ならびに、専門的な診断や治療を必要とする病気への対応を行う糖尿病内分泌内科、血液腫瘍内科、腎臓内科、消化器内科、循環器内科、そして総合診療科といった多岐にわたる内科系診療科があります。なかでも総合診療科の医師は、臓器別でなく内科全般の診療に通じているため、患者さんご自身でもどこが悪いか分からない初診時は、まず総合診療科で診察を受けることを推奨しています。内科疾患と想定される症状に一貫して対応し、初期診療を行い、診断結果次第で院内外の適切な診療科に紹介させていただきます。
また、当院は在宅医療を行う急性期病院としては全国的にも珍しい病院であり、さらに2021年からは総合診療科の医師による訪問診療も開始して通院が難しい患者さんを継続的に診療しています。
循環器内科の単科病棟に構える心臓血管病センターでは、心臓カテーテル検査や冠動脈CT検査、冠動脈形成術など、各種心血管疾患に関する検査、治療を行っています。近年では、心房細動などの不整脈の患者さんへのアブレーション治療にも積極的に取り組んでいます。
また、急性心筋梗塞など、緊急の対応を要する病気にも、24時間365日体制で常時待機している循環器内科医が対応しています。さらに、緊急カテーテル治療が24時間実施できることも特徴のひとつです。それにより、心筋梗塞などによる心肺停止状態の患者さんの受け入れが常時可能となっています。
当院は、地域の循環器救急を支える病院のひとつとして、日々搬送される患者さんと向き合っています。また、治療だけでなく、心疾患患者さんへの心臓リハビリテーションも実施しています。
大阪大学医学部外科学講座 消化器外科学教室との連携のもと、消化器外科の治療に注力しています。悪性腫瘍、胆石症、虫垂炎などに対する消化器領域の外科治療に加え、乳がんや鼠径ヘルニアなどの手術も担っています。また、高齢者人口の増加も意識して、患者さんそれぞれの年齢に適した治療とケアの提供を心がけています。
たとえば、病院での治療が終わり、病状が安定していても、日常生活動作(ADL)の低下から自宅療養に移ることが難しい高齢患者さんもいらっしゃいます。そうした患者さんに対しては、当院内の地域包括ケア病棟で療養していただいたり、患者支援センターで退院調整のサポートを行ったりと、治療後の療養環境にも配慮できる体制となっています。
一般外傷から先天性の運動器疾患、加齢に伴い発症するリスクが高まる変形性膝関節症や骨粗しょう症まで、幅広い年齢層の整形外科疾患を診療しています。加えて当院では、特に小児整形外科や手の外科分野の診療、脊椎や脊髄疾患、また、スポーツ医学の分野に注力しています。
手の外科の分野では、2010年10月に日本手外科学会の手外科認定研修施設となりました。また、スポーツ外来では、日本整形外科学会の認定スポーツ医が在籍し、野球による投球肘、肩障害やサッカーによるスポーツ障害などの治療を行っています。脊椎、脊髄疾患では、必要に応じて兵庫医科大学病院や神戸大学医学部附属病院など、近隣の大学病院の脊椎外科医と連携をとって治療を行っています。
地域包括ケア病棟は、急性期の治療を終えて回復期を迎えた患者さんの継続的加療を行うための専用病棟です。病棟内にリハビリスペースを設置し、通常のリハビリテーションに遊びの要素を加えた“遊びリテーション”を取り入れるなど、患者さんが前向きにリハビリに取り組めるような工夫を凝らしています。
同病棟では、当院で治療を受けた方だけでなく、地域の医療機関から紹介を受けた患者さんも積極的に受け入れています。
また、同病棟では糖尿病教育入院も受け入れています。多職種と連携しながら食事療法、運動療法、薬物療法による血糖コントロールを行っています。入院、外来患者さんのどちらも受け入れ可能であり、最終的には患者さん自身がセルフケアできるように、個別性を重視したアドバイスと支援に努めています。
当院は、“認知症患者さんが安心して受診できる病院”となれるように、さまざまな取り組みを行っています。入院前に患者さんの認知機能を評価し、認知症の有無と発症リスクを事前に把握しています。さらに、認知症による周辺症状(BPSD)によって治療時に何か問題が起きても、認知症サポートチームが適宜対応できるよう準備しています。
また、認知症の予防と早期発見のために、精神科リエゾンチームが病棟回診を行っています。この精神科リエゾンチームでは、認知症と同様に高齢患者さんに多く見られる、せん妄の予防にも意識的に取り組んでいます。
さらに、患者サービス向上委員会が中心となり、職員の認知症知識向上のために認知症サポーター養成講座を開催しています。認知症患者さんへの対応を学んだ職員は、オレンジリングを腕に付けているため、お困りのことがありましたら、いつでも気軽にお声がけください。
“地域医療連携室”“入退院支援室”“患者相談室”という3つの部署からなる“患者支援センター”は、患者さんやそのご家族の方、地域住民の方々に対して、外来診療から入院・退院までのシームレスな支援を提供することを目的に、総合的な患者サポート部門として2017年に開設しました。
“地域医療連携室”は地域の開業医の先生方との連携の窓口を担い、“入退院支援室”は入院が必要となった患者さんを入院前から支援し、退院後の地域の病院への紹介や、入所される施設の調整、経済的支援が必要な場合は利用可能な保険制度の紹介なども行っています。“患者相談室”は医療や看護だけでなく、入退(転)院、介護や保険制度に関することなど、患者様やそのご家族の方々からのさまざまな相談を日々受け付けています。
患者さんがご自宅や施設に移られても安心して継続したケアを受けられるよう医師、看護師、社会福祉士、事務職員など、多職種が連携してサポートを行える体制を整えています。
2018年には兵庫県より地域医療支援病院に認定され、240名以上の連携登録医(2018年8月21日現在)の先生方との連携を強化して、地域における医療提供体制の充実を図っています。
当院では、医療の質ならびに病院の機能の維持・向上のために、その中心的な役割を担う認定看護師の資格取得を奨励しています。また、当院に在籍しながら、資格取得に励んでいただける支援制度も整備されています。
たとえば、講習会への参加費や交通費に対する援助を受けることが可能です。さらに、受講期間中は出張扱いとなります。看護師の皆さんには、こうした制度を積極的に活用していただき、安心してスキルアップに励んでいただけたらと思います。
当院は、二次救急からプライマリ・ケア、在宅医療までを専門的に学べる病院です。
なんといっても診療科の垣根が低く、他の診療科の先生たちと和気あいあいとしたコミ ュニケーションができる病院であることが特長で、上級医による指導も心理的な安全性
に配慮した優しいものになっています。指導にあたるのは臨床経験も指導経験も豊富 な医師で、1 人につき 3 人程度まで少人数体制で丁寧に指導していきます。
また、当院では指導医のサポートのもとで研修の 1 年目から主治医として診療を行っ ていただくため、早くから診療経験を得ることができます。その際は患者さんやその家 族とよく話し合いながら治療を進め、患者さんから感謝してもらう患者さん中心の医療 の経験を積んでいただきたいと考えています。
研修後はご希望に応じて大阪大学、神戸大学、兵庫医科大学の医局をはじめ、多くの 進路を紹介しています。もちろん当院に戻って医師を続けている先生も何人もいます。 ぜひ当院で前向きに学んでください。
今後も、患者さんの生活に寄り添った在宅医療に力を入れていきたいと考えています。また、入院前から退院後まで患者さんの情報を常に把握し、生活のなかで何か問題が起きてもすぐに対応できる体制の設備を心がけています。そして、これからも地域の皆さんから信頼される病院になれるように尽力してまいります。
医療法人川崎病院 病院長/血管外科主任部長、国立大学法人 鳥取大学医学部附属病院 心臓血管外科 名誉教授
日本外科学会 外科専門医・指導医・特別会員三学会構成心臓血管外科専門医認定機構 心臓血管外科専門医・心臓血管外科修練指導者日本胸部外科学会 指導医・評議員補助人工心臓治療関連学会協議会 植込み型補助人工心臓管理医日本経カテーテル心臓弁治療学会 TAVR実施医日本心臓血管外科学会 特別会員日本循環器学会 FJCS日本人工臓器学会 評議員日本冠動脈外科学会 評議員
大阪大学医学部卒業後、川島 康生教授(当時)が指導する大阪大学医学部第一外科学講座へ入局。以後、心臓血管外科の臨床および研究を中心に活動。’95年より米テキサス・ハート・インスティチュートに臨床心臓移植フェローとして勤務。帰国後、阪大心臓血管外科で重症心不全の外科治療、大動脈瘤を担当。’06年に鳥取大学医学部心臓血管外科学教授として、低侵襲心臓血管外科手術を積極的に導入。高齢者にも優しい心臓大血管治療として、大動脈瘤に対するステントグラフト治療の体制を整備。重症下肢虚血など、閉塞性動脈硬化症の手術治療にも造詣が深い。
西村 元延 先生の所属医療機関