院長インタビュー

革新と歴史の融合で群馬県の医療を支える群馬県済生会前橋病院

革新と歴史の融合で群馬県の医療を支える群馬県済生会前橋病院
細内 康男 先生

群馬県済生会前橋病院 院長

細内 康男 先生

目次
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群馬県前橋市南東部に位置する群馬県済生会前橋病院は、がん医療など高度な治療や専門的な医療を提供する地域の基幹病院です。特に急性白血病膵臓がんなどの治療で知られています。また、新たな医療技術を取り入れながら地域医療支援に注力し、クラウドファンディングを通じたDMATカーの更新など、新しいチャレンジにも積極的です。同院院長の細内 康男(ほそうち やすお)先生に群馬県済生会前橋病院の特徴や今後の展望を伺いました。

済生会は明治天皇の「済生勅語」を理念として、1911年(明治44年)発足の“恩賜財団済生会”が原点の全国組織で、現在全国40都道府県で約64,000人(2023年12月時点)の職員が働く、日本最大級の社会福祉法人へと発展を遂げ、低額診療事業を含む多岐にわたる医療・福祉サービスを提供し続けています。

当院は群馬県前橋市南東部に位置しています。前橋医療圏からの入院患者割合はわずか40.3%であり、高崎地域を中心にほかの二次医療圏からの流入患者が多いことが特徴であり、他県から患者さんが来ることも少なくありません。前橋市は、人口減少傾向にあるものの、ほかの地域と同様に65歳以上の高齢者は増加しており、医療需要の変化が見受けられます。当院はそうした変化も意識しながら、急性期病院として柱となり地域医療を支えられるよう尽力しています。

当院は、1943年(昭和18年)に8床の診療所として前橋市北曲輪町に開設され、その後1974年(昭和49年)に前橋市上新田町へ移転しました。済生会の基本理念である“施薬救療”の精神を胸に、急性期病院として24時間体制の救急医療に取り組み、専門的で新しい治療法を提供することにも注力しています。また、群馬県地域災害拠点病院、災害派遣医療チーム(DMAT)指定医療機関の役割を担い、群馬県がん診療連携推進病院として、がん医療にも力を入れています。

当院は、前橋市の二次救急担当病院であり、24時間体制で救急患者さんを受け入れるよう努めています。また前橋市に限らず高崎市などほかの医療圏からの救急患者さんも受け入れています。

さらに当院は群馬県地域災害拠点病院として指定されていることから、地域の災害時における対応や防災活動はもちろん、大規模災害時には災害時派遣医療チーム(DMAT)が2チーム体制で活動しています。2024年には、クラウドファンディングによる救急搬送車(DMATカー)の更新を行い、チームを3チーム体制へと拡充する予定です。

当院では内科領域が細分化されており、血液内科、腎臓リウマチ内科、循環器内科、消化器内科、呼吸器内科、総合内科などの各領域に専門の医師がそろっています。中でも、血液内科は急性白血病の治療には特に力を入れており、群馬県における急性白血病治療の中心的な役割を果たしています。化学療法はもちろん、造血幹細胞移植療法も行っており、移植用の無菌室は3床、化学療法用の無菌室は20床整備されています(2023年12月時点)。また、臨床研究や治験も盛んに行っています。

腎臓リウマチ内科では、腎炎ネフローゼ症候群といった腎臓の病気をはじめ、関節リウマチなど自己免疫疾患の診断や治療も行っています。また、慢性腎臓病CKD)の早期発見にも努めており、かかりつけ医の先生方と協力して診療を進めたり、講演会や勉強会を行ったりしています。腎臓リウマチ内科には透析センターが併設されており、血液透析だけでなく腹膜透析も行うなど幅広い血液浄化療法に対応しています。特に腹膜透析は、通院の頻度が減り患者さんの負担が少なくなるため、適応のある患者さんには積極的に検討しています。

消化器内科は、日本消化器病学会専門医認定施設や日本消化器内視鏡学会専門医指導施設などに認定されており、地域の中でも重要な役割を担っています。消化管(食道、胃、大腸)に対しては積極的に内視鏡治療を行っており、また肝胆膵領域の内視鏡的診断にも注力しています。

肝臓の領域では、フィブロスキャンと呼ばれる検査装置を導入しており、肝組織への脂肪沈着や肝硬度を低侵襲(ていしんしゅう)かつ短時間で調べることが可能となりました。また、肝がんに対するラジオ波焼灼療法(RFA)・マイクロ波凝固療法(MWA)といった治療も積極的に行っています。

当院は、腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)を得意としており、食道や胃、大腸などをはじめ、肝臓や胆嚢、膵臓(すいぞう)といった肝胆膵の領域でも積極的に腹腔鏡下手術を行っています。特に、難易度が高いとされている膵臓がんや一部胆道がんに対する膵臓手術については、当院の誇る技術の1つと言えます。

また、肝胆膵分野において当院は日本肝胆膵外科学会修練施設Aに認定されるなど、育成拠点としての役割も担っています。この施設認定には、高難度肝胆膵外科手術の症例数年間50例以上など厳しい基準が設けられており、現在全国で139施設が認定を受けています(2023年8月時点)。当院はその1施設として、地域の皆さんに安心して頼っていただけるよう日々努力を重ねています。

さらに、2022年12月には手術支援ロボット(ダビンチ)も導入しており、消化器を中心に肝臓や膵臓に対してもロボット支援手術を実施しています。

整形外科は1980年に群馬大学整形外科学教室の関連施設としてスタートしました。スポーツ傷害や交通事故・労働災害などによる障害、先天性の疾患や加齢に伴う変性疾患、また手の外科(手外科)を有しており県内でも重要な役割を果たしています。整形外科においても、顕微鏡や関節鏡を用いた手術を行っており、リハビリにも力を入れて取り組んでいます。

当院では、前述のとおり消化器や肝胆膵領域のがんの治療はもちろん、緩和ケア病棟の開設により治療からターミナルケアまでトータル的な医療を提供することが可能となっています。また、緩和ケアチームとして、医師、看護師、薬剤師、社会福祉士といった多職種メンバーがチームとなり、がん患者さんの体や心、また生活面での不安やつらさに寄り添ったサポートを行っています。

当院は地域の中核的な病院として、高い専門性のある治療や充実した医療設備を整え、地域の皆さんを支える使命があります。そのため、地域医療支援病院としてかかりつけ医の先生との連携に取り組んでいます。医療連携をしっかりと行うことで、地域全体の医療サービスの質を向上させることにもつながっていくのではないかと思います。

当院では、健康経営を基本方針の1つとして掲げており、職員にとって働きやすい環境をつくれるよう心がけています。その一例として、来年度から始まる医師の働き方改革を先取りし、医師に変形労働時間制を導入してフレキシブルな働き方をしつつ労働時間を減らせるようにしました。取り組みはうまく進んでおり、働き方改革で求められる一番高い水準をクリアできそうです。

一方で、労働時間が短くなる分、より効率よく働いていただく必要があります。そこで病院の情報を職員に公開し、病院の状況を自分ごとと捉えられるにしました。その一例として、当院での取り組みに対する意識、目標などを常に共有できるようKPI(重要業績評価指標)の公開を行い、当院の状況を職員の誰もが分かるようにしています。

さらに、クオリティー・インディケーター(QI)という指標を用いて自院の診療データを解析し、病棟のベッド稼働数や救急の受け入れ件数など、重要な情報を職員が瞬時に確認できるようにもしています。リアルタイムで診療データを解析することで効率よく働けるだけでなく、救急医療を担う当院に求められる“断らない医療”の実践にもつなげていければと考えています。

病院全体の環境改善にも積極的に取り組んでいます。済生会創立理念である「愛と希望」のある明るい病院でいられるよう、患者さんへの声がけを大切にするなど、当院ではホスピタリティの意識向上を職員一同強く意識しています。

当院では、“DMATカーの更新・救急処置室の改修”をテーマに、2023年11月よりクラウドファンディングに挑戦しました。当院が行ってきたこと、これから行うべきことを発信し、共感をいただいた多くの方からのご寄付により、目標を達成いたしました。同時に多くの応援メッセージをいただき、そのメッセージによって職員は我々が行ってきた医療、福祉の意味、そしてこれから進むべき方向を改めて認識することができました。

医療・福祉を通して地域に貢献すること、高いホスピタリティ(心からのおもてなし、ふかい思いやり)をもって医療にあたることの大切さを自覚し、医療人としての誇りを再確認できました。ご支援に心から感謝申し上げます。

今後も、医療・介護・予防医学の分野はもちろん、きめ細やかな社会支援など社会福祉法人としての役割を果たすとともに、さらに質の高い専門的な医療を提供できる体制づくりに努めてまいります。

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