横浜市の中心部に位置する横浜市立市民病院は、急性期医療の提供や救急医療、周産期医療、がん医療などの拠点として市民の健康を守る重要な役割を果たしています。また、災害拠点病院や第一種感染症指定医療機関として使命を受けており、市民の“安心とつながりの拠点”を担う大きな存在です。病院長の中澤 明尋先生に同院の特徴や今後の展望についてお話を伺いました。
当院は、横浜市の中心部に位置し、650床と34の診療科(2023年12月時点)を有する病院です。横浜駅から北西へ約2km、緑豊かな三ツ沢公園に隣接しており、正面のバス停に加え、最寄りの“三ツ沢総合グランド入口”からわずか1分とアクセスも良好です。さらに、病院からは“みなとみらい”の美しい景色が一望でき、晴れた日には富士山も望むことができる絶景のロケーションを誇ります。
医療機能については、高度急性期を中心とした総合的な医療サービスを提供するとともに、地域の医療機関と協力しながら療養生活を支援し、横浜市民にとって“安心とつながりの拠点”“健康を守る最後の砦”となっています。
当院は地域がん診療連携拠点病院、救命救急センター、災害拠点病院、地域周産期母子医療センター、第一種感染症指定医療機関等に指定されているほか、外国人患者受け入れ認証医療機関としても機能しており、医療の国際化にも力を入れています。たとえば、隣接するニッパツ三ツ沢球技場でのJリーグやラグビートップリーグなどのスポーツイベントが開催される際には、各チームドクターに協力しているほか、スポーツイベント時の医療サポートも行っています。さらに、YOKE(横浜市国際交流協会)等の仲介により、ウクライナ避難民の受診にも対応しています。このように当院の特徴として“地域密着”と“国際貢献”が挙げられます。
当院は横浜市の救急医療の要として、積極的に救急車の受け入れを行っており、2022年度は約7,000件の救急車を受け入れました。
また、横浜市全体で子育てをしやすい環境づくりを推進するにあたり、小児・周産期医療の充実を図っており、24時間体制で子どもたちや妊産婦が安心して治療を受けられるよう体制を整えています。
当院の職員は、まじめで技能が高く、全ての患者さんに真摯に向き合って対応しており、何よりも誇れる病院の財産です。その自慢の職員たちで提供するがん医療では、新しい技術を駆使した治療を提供し、患者さんの生活の質の向上にも貢献できるようにしています。たとえば、精密な作業が可能となる手術支援ロボット“ダビンチ”等を活用し、呼吸器外科、消化器外科、泌尿器科、産婦人科など幅広い診療科で、患者さんの体への負担が少ない手術を行っています。また、高精度放射線治療機器で局所的に高濃度の放射線を照射し、ほかの箇所への影響を最小限に抑える“IMRT”等の治療も行っています。
心血管疾患医療では、懸垂型の血管造影装置を設置したハイブリッド手術室により、カテーテル治療と外科手術を同時に行うことができるほか、心臓弁膜症の先進的なカテーテル治療であるTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)も実施しています。
加えて炎症性腸疾患(IBD)科では、クローン病や潰瘍性大腸炎の治療に専門の医師が対応し、難しい大腸の手術も行っています。また、血液内科では、免疫・血液疾患に対し、高度な薬物療法や造血幹細胞移植等も実施しています。
当院では、多職種で治療や相談支援等を行う前立腺・膀胱センター、ブレストセンター(乳がん)などの機能的センターを設置し、チーム医療の推進に力を入れています。これにより、さまざまな領域でより専門性の高い医療の提供が可能となっています。
また、当院には臨床研究部があり、さまざまな病気に対して幅広く臨床研究を実施しています。2022年度では血液内科の骨髄異形成症候群や、呼吸器内科の非小細胞肺がんや小細胞肺がん、炎症性腸疾患(IBD)科のクローン病や潰瘍性大腸炎、感染症内科のCOVID-19など、さまざまな臨床研究を実施しています。
子どもたちに医療の世界を体験してもらう“1日メディカルパーク”等の体験型啓発イベントを開催しています。子どもたちが実際に外科手術の縫合や心臓マッサージ、AEDの使用を体験することで職業選択の参考になり、また病気の理解や予防の大切さを学ぶことができるのではないかと思います。
また、“市民病院とハマの名店がお届けする健康レシピとシェフのコラム”という企画を通じて、横浜の企業や店舗と協力し生活習慣病予防を啓発する料理教室を実施しました。こうしたレシピをまとめた本も出ており、おいしく健康に配慮したレシピをご紹介しています。
さらに、当院はニッパツ三ツ沢球技場を本拠地とするJリーグの横浜FCとのコラボレーションを通じて、地域社会に密着したさまざまなイベントを開催し、スポーツを通じた健康促進にも積極的に貢献しています。
当院は、横浜市民の健康を守る“最後の砦”として、いざというときに頼れる存在であり続けたいと考えています。また、24時間体制での救急対応や災害時の緊急医療の提供を通じて、市民の“安心とつながりの拠点”となることを目指しています。
特に災害発生時においても、最大1週間継続して診療を行うことができる設備や備蓄を整備しています。また、三ツ沢公園と連携し、緊急時には陸上競技場をヘリポートとして使用することが可能であることから、ドクターヘリによる搬送能力を有し、高台に位置するため津波のリスクにも強い構造を持っています。
私自身、研修医時代から通算3回20年以上にわたり当院に勤務していることから、常に愛着を持って当院を見守っています。 今後は隣接する三ツ沢公園を活用し、運動と医療が一体となったイベントの開催や、高齢者の増加に対応した予防医療の推進も実現できればと考えています。