院長インタビュー

患者さん第一主義で先進医療と低侵襲医療を進める東京医科大学病院

患者さん第一主義で先進医療と低侵襲医療を進める東京医科大学病院
山本 謙吾 先生

東京医科大学病院 院長

山本 謙吾 先生

新宿の東京都庁にほど近い場所にある東京医科大学病院は、先進医療や臨床研究を行う特定機能病院であり、新宿から西側の地域における3次救急の重要拠点、また地域がん診療連携拠点病院として東京の医療を牽引する病院です。“人間愛に基づいて、患者さんとともに歩む良質な医療を実践します”の理念のもと、早くから手術支援ロボットの導入を行うなど患者さんに負担が少ない医療を重視する同院について、病院長の山本(やまもと) 謙吾(けんご)先生にお話を伺いました。

東京医科大学病院は、高層ビルが立ち並ぶ新宿にあります。この地に病院ができたのは1931年で、設立当時は淀橋診療所という名前でした。その後1946年には東京医科大学設立とともに東京医科大学病院と改称し、現在は特定機能病院(高度な医療の提供、高度な医療技術の開発や高度な医療に関する研修を実施する能力がある病院)として日本の医療の進歩を牽引しつつ、新宿駅の西側にある3次救急の病院として新宿区、中野区、杉並区などから多くの患者さんを受け入れています。

その後、2019年には病棟の建て替えが完了し、新しい設備や導線をもった現代的な病院に生まれ変わりました。都庁近辺のオフィス街からの患者さんも多く、都会にありながらも地域の医療ニーズに応える病院としての役割も大きくなっています。

当院の1つ目の特徴は、大学病院として“質の高い医療”を提供できる点です。例えば治療が難しい聴神経腫瘍のような病気に対して、当院は新しい機器と治療経験豊富なスタッフが揃っており、患者さんは日本全域からいらっしゃいます。また当院の細胞・再生医療センターでは自分の細胞を使って血管の再生をするといった進んだ再生医療を提供しています。

“質の高い医療”は、なにも病気の治療だけに限りません。当院は全世界的に進められている医療AI開発の一翼を担い、肺がんの早期診断や大腸がんの予測をAIで行うシステムを開発しました。また、AIによる診断も積極的に導入を進めており、今年からX線の読影にAIを使い診断の効率化や精度向上に寄与しています。

上記のような新しい医療への取り組みは、当院の特長の1つといえるでしょう。現在、日本の大きな病院を中心に手術支援ロボットの導入が進んでいますが、当院はその初期に「ダヴィンチ」の導入を行った病院の1つです。ロボットは精密な手術が行えるとともに、手術に際して開ける孔が従来の方法よりも小さくなるため、体への負担が少ないというメリットがあります。現在は泌尿器科、産科・婦人科、呼吸器外科・甲状腺外科、消化器外科・小児外科、耳鼻咽喉科・頭頸部外科など、多くの診療科で「ダヴィンチ」を用いた手術を行っており、特に消化器系の手術数は日本国内でもトップクラスです。来年には、最新型に更新する予定で、これによりさらに進化した医療技術を提供することが可能になります。

また、今年からは整形外科でも手術支援ロボット「メイコー」を導入し、人工股関節や人工膝関節の手術に活用しています。当院は今後も新しい、信頼できる医療の開発や導入を積極的に行い、治療の質を向上させていきます。

当院の医療の特長をもう1つ挙げるとすれば、平均在院日数が短いことです。2020年から2022年にかけて、当院は平均在院日数がいずれも10日を切っています。

当院のような急性期の重症患者が入院する病院では平均在院日数は10日を切るのが難しいとされています。それができるのは徹底的に低侵襲(体への負担が少ない)な治療にこだわっているからです。

具体的には、さまざまな治療に低侵襲な方法を取り入れ、特にロボット手術の利用を増やすことで患者さんの回復を早めることができます。さらに医療の内容を評価・改善し、より質の高い治療を提供することを目的とした“クリニカルパス”を多くの治療に適用し、患者さんに理解をいただきつつ適切な医療提供を行うことで、入院期間の短縮を実現しています。もちろん、当院の優秀な総合相談・支援センターのソーシャルワーカーを含むスタッフの存在も大きな要因です。

このような取り組みを通じて在院日数を短縮化することは、体にも、入院費用の面からも患者さんにとって望ましいといえます。我々は今後も、低侵襲な治療を進めて患者さんの負担が少ない医療を提供し続けたいと考えています。

低侵襲な治療にこだわっているのは、当院の基本理念である“人間愛に基づき、患者さんと共に歩む良質な医療を実践します”という考えに根ざしています。患者さん第一の視点での医療提供は当院の使命と考えており、それは低侵襲な治療や、より患者さんが望む医療の提供に繋がっています。

例えば最近では、妊婦さんからの要望の高まりを受けて“24時間365日の無痛分娩”に対応しています。フルタイムの無痛分娩はなかなかスタッフが集まりにくく、どの病院でもできるというものではありません。しかし当院では産科の医師の90%以上が麻酔管理のスキルを身に着けているため実現することができ、いつでも安心して出産に臨んでいただけるようになりました。

また、「メディカーサ」という予約制の診療施設を2021年にオープンしました。ここではプライバシーを重視した落ち着いた雰囲気のもと、当院の経験豊富な医師を指名して待ち時間なく診察を受けることができます。おかげさまでビジネスの最前線に立つ忙しい方々からご好評をいただいており、非常に嬉しく思っています。

当院はこれからも患者さん第一の考えのもと、患者さんのニーズに応える医療機関であり続けたいと思います。

山本謙吾先生

実は我々は、患者さんを「患者様」と呼ぶようなことはありません。理念でも“人間愛に基づいて、患者さんとともに歩む”と言っています。我々は、患者さんをお客様として遇するのではなく真摯に治療を必要とされる方と捉え、患者さんの目線でしっかりコミュニケーションをとって最善の治療を行うことこそが大事だと考えており、患者さんの言うことを聞くだけの無責任な治療を行うことは避けなければなりません。

このことを私は、当院のスタッフに「我々の仕事は社会で重んじられるが、それは重い責任が伴うからだ。重んじられることに安住することなく、『ノブレス・オブリージュ』の精神で患者さんと向き合ってほしい」という言い方で伝えています。

だからでしょうか、当院のスタッフは病気に立ち向かう患者さんを全力でサポートする責任と立場を常に意識していると感じます。その一例として、新型コロナウイルス感染症の感染拡大期に当院では院内でのクラスターを防ぐために徹底した対策を講じ、日常生活においても厳格な行動基準を守りました。

このように自分を律することができるスタッフが揃っている当院ですが、みな決して堅い人柄というわけではなく、むしろ温かな人が多いのが当院の誇るべき特長です。最近は、「温かな雰囲気の病院ですね」と言っていただけることが多くなってきました。当院は大学病院ではありますが、決して敷居が高い病院ではありません。お困りのことがあればぜひお気軽にご相談ください。

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