院長インタビュー

セーフティネット医療の拠点として地域医療の重責を担う 兵庫中央病院

セーフティネット医療の拠点として地域医療の重責を担う 兵庫中央病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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兵庫中央病院は、兵庫県東部の三田市にある国立病院機構の病院です。同院はセーフティーネット医療を提供するとともに、急性期医療や一般の方の診断治療にも力を入れています。同院の特長や強みについて、院長の藤原 英利(ふじわら ひでとし)先生にお話を伺いました。

当院は、昭和初期に創設された国立兵庫療養所と国立療養所春霞園が統合されたのち、1968年(昭和43年)に前身となる国立療養所兵庫中央病院へと再編成されました。その後、2004年(平成16年)に独立行政法人国立病院機構兵庫中央病院と名称・体制を変え、現在は12診療科、460床の病院として地域の皆様の医療を支えています。

国立病院機構では医療政策として国として担うべき医療を提供しており、当院でもセーフティネット系の医療を行っています。

当院がある阪神医療圏の三田市は、大阪と神戸のベッドタウンとして発展してきた地域です。ニュータウンの開発が始まってから1987年(昭和62年)から1996年(平成8年)まで10年連続全国1の人口増加率を誇り、現在は11万人弱の人口となっています。ニュータウンの若手住民と旧来からお住まいの住民の方が混在し、若干平均年齢が若い地域でありながら、高齢者も多く残っている点が特徴です。

当院は政策医療として普通の病院では扱うのが難しい疾患へのセーフティネット医療を行っているのが大きな特徴です。セーフティネット医療としては、主に神経・筋難病、筋ジストロフィー、重症心身障がい、結核など一般病院では治療継続が困難な疾患を中心に診療を行っており、当院の病床460床の内、350床はセーフティーネット医療に対応したベッドです。なかでも兵庫県内の筋ジストロフィーの入院施設は当院のみ(2023年時点)となっています。

また、当院はこういった疾患で入院されている患者さんに対して急性期医療を行っています。

入院患者さんに他の疾患が併発することは、実際にはよくあります。しかし、たとえば当院に入院されている筋ジストロフィーの方が急性疾患を発症した場合、一般的な急性期病院では対応が難しいでしょう。当院ではそういんた患者さんへの急性期治療を、なるべく当院内で完結できるよう体制を整えています。

また、このような当院の急性期医療の機能を生かすため、一般の方の急性期疾患の治療も行っています。当院には難病に長年取り組んできた経験と知識を持つ当院の医師が在籍しており、さまざまは患者さんに安心して治療を受けていただけると思います。

2022年(令和4年)に開設した当院の糖尿病センターは、医療DXを活用した糖尿病治療を行っています。最大の特徴は、患者さん自身の状態をウェアラブル端末で計測し、データ記録と共有を簡単に行っていることです。これにより、病院に来院してなにか治療をするだけでなく、日常生活で端末から何かの連絡が当院にあったときは対応することができるようになりました。

また、当センターでは糖尿病教室を毎月無料で提供し、院内外の患者さんやご家族に役立てていただけるよう広く取り組んでいます。教育入院においては、多職種での丁寧な指導を心掛け、患者さんの治療や生活のサポートを行っています。

当院の認知症疾患医療センターは、兵庫県に3か所あるうちの一施設として、認知症の検査や診断、治療など認知症医療において包括的なサポートを提供し、患者さんとそのご家族の安心を支えられるよう努めています。

また、これからも高齢者は増え続けること予想がされており、今や認知症は医療だけでなく、介護も含めて社会全体の問題となっています。そこで当院では患者さんやご家族、そしてお近くのクリニックの先生方に向けての講演会やセミナーを開催し、認知症の判断基準やもしものときにどうしたらよいかなど、当院の専門のスタッフがお話しすることでみなさまの疑問や不安を解消するお手伝いをしています。

さらに当院には専門外来として“ものわすれ外来(認知症疾患鑑別外来)”を設置しています。この外来が一般の方も受診しやすい場となればと考えています。

近い将来団塊の世代の後期高齢化を迎えるなか、今後日本の人口は減少していくでしょう。高齢者世代の人口が増えることで当然お年寄りの病気は減りませんが、若い世代の人口は増えないため、高齢者が孤立しがちになり病気になっても病院に連れてきてくれる人がいない状況の増加が予想されます。

そんなこれからの社会に対応するため、当院の経験豊富な看護・リハビリスタッフがご自宅に訪問し、ご自宅で様子を伺ったり看護やリハビリなどを行ったりすることで、病気を食い止めるサポートを行っています。

当院独自の取り組み“フードハピネス”では、脳神経内科の坂下建人医師を中心に、嚥下機能が低下した患者さんのための食事提供に取り組んでいます。

当院は筋ジストロフィーなど嚥下機能が低下した患者さんが多く、嚥下食は患者さんお機能のレベルにあわせて柔らかくする必要がありますが、安全のためには見た目が味気ないものになりがちなのが現状です。そこで、たまたまテレビで紹介されていた山形県の料理人の延味克士さんに連絡を取ってお願いし、嚥下機能が衰えても食べやすく、味や見た目にこだわった食事の提供を行いました。

延味さんには遠路お越しいただき、慣れない調理環境の中じっくり仕込みをかけ、寿司やてんぷら、ハンバーグなど作っていただきました。料理はどれもすばらしく、患者さんの笑顔や歓声に触れられてスタッフ一同喜ばしいひと時でした。

プロジェクトとして今後もこのような取り組みをしていきたいと考えています。

当院の看護師や理学療法士をはじめとしたスタッフは、全国に141病院ある国立病院機構という大きな組織体を活かしたキャリアパスの充実も可能です。

例えば、当院のような病院で慢性期のリハビリを経験し、次は急性期手術後のリハビリを経験してみたい、など順番に異動し経験を積むこともできます。

兵庫中央病院では、患者さんに真心のこもった良質で効率的なサイエンス・アート(科学・技と心)の医療の提供を理念として日々の診療にあたっています。

かわりゆく日本社会の中でも当院に与えられた役割をしっかりと受け止め、地域の皆様のお役に立てるよう日々邁進してまいります。

また、当院は開かれた病院として、地域の方々に当院のことを広く知っていただくために積極的な情報発信を考えています。患者さんやご家族のみならず、職場としての当院にご興味をお持ちの方にも、魅力を伝え共に成長していける環境を提供できるよう、これからも努力していきます。

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