院長インタビュー

医療の質の向上と安全な医療の提供を目指す――富山赤十字病院

医療の質の向上と安全な医療の提供を目指す――富山赤十字病院
メディカルノート編集部  [取材]

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富山駅北口から歩いて15分ほど、遠くに立山連峰の絶景が広がる自然豊かな環境の中にある富山赤十字病院。開院から現在に至るまで地域の中核病院としての役割を担い、救急医療と高度急性期医療を中心とした医療を展開してきました。

そんな同院が担う役割や今後の展望について、院長である平岩 善雄(ひらいわ よしお)先生にお話を伺いました。

外観
病院外観(富山赤十字病院ご提供)

当院は1907(明治40)年に日本赤十字社富山支部病院として開設されました。戦災によって病院の建物が消失した際はバラック建ての病棟で診療していた時期もありました。開院から今年(2024年)で117年になる当院は、富山県でもっとも古い歴史のある病院といえます。

地域の中核病院である当院は、救急医療と高度急性期医療の提供を基本としつつ、2024年1月1日に発生した能登半島地震の際にはDMAT(災害派遣医療チーム)の派遣なども行いました。災害拠点病院、地域医療支援病院、富山県がん診療地域連携拠点病院などさまざまな役割を担い、地域に求められる病院を目指しております。

当院は25の診療科と401床(うちICU4床・緩和治療12床)の病床を有する総合病院です。コロナ禍の受診控えにより一時は患者数の減少がみられたものの、現在は徐々に回復に向かっており、地域のかかりつけの先生方からの紹介患者さんを積極的に受け入れています。

高齢化社会が進む中でニーズが高まりつつあるのが救急医療です。当院はこの地域における二次救急指定病院となっており、“断らない救急”を掲げて応需率100%を目指して取り組んでいます。また各種健診や人間ドックなどの予防医療にも力を入れ、地域の方々の暮らしと健康をしっかり支えていきたいと考えています。

近年の外科手術においては患者さんの体への負担が少ない低侵襲(ていしんしゅう)手術が主流になっています。当院においても数か所の小さな傷口から手術を行う“腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)”を行ってまいりましたが、2024年秋には新たに手術支援ロボット・ダヴィンチXiを導入して、さらに低侵襲な手術を行える体制を整える予定です。

また整形外科領域においても、高齢化に伴ってニーズが高まりつつある人工関節置換術に対応する手術支援ロボットの導入も予定しています。地域の医療ニーズに合わせて医療提供体制の充実を図ることにより、より多くの患者さんのQOL(生活の質)向上に貢献できるものと期待しています。

脳血管センター長の桑山先生は文字どおり脳血管内治療の大家であり、富山大学附属病院 脳血管内治療科の科長を務めた人物です。日本脳神経学会専門医(評議員)、日本脳神経血管内治療学会指導医・専門医(名誉会員)としての知識や経験を踏まえて、脳動脈瘤に対するフローダイバーター治療を行っていることも当院の特徴です。

フローダイバーターは、これまで使用されていたステントグラフトよりも網目の細かいメッシュ状の特殊なステントのことです。脳動脈瘤を覆うようにしてフローダイバーターを留置することにより、脳動脈瘤内の血流が減少して血栓化し、脳動脈瘤の破裂を防ぎます。

脳動脈瘤の大きさが10mmを超えるような大型脳動脈瘤については、コイル塞栓術(そくせんじゅつ)を行っても血液を十分に遮断することが難しく、再治療が必要になるケースも少なくありませんでした。フローダイバーター治療は脳動脈瘤の破裂を未然に防ぐことができ、治療後の再発率が低いことなどから、大型脳動脈瘤に対する新たな治療法として注目を集めています。

富山県内でフローダイバーター治療に対応する医療機関は限られておりますが、当院では充実した設備と高い専門性をいかして、質の高い医療の提供に努めております。

私は大学院で博士課程を終えた29歳のときにこちらに赴任しました。大学では内分泌や糖尿病を専門にしていたものの、当院では消化器、循環器、呼吸器など内科系の診療を広く担当し、知識や経験を積み重ねていきました。その後48歳で副院長になり、58歳で院長になりましたので、この地域の医療に携わってもう40年以上になるでしょうか。

当院は“人道・博愛の赤十字精神にもとづく良質で安全な医療の提供”を理念としております。地域の中核病院として救急医療や高度急性期医療を担うのはもちろん、地域の方々に必要とされる医療を提供することも私たちの大切な役割です。

地域の方々に当院をより身近に感じていただけるよう、コロナ禍で開催見送りが続いた“感謝の集い”も再開する予定でおります。職員が一丸となって医療の質の向上に取り組んでまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

*病床数や診療科数、医師や提供している医療の内容等についての情報は全て、2024年7月時点のものです。

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