北海道札幌市西区にある札幌孝仁会記念病院は、三大疾病と呼ばれる脳卒中、心臓病、がんなどの先進的な治療をはじめ、運動器の疾患や各種リハビリテーションで地域医療を支える急性期の病院です。同院の特長は、術中MRI(脳や脊椎の様子を撮影しながら手術する)やサイバーナイフをはじめとする道内でも同院だけ(2024年4月現在)の新しい技術や機器を取り入れ、北海道の急性期医療を牽引していることです。心身への負担が少ない低侵襲(体に負担が少ない)治療や従来の健診では見つけにくい病気を特定する高度健診など、次々と先進的な医療に取り組む同院の地域での役割や今後ついて、理事長である齋藤孝次先生に伺いました。
当院は札幌市西区において、社会医療法人孝仁会の旗艦病院として2016年10月に開院しました。当院は常に新しい医療を提供することをモットーに掲げており、新しい医療設備や新しい技術を意欲的に導入しています。例えば、道内で唯一の術中MRI、サイバーナイフ(ロボット放射線治療装置)、FUS(本態性振戦、パーキンソン病の治療装置)、マンモペット(乳がん専用PET)など、全国でも数少ない最新の機器を道内にも整備し、さらには全室個室のICU(集中治療室)を完備しました。
また、当院は急性期の治療をはじめ心臓、脳疾患、運動器に関するリハビリテーションのほか、三大疾病を中心とした高度な健診事業や救急救命事業においても地域医療で大きな役割を果たしています。とりわけ、優秀な人材の確保は大きな課題であり、北海道大学、札幌医科大学の前病院長を迎え、さらに充実した人材確保を進めています。当院のある札幌市の高齢化率は全国平均を下回るものの、老年人口は増加する一方で、少子高齢化を見据えた医療体制の確立が急務です。そうした課題を見据えながら道内のほかの医療機関と連携し、急性期から在宅診療までカバーする地域包括ケアシステムの一翼を担っています。
当院は2016年開設という非常に新しい病院ですが、札幌市の救急当番病院として大都市の救急を担っています。救急搬入を断らないことをモットーとしており、24時間体制でICUを稼働できるような体制を整え、呼吸器、循環器、代謝系のような急を要する重篤な患者さんをケアしています。またSCU(脳卒中集中治療室)では、脳梗塞など脳血管障害の急性期に対して専門分野の医師やスタッフが連携をとり、脳卒中の発症初期の段階から集中的に治療できるように努めています。
なお、当院は“神の手を持つ”と称された故福島孝徳先生の指導を受け、脳腫瘍に対する低侵襲な福島式鍵穴手術を行っています。福島先生は大変残念ながら2024年に逝去されましたが、当院は残された実績を受け継ぎ、さらに進化させて行くことが使命だと考えています。
心血管疾患の先進治療を担う心臓血管センターでは、心身への負担が少ない低侵襲治療を積極的に取り入れています。従来は開胸していた心臓弁膜治療に対してもMICS(低侵襲心臓手術)を採用することで、大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)や僧帽弁接合不全修復術(MitraClip)による小切開の治療ができるようになりました。また、脳神経外科では脳動脈瘤において、フローダイバーターを活用した最新のカテーテル治療を行っています。
がん治療の現状として、海外のがん患者の約6割が放射線治療を受けていることに対し、日本ではわずか2割ほどに止まっています。これは放射線治療の専門医や設備が不足していることが理由かもしれません。当院では、国内で19施設だけしか提供していない陽子線治療を行っており、また道内で唯一のサイバーナイフ(ロボット技術を応用した高い精度で強い放射線を照射できる機器)も導入して質の高い放射線治療が可能です。さらに最新のトモセラピー(X線を用いた放射線治療装置)などを活用し、“最新の切らないがん治療”でからだに優しい治療を徹底しています。
他にもがんの集学的診断に備えたPET-CT(陽電子放出断層撮影)や道内唯一の乳房専用PET装置(マンモPET)の導入により、放射線によるより迅速で正確な診断ができるような環境を整えています。
医療の世界でもテクノロジーは日進月歩なので、常に最新式にアップデートしていく必要があります。当院は道内で初めて手術用ロボット・ダヴィンチの“Xi”と“術中MRI”を導入しました。Xiによって従来は不可能であった繊細な治療を提供できるようになり、術中MRIによって以前より安全かつ確実に腫瘍を摘出できるようになりました。また高性能なX線撮影装置などの透視装置と手術寝台を設けたハイブリッド手術室やIVR-CTを備え、近年増加している血管内治療への対応力も向上しました。より安全で確実な医療を提供できるよう設備投資に力を入れています。特に脳・心臓血管・運動器に関しては最先端の医療を提供できる体制を整えており、がんに関しても北海道大学腫瘍内科より医師を受け入れ、より良いがん治療を目指しています。
高齢化社会になり最近増えてきているのは運動器の疾患です。関節や筋肉など日常生活を支える運動器の機能を回復することは、健康上の問題なく暮らしていける“健康寿命”の観点からも重要だと思います。当院としては脳外科と脊椎外科の専門医の協力で脊椎脊髄センターを開設し、より多くの患者さんに対応できるよう準備しています。
運動器の疾患以外では、骨粗鬆症も高齢化に伴い発症するケースが多い疾患です。特に人工関節の手術をされた患者さんにおいては、骨粗鬆症による人工関節周辺の骨折も増えています。当院には札幌医大の特任教授を11年間担当した人工関節のプロフェッショナルも在籍していますので、安心してご来院頂ければと思います。
当院には一風変わった“山岳外来”という診療窓口があります。主に登山をされる方やレスキュー隊など山岳に従事される方を対象に、外来とオンラインの両方で診療を提供するサービスです。外来では登山者の健診をはじめ山岳地で必要となる医薬品のアドバイスなどを行い、オンラインではより気軽なご相談を受け付けています。オンラインの診療は遠隔にお住まいの方に多数ご利用頂き、専用のLINEアプリ“LINEドクター”を通じて診療の予約からビデオ通話や決済までを提供しています。
日本ではいま、国をあげて“地域包括ケアシステム”の実現を目指しています。これは医療、介護、予防、住まいなど生活関連の包括的なサービスの提供により、高齢者の皆さんが安心して暮らせる地域医療を確立することを意味します。当院では、三大疾病を中心とした急性期疾患の予防や早期発見を目的とする“高度健診”に注力するなど、予防医療によって健康寿命を少しでも延長できるように努めています。孝仁会グループの基幹病院として、これからも地域の医療機関と積極的に連携をとりながら、より良い医療、福祉、介護、教育事業を地域の皆さんに届けていきたいと思います。
社会医療法人孝仁会 理事長、社会福祉法人孝仁会 理事長、医療法人 礼風会 理事長、医療法人社団 敬愛会 理事長、医療法人 聖愛会 理事長、医療法人社団 南1条セントラルクリニック 理事長、医療法人社団 康仁会 理事、医療法人 修誠会 理事、徳島大学 医学部 臨床教授、学校法人青森山田学園 理事、評議員、北海道病院協会 常務理事
社会医療法人孝仁会 理事長、社会福祉法人孝仁会 理事長、医療法人 礼風会 理事長、医療法人社団 敬愛会 理事長、医療法人 聖愛会 理事長、医療法人社団 南1条セントラルクリニック 理事長、医療法人社団 康仁会 理事、医療法人 修誠会 理事、徳島大学 医学部 臨床教授、学校法人青森山田学園 理事、評議員、北海道病院協会 常務理事
日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医日本脳卒中学会 脳卒中専門医・脳卒中指導医日本脊椎脊髄病学会・日本脊髄外科学会 脊椎脊髄外科専門医
1972年札幌医科大学卒業後、同大学脳神経外科関連施設に勤務。
1989年釧路脳神経外科病院を開院し、院長として病院経営に携わる。
救急医療事業への貢献が評価され2009年7月より社会医療法人として認定、現在は中核となる釧路孝仁会記念病院、札幌孝仁会記念病院をはじめ北海道内に5病院8診療所を運営。
急性期の入院医療から三大疾病(がん・脳卒中・心臓病)の予防事業、幹細胞による治療である再生医療を提供。今後も地域医療への貢献と患者様に愛される病院施設づくりを目指す。
齋藤 孝次 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。