岡山県倉敷市鶴形にある松田病院は、倉敷市周辺の地域に密着した医療をおこなう中規模病院です。同院の地域における役割や今後について、理事長である松田 達雄先生に伺いました。
当院は1955年に、先代の松田和雄院長がJR倉敷駅から徒歩7分の鶴形の地に開設しました。その後増改築、科の増設や集約を繰り返し、現在では消化器外科の癌医療を中心に、整形外科、泌尿器科、それらをサポートする麻酔科の外科系専門病院として地域に根ざしています。
患者さんの目線に立ち、患者さんの体に手を当てる、文字通り”手当て”をモットーとしながら大病院に負けないレベルを維持し、小回りのきく中小病院の利点を活かして地域医療の一端を担っています。
松田病院は2022年に約400台/年、2023年に約800台/年の救急を受け入れました。2024年は約100台/月ペースで救急受け入れをしています。大規模な3次救急(生命に関わる重症患者に対応する救急医療)施設は設備や人員等の体制は整っていますが、手術した患者さんの経過まで診ることはできません。一方で当院は200床未満で、選定療養費が必要になる病院ではありません。予約なしでご来院いただけるうえ、検査・診断から治療・その後のケアまで一貫対応できます。これは中規模病院( 一般病床97床 / 医療療養病床38床 )としての強みだと考えています。
松田病院は消化器科(肝胆膵、上部、下部)に強みがあります。経験を積んだ専門性の高い7名の医師がおり、中規模病院としては手術数が多いのが特徴です。約500件/年の手術に対応しており、なるべく患者さんの負担が少なくなるよう腹腔鏡などを使った低侵襲(体に負担が少ない)の手術を増やしています。検査から手術、その後の回復期の治療まで、当院では同じスタッフが見続けられるように心がけています。
また、とくに肝胆膵の悪性腫瘍については、手術を主体にラジオ波療法(RFA)、経カテーテル動脈塞栓術(TAE)、IVR治療(interventional radiology=血管内治療) といった新しい治療を導入しています。
また当院で対応が難しい場合は対応可能な病院と連携する体制を整えております。今後も各病院と連携を強めつつ当院の強みを生かし、地域全体で患者さんを診ていきたいと考えています。
当院では整形外科においても、3次救急の医療機関に行くほどではない一般外傷(骨折、靱帯損傷等)や交通外傷などの搬送を受け入れています。
ご高齢の患者さんを中心に変形性関節症の症例も多く、特に股関節、膝関節では人工関節も含めて治療選択肢がありますので、患者さんのご希望や状態に応じで相談しながら方針を決めています。また、若年層を対象としたスポーツ外来では関節鏡視下手術による半月板形成術(切除術)、前十字靭帯断裂、変形性膝関節症(滑膜切除・軟骨ドリリング)などの治療を行っています。
当院が目指しているのは、手術や入院が必要な急性期の救急に対応するのはもちろん、普段の気になる症状にも対応し、さらには在宅患者さんの往診をする、真の意味で地域密着型の病院であることです。急性期の病院としては地域の開業医の先生からの紹介も多く、診断がつかない患者さんもご紹介いただければ診させていただいており、地域医療のハブ的な存在として機能しています。
「専門性が高い=質の高い医療」と「一気通貫で患者さんのケアが可能な中規模病院の利点」をかかげ、その思いを「確かな医療、寄り添う心」という言葉に込めています。
松田病院は、時代が求める地域医療をスムーズに行うことができる病院だと思っています。200床未満のためかかりつけもできて、地域医療にコミットするけれど急性期医療もしています。設備や機器もそろっていて、この規模でオペ室が3部屋、MRIや血管にカテーテルを入れた検査ができる血管造影室があるというのも珍しいかもしれません。私は「医療のレベルが高いことを前提に、寄り添える治療ができたらそれがベストだ」という思いで運営をしています。少し古風かもしれませんが(笑)。
また松田病院は消化器・肝胆膵の領域が特に強いため、便潜血があったりお腹のエコーで異常が指摘されたりした場合は、専門病院として来てほしいと思っています。紹介状がないとなかなか大病院には行けませんが、当院は200床未満のため、紹介状がなくても診ることができます。地域のかかりつけとして、また肝胆膵や整形外科に強みを持つ病院として、顔が見える関係、安心して治療を受けてもらえる関係を構築していくこと。松田病院は、それをこれからも一貫して目指していきたいと思っています。