福岡県久留米市にある久留米総合病院は、全国的に見ても人口当たりの病床数がトップクラスの同地域で、健康管理センター、病院、老人保健施設の三本柱で地域密着型のサービスを提供する複合医療施設です。長期に渡り地域に根差しながら、健康診断から病気の治療、介護まで切れ目のない包括的な医療サービスを提供している地域医療の中核として、その役割や今後について、院長である牛嶋 公生先生に伺いました。
当院は1946年に福岡県健康保険第一病院として35床で開院し、1965年には社会保険久留米第一病院として200床に拡大しました。その後1991年に健康管理センター、1996年に老人保健施設“プレジールくるめ”を新設し、保健・医療・福祉が一体となった複合医療施設として発展してまいりました。さらに2014年にはJCHO久留米総合病院に名称変更し、診療棟も刷新。こうして前身も含め70年以上の長い歴史を持つ当院は、開院以来同じ場所で久留米市内唯一の公的病院として、一次医療と三次医療を二次医療で相互補完する中間的な立場で地域に密着した信頼される医療を提供し続けています。
久留米医療圏といわれる当地域は、人口当たりの病床数が全国トップクラスで、病院の機能分化が非常に進んでいる地域です。その中でも当院は、地域内合計8病院による二次医療体制の一翼を担い、年間約1,500件の救急患者を受け入れながら地域医療に貢献しています。また、100施設以上の開業医の先生との連携で地域とのさらなる密接な連携を図っています。
特に当院の強みとして、女性特有の健康問題に対して包括的なアプローチを行っています。週1回予約制の女性総合診療科"なでしこ"外来を入口として、必要に応じて専門科へ紹介しております。特に乳腺外科は田中名誉院長の尽力により、全国的に知られるようになりました。現在は山口副院長を中心に年間600例以上の手術を実施しており、女性医師による診療体制の整備も万全です。さらに、常勤の形成外科医により乳房再建手術にも対応しております。
また、婦人科では良性腫瘍の治療に特化しており、骨盤臓器脱や子宮筋腫などの手術を数多く行っています。高齢の患者さんにもより安全な手術を行っており、骨盤臓器脱手術は年間60件以上と、地域でトップクラスの実績です。
“なでしこ”の強みは、長い待機期間なしに迅速な対応が可能なことです。また、腹腔鏡手術など新しい技術も取り入れ、患者さんの負担を軽減する努力を続けています。悪性腫瘍については、検査までを当院で行い、治療が必要な場合は久留米大学病院と連携して対応するなどの役割分担により、患者さんに合わせた医療を提供できる体制を整えています。
整形外科は、スポーツドクターでもあり足の外科で高い評価を受けている野口 幸志先生を中心に、専門性の高い医療が提供されています。特に足関節に特化した診療は、他の多くの病院が膝関節を中心としている中で当院の特徴となっており、アスリートから一般の方まで、幅広い患者さんがいらっしゃっています。
ほかにも消化器外科・内科をはじめとする各診療科に、それぞれの分野で卓越した技術と経験を持つ医師が在籍しております。特に消化器外科では亀井副院長を始めとする内視鏡手術のエキスパートが、低侵襲医療といった患者さんの体への負担をなるべく最小限に抑えつつ、効果的な治療を行う新しい“体への負担を抑えた医療”の提供を始めました。また消化器内科は薬物療法にも精通しており、松隈副院長を中心に幅広い症例に対応できるオールラウンドな診療体制が整っております。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者さんについては、呼吸器・感染症内科の北里統括診療部長のもと、最大14床の病床を設けて患者さんを受け入れています。
2名の専門医による画像診断部門も充実しています。現在では、地域の開業医の先生からのCT等の画像診断依頼に対して数日以内という短期間でレポートを作成するなど、待ち時間を最小限に抑えた効率的な診断サービスの提供が可能となっています。
また、各種認定看護師や専門資格を持つ検査技師が多数働いており、新たな資格取得も奨励することで、多くのスタッフが常に新しい医療知識とスキルの習得に努められるように支援中です。これにより、専門医たちとスタッフ陣が密接に連携するチーム医療の実践が叶えられ、患者さん一人ひとりに合った医療サービスの提供を実現しています。
当院は、地域との絆を深める取り組みにも力を入れており、年間50回以上開催される講演会や市民公開講座は、医療従事者や地域住民の方々に広く開かれ、健康教育と情報共有の場としての機能を果たしています。また、水の祭典久留米まつりなどの地域行事にも病院スタッフ一同で参加するなどして積極的に関わることで、地域との一体感が醸成されています。
地域医療連携の強化にも取り組んでおり、周辺地域の開業医の先生から患者さんをご紹介いただいたり、画像診断依頼に短期間でレポート作成をするなど、日々の連携を深めています。このような多面的な取り組みを通じて、当院は単なる医療機関としてだけでなく、地域の健康と福祉を支える総合的な存在として、地域全体の医療サービスの向上に貢献する病院を目指しています。
当院は、全国57のJCHOの病院の1つとして、“安心な地域医療を支える”というキャッチフレーズのもと、前身時代も含め70年以上、長らく地域医療の要として歩んでまいりました。現在私たちは21の診療科、健康管理センター、介護老人保健施設を備え、“保健・医療・福祉”が一体となった包括的な医療サービスを提供しています。また、2013年開始の救急告知病院としての24時間体制の救急患者さんの受け入れを通じ、一次と三次の間を補完する病院として地域の多様なニーズに応える安心で心の通う医療を実現しています。
当院はこれからも地域の皆様と共に歩み、皆様の健康のために、職員一同努めてまいります。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。