院長インタビュー

“富士の麓で地域と共に歩む”――裾野赤十字病院

“富士の麓で地域と共に歩む”――裾野赤十字病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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富士山の麓、静岡県裾野市に位置する裾野赤十字病院は、長年にわたりこの地域の医療を支えてきた中核的な病院です。東名高速道路や新幹線からのアクセスも良好で、富士山、箱根、駿河湾・伊豆半島に囲まれた自然豊かな環境にあります。

一方で、地域の高齢化が急速に進むなか、在宅医療や地域包括ケアの充実など、新たな医療ニーズへの対応が求められています。こうした課題に向き合いながら地域に根差した医療サービスを提供している同院の取り組みや今後の展望について、院長の芦川 和広(あしかわ かずひろ)先生にお話を伺いました。

病院外観(裾野赤十字病院ご提供)

当院は、複数の村が合併して1971年に裾野市となる以前から、地域の伝染病舎として設立され、当初は結核対応を主とする医療機関でした。1973年から一般病院としての形態に移行し、現在は104床(地域包括ケア病床71床、感染症病床6床)を有し、内科、外科、整形外科、婦人科の診療を提供しております。主に二次救急医療機関としての役割を担うとともに、コロナ禍には感染症病床を有する医療機関として新型コロナウイルス感染症への対応も実施してきました。

私たちは高齢者医療に特に力を入れており、複数の疾患を持つ患者さんに対して総合的な診療を展開しています。特に診療の入り口となることも多い内科は、総合内科的な役割を果たしており、“全身を診る”診療を行っています。

また、整形外科では高齢化社会のニーズに応えるべく、大腿骨(だいたいこつ)骨折や関節疾患などの運動器疾患に幅広く対応しています。大腿骨骨折は高齢者によくみられ緊急搬送も多い疾患ですが、当院では手術にも対応し、急性期から回復期まできめ細やかな診療体制のもと、患者さんの回復をサポートしています。

外科では私が診療を行っており、腹痛や便秘、消化器症状といった一般的な診療から、潰瘍性大腸炎などIBD(炎症性腸疾患)の診療や、内視鏡検査、また内視鏡を使ったポリープの切除などにも幅広く対応しています。

このように、地域の高齢化を鑑みて診療体制を整えると同時に、2018年には在宅医療介護連携支援センター"あしたかつつじ"、同年9月には訪問看護ステーション"すその日赤"を開設し、地域包括ケアの充実に向けて取り組んでいるところです。

当院では、消化器がんに対する内視鏡検査(上部・下部)や、マンモグラフィーを用いた乳がん検査を積極的に行っています。また婦人科では、子宮頸・体がんの検査も行っており、こちらは女性医師が担当しています。

検査により高度な医療が必要と判断した場合には、近隣の高度医療機関などと緊密に連携しながら、適切な医療機関への搬送を行っています。また、沼津医師会との協力のもと、健診事業を通じた予防医療にも力を入れているところです。

がんの検査とともに、緩和医療や末期がん患者さんのケアも私たちの大切な役割の1つとなっています。担当の日本緩和医療学会専門医相河医師を中心に、患者さん一人ひとりの状態に寄り添った医療を提供できるよう努めています。

少子高齢化は社会全体の大きな課題となっていますが、2050年には人口減少と少子高齢化により医療体制も大きな危機に瀕することが予測されています。特に地方では、医師の偏在が顕著になり救急医療体制なども崩壊しかねません。しかし、悲観的に捉えているばかりでは、状況は改善しません。

当院は、来るべき未来に向けて地域での医療体制の構築に着手しており、高齢者医療の在り方を考えるとともに、地域包括ケアの強化にも取り組んでいます。当院の主な医療圏である裾野市を含め、近隣の沼津市、長泉町、御殿場市などでは近年、独居高齢者や老老介護の世帯が増加しています。そのため、前述の在宅医療介護連携支援センターや訪問看護ステーションを開設し、在宅医療の充実や地域包括ケアの推進に注力しているところです。今後も、未来を見据え持続可能な医療体制を構築できるよう、邁進していきます。

赤十字病院としての使命から、災害医療にも力を入れており、南海トラフ地震や富士山噴火など、この地域特有の災害リスクに備え、定期的に地域ボランティアの方々と災害医療訓練を実施しております。2024年1月の能登半島地震の際にも診療所支援を行うなど、災害時の医療支援体制の整備には全力で取り組んでおります。

私たち裾野赤十字病院では、地域医療に情熱を持って取り組んでいただける若手の医師を募集しています。最先端の治療や高度医療を提供する大規模病院とは異なりますが、総合診療として幅広い疾患に対応できる環境があり、一人の医師としての経験を着実に積むことができる魅力的な職場です。特に整形外科や内科、高齢者救急医療において、限られた医師数ながら熱意を持って診療にあたっています。ここは富士山の麓という恵まれた環境で、東京からのアクセスも良好です。さらに伊豆や熱海も近く、仕事とプライベートのバランスを保ちながら、穏やかに働くことができます。地域に根差した医療を実践し、自分の強みを生かしながら、やりがいのある仕事に携わりたい方、ぜひ一緒に働きませんか。

富士山の麓という恵まれた環境に位置する裾野赤十字病院は、長年にわたり「人道」「博愛」「奉仕」という赤十字の理念のもと、地域の皆さまに寄り添う医療を支えてきました。小規模ながら、地域包括ケア病床の設置や在宅医療の充実など、高齢化が進む地域のニーズに応える体制づくりに力を入れております。

私たちの誇りは、一人ひとりの患者さんの生活や幸せを考えた医療を提供することです。情報発信が大切な現代において、医療現場での想いや日々の取り組みをもっと多くの方々に知っていただけるよう、今後積極的に発信していきたいと考えております。

裾野赤十字病院の使命は、特別なことではありません。地域の皆さまが「ここに来れば安心」と感じていただけるような、確かな医療を提供し続けることです。この恵まれた環境で、大規模病院では経験できないやりがいのある地域医療を、若い医師の皆さんと共に築いていけることを願っています。

これからも地域の皆さまの健康と笑顔を守る、かけがえのない存在であり続けられるよう、職員一同、全力で取り組んでまいります。

*病床数や診療科、医師、提供している医療の内容等についての情報は全て2024年11月時点のものです。

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