院長インタビュー

センター化を進め地域に頼られる高度急性期病院、関西ろうさい病院

センター化を進め地域に頼られる高度急性期病院、関西ろうさい病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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阪神間の中核都市である尼崎市に位置する独立行政法人労働者健康安全機構 関西ろうさい病院。1953年の創設以来、高度急性期医療の拠点として、がん、循環器、救急、整形外科といった幅広い領域で地域の健康を支え続けてきました。
2026年4月からは「膵がんセンター」や「先端心血管カテーテルセンター」を新設し、専門的な診療体制をさらに強化します。
地域の医療機関との密な連携を軸に、質の高い医療をより安全に提供できるよう努力を続ける同院の取り組みと、その根底にある思いについて、病院長の竹原(たけはら) 徹郎(てつお)先生に伺いました。

私たちの病院は1953年(昭和28年)に設立され、70年を超える歴史をこの尼崎の地で刻んできました。もともとは労働省(現・厚生労働省)の所轄として、近隣の工場地帯で働く方々の労働災害や職業病に対応することを目的に誕生した背景があります。設立当初の尼崎は全国から多くの人々が集まる活気ある工業都市で、当院はその働く皆さんの命を守る拠点としての役割を担っていました。

時代の移り変わりとともに労働環境が劇的に改善され、大きな事故が減少していくなかで、病院の性格も徐々に変化してきました。現在では「働く人のための病院」という枠組みを超え、地域に暮らす方々が一般的にかかる病気や、急ぎの対応が必要な重い病気を広く受け入れる体制へと進化しています。
私自身、40年前にこの病院で研修医として研鑽を積んでいた時期があるのですが、当時からこの地域における急性期医療の要として、住民の皆さんの期待に応え続けてきた自負があります。

近年は、主に近隣の医療機関からのご紹介を中心に診療を行っています。地域のクリニックの先生方が「ここでの治療が必要だ」と判断した患者さんを送り届けてくださり、私たちがそのバトンをしっかりと受け取って、適切な処置の後に再び地域の先生方の元へお返しする。こうした当院と地域の先生方との密な連携こそが、尼崎市の医療をより質の高い、効率のよいものにしていると考えています。

地域の急性期医療を支える病院として、救急車の受け入れには並々ならぬ熱意を持って取り組んでいます。年間に運び込まれる救急車は約6,000台にのぼり(2024年度)、今この瞬間にも1台が到着しているかもしれないという、常に緊張感のある現場です。

救急要請があった際、当院では高い応需率でそれに応えています。搬送されてくる患者さんの約6割がそのまま入院治療を必要とする重症の方々であることからも、当院が地域の“最後の砦”としていかに重要な役割を果たしているかがお分かりいただけるかと思います。尼崎市内だけでなく、近隣の西宮市や、時には県境を越えて大阪方面からも患者さんがやってきます。こうした広域からの期待に応え続けることが、私たちの大きな使命です。

当院の強みの1つに、心臓周辺の病気への対応があります。私たちは心筋梗塞(しんきんこうそく)や脳卒中といった一刻の猶予も許されない救急の病気に対して、24時間体制で迅速な治療を行えるよう備えています。

心臓の分野では、不整脈に対するアブレーション治療において非常に多くの症例を手がけているほか、かつては大きな手術が必要だった大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)に対しても、カテーテルを用いて弁を置換する処置(TAVI)を行っています。こうした治療は、1つの診療科の医師だけで完結するものではありません。循環器内科と心臓血管外科の医師が密にタッグを組み、内科・外科の両面から検討を重ねることで、患者さんにとってよりよい結果を導き出せるよう努めています。

さらに、糖尿病などの合併症から足の血流が滞る末梢血管(まっしょうけっかん)の病気に対しても、カテーテルによる処置を800件前後実施しています(2010年〜2024年時点)。心臓、脳、そして足の血管まで、全身の血管の病気を網羅的に診ることができる体制は、当院の大きな特徴といえるでしょう。

現在注力している領域の1つが、がんの診療です。当院では消化器がんを筆頭に、肺がんや婦人科がんなど、全身のさまざまな部位に対して、外科手術から内視鏡、薬物療法までを組み合わせた多角的なアプローチを実践してきました。中でも膵臓(すいぞう)がんの治療実績が年間約70件あり(2024年時点)、地域の拠点としての役割を果たすべく、常に高い意識を持って向き合っています。

治療の選択において何より大切にしているのは、いかに患者さんの負担を抑えるかという視点です。たとえば早期のがんであれば体にやさしい内視鏡治療を優先し、手術が必要な場合でもロボット支援手術などの低侵襲(ていしんしゅう)な手法を積極的に取り入れます。当院には14室の手術室があり、2台の手術支援ロボット「ダヴィンチ」をフル稼働させることで、精度の高い治療を滞りなく提供できる体制を整えています。

また、近年の進歩が目覚ましい薬物療法についても、免疫療法を含めて柔軟に活用しています。たとえ手術が難しいステージであっても、確かな手応えを感じていただける選択肢を提示したい。そのために私たちは常に新しい情報をアップデートし、日々の診療にあたっています。

伝統的に労働災害に対する医療を強みとする当院は、脊椎、関節、手などの部位のエキスパートがそろい、ほぼ全ての整形外科の病気を網羅できる体制を誇っています。

最近ではスポーツ整形の取り組みが非常に活発で、地元のスポーツチームの選手が怪我の治療に訪れることも珍しくありません。

当院の医療の専門性を分かりやすく提示し、紹介いただく先生方や患者さんの迷いをなくすために、2026年の4月からは新たなセンター化(診療科の垣根を超えた医療を提供しやすくする体制作り)を進めています。その1つの表れが「膵がんセンター」の設立です。
もともと当院には、膵臓がんの手術や処置において経験を積んだ医師がそろっていました。この医師たちを中心に、センターとして技術を集約したことで、膵臓がん治療の質をこれまで以上に高めることができていると自負しています。

また、循環器領域においても「先端心血管カテーテルセンター」を立ち上げ、先に述べたカテーテル治療の強みをさらに加速させていきます。このようなセンター化を今後も積極的に進めることで、院内の各診療科の連携をよりスムーズにし、患者さんに提供する医療の質をさらに高めていくことができると確信しています。

一方で、昨今の物価高に起因する課題もあります。高度な急性期医療を維持するためには新しい機器や高価な消耗品が不可欠ですが、今の経済状況では、これらをそろえるためのコストが非常に膨らんでいます。

たとえば、近年は患者さんから「ロボットで手術をしてほしい」というご要望をいただくことが増えています。それに応えることは医療従事者としての喜びですが、病院経営の視点で見ると、実は多額のコストがかかり、利益が出にくいという構造的な葛藤があります。それでも私たちがロボット支援による手術を積極的に進めるのは、それが患者さんのためになり、医師たちがパフォーマンスを発揮できる環境を守るためにも必要だからです。

日本では、医療はいつでも周りにある、いわば「空気」のような存在として親しまれてきました。しかし、その空気が当たり前に存在し続けるためには、病院が健全に運営されていなければなりません。この大切な仕組みを次世代へつないでいくことは、私たちが向き合わなければならない大きな責任だと感じています。

私の描くビジョンは、何か突拍子もない新しいことを始めることではありません。これまで70年かけて築き上げてきた、地域から頼られる高度急性期病院としての機能を着実に継続し、さらに強化していくことです。

そのためには、患者さんに「ここで診てもらいたい」と思っていただくことはもちろん、働くスタッフにとっても「ここで成長したい」と思える魅力的な職場でなければなりません。特に看護部は、約半数が20歳代という非常に活気に満ちたチームです。二交代制を導入して働きやすさを整えているほか、立地のよさもあり、プライベートも充実させやすい環境です。
スタッフが生き生きと活躍する姿は、病院全体に明るい雰囲気をもたらし、結果として患者さんへのよりよいケアにつながると信じています。

私が大切にしているのは、「患者さんに高度で安全な医療を受けていただき、満足して帰っていただく」という、シンプルですが非常に重みのある目標です。病気が完全に治ることもあれば、長く付き合っていかなければならない場合もありますが、どのような状況であっても「ここに来てよかった」と思っていただけるような医療を届けたいと考えています。
当院を受診される際は、まずは地域の先生にご相談いただき、紹介状をお持ちいただければと思います。私たちが地域の先生方としっかりと手を携え、皆さんの健やかな生活を全力で支えてまいります。
 

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