概要
アフェレシス療法とは、血液から病気の原因となる特定の物質を取り除く治療法で、“血液浄化療法”の一種です。血液浄化療法には腎不全に対する血液透析が含まれますが、アフェレシス療法は、血液透析を除く血液浄化療法を指します。具体的には、血漿交換療法、吸着式血液浄化法、血球成分除去療法などが該当します。
治療としては、体外に血液を取り出し、遠心分離や特殊な膜、吸着剤などを用いて血液中の成分や、病気の原因となる物質を分離・除去します。赤血球や白血球などの血球成分、リンパ球などの細胞成分を分離して集める場合もあれば、中毒や病気の原因物質を取り除く場合もあります。体外に取り出された血液は再び体内に戻されます。
治療の対象となる病は幅広く、たとえば血漿交換療法では、全身性エリテマトーデスなどの膠原病、重症筋無力症やギランバレー症候群などの神経疾患、多発性骨髄腫、劇症肝炎や肝不全、薬物中毒、家族性高コレステロール血症など多岐にわたります。
アフェレシス療法は医療保険が適用される治療法ですが、保険適用されるためには、対象となる病気や行われる治療内容についての基準を満たす必要があります。
また、医療機関によっては、保険診療の対象外の“アフェレシス療法”を行っている場合もあります。それらの自由診療を受ける際は全額自己負担となります。
目的・効果
アフェレシス療法の目的は、病気の原因となる血中の物質を除去することです。薬物療法だけでは効果が得られるまで時間がかかる病気に対しても、併用することで迅速な効果が期待できる場合があります。
また、単に病気の原因となる物質を除去するだけでなく、治療に用いる細胞を分離・採取するための手段としても使用されています。たとえばCAR-T細胞療法においては患者さんのT細胞を採取して使用します。
適応
アフェレシス療法の対象は多岐にわたります。血漿交換療法では、多発性骨髄腫、重症筋無力症、全身性エリテマトーデスなどの自己抗体が関わる病気、薬物中毒、劇症肝炎や肝不全、家族性高コレステロール血症などが挙げられます。そのほか、吸着式血液浄化療法では肝性昏睡、薬物中毒が対象となります。血球成分除去療法では、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、クローン病などが対象となります。
医療保険の適用範囲として、薬物療法の効果がみられない場合に限られたり、実施回数に制限があったりすることがあります。
リスク
アフェレシス療法では、いくつかの合併症や副作用のリスクがあるとされています。
血圧低下
最も多くみられる合併症です。血液量の低下などさまざまな原因で起こり得ます。吐き気、めまい、意識障害などが生じることもあります。
出血傾向
血液が固まりにくく、出血しやすくなることがあります。血液を固める成分を除去した場合や、血液を固まりにくくする薬剤を使用した場合などに生じることがあります。
アレルギー反応
取り出した血液の一部を別の血液(新鮮凍結血漿)に置き換える場合や、血液を固まりにくくする薬剤を使用した場合などに生じることがあります。アナフィラキシーショックのように命に関わる状態になることもあります。
その他
そのほかの合併症や副作用として、低カルシウム血症を発症したり、感染が生じたりすることもあります。精神的な緊張や不安などが原因で、血管迷走神経反射が生じることもあります。
治療の流れ
アフェレシス療法は入院せずに外来で行うことができる治療法です。実際の治療の流れは対象となる病気や治療法、患者さんの状態によって異なります。一般的に、両腕の血管に針を刺して血液を循環させます。治療には1~2時間程度を要し、医師、臨床工学技士、看護師が連携し、血圧や脈拍などを継続的にモニタリングし、安全管理を行います。
費用の目安
アフェレシス療法は、医療保険が適用される治療法です。保険適用されるためには、対象となる病気や行われる治療内容についての基準を満たす必要があります。また、費用は対象となる病気や行われる治療内容により異なります。実際の費用については、受診している医療機関に確認するようにしましょう。
医療機関によっては、保険診療の対象外の治療を“アフェレシス療法”として行っている場合もあります。それらの自由診療を受ける際は全額自己負担となるため、事前によく確認しましょう。
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