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前立腺がんの特徴や発見のきっかけ――50歳以上の男性は定期的にPSA検査を

前立腺がんの特徴や発見のきっかけ――50歳以上の男性は定期的にPSA検査を
宮嵜 英世 先生

国立国際医療研究センター病院 病院長/泌尿器科 診療科長/第一泌尿器科 医長

宮嵜 英世 先生

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前立腺がんとは、男性特有の臓器である前立腺に発生する悪性腫瘍(あくせいしゅよう)のことです。近年の高齢化に伴って増加傾向にあるがんの1つで、2015年には男性の部位別がん罹患数において1位となりました。以降も罹患者数が多い状態が続いているものの、同じく罹患率の高い肺がん大腸がんと比べると死亡率は低く、早期発見・早期治療によってコントロールがしやすいがんでもあります。

今回は、国立国際医療研究センター病院の病院長であり、泌尿器科診療科長の宮嵜 英世(みやざき ひでよ)先生に、前立腺がんの特徴や症状、早期発見のためのポイントなどについてお話を伺いました。

素材提供:PIXTA、加工:メディカルノート
素材提供:PIXTA、加工:メディカルノート

前立腺は尿道の周りを取り囲むように位置する臓器で、精液の一部である前立腺液を作り分泌するはたらきをしています。この前立腺の細胞ががん化し、増殖することで発症に至るのが“前立腺がん”です。正常細胞ががん化する決定的な原因は明確になっていない部分もありますが、加齢や遺伝(家族歴)、食生活などとの関連が深いのではないかといわれています。

がん細胞の“増殖”には男性ホルモンが関与することが明らかになっており、かつ50歳以降、年齢が高くなるにつれて患者数が増加することから加齢によるホルモンバランスの変化が発症に関係すると考えられています。また、家族(父親や兄弟)に前立腺がんを発症した方がいる場合は、そうでない家系の方と比べて発症リスクが約2~5倍に高まるという報告もあります。そのほか、食生活の欧米化が進んでいることから脂肪の多い食事などとの関連性も考えられていますが、いずれもまだはっきりとしたことは分かっていません。

“がん”と聞くと誰しも不安になると思いますが、前立腺がんの特徴としてほかの臓器のがんよりも進行がゆるやかな点が挙げられます。急速に進展してすぐに命に関わるということは少なく、早期の段階で発見してきっちりと治療をすれば十分に根治を目指せる病気です。

多くの場合、早期の段階で自覚症状が現れることはありませんが、排尿の症状をきっかけに発見に至ることもあります。「トイレが近い(頻尿)」「尿が残っている感じがする(残尿感)」「尿の勢いが弱い」など、排尿に関連する何らかの症状がある場合には、一度泌尿器科を受診いただくことをおすすめします。そのほか、がんが進行すると血尿や、骨転移による背中や腰の痛み、骨折なども現れます。近年の検査技術の発展により少なくなった印象はありますが、背中の痛みや骨折などで整形外科を受診し、MRI検査の結果から前立腺がんの骨転移が判明するケースもあります。

なお、前立腺がんと似た症状が現れる、前立腺肥大症という病気があります。前立腺肥大症は尿道を取り囲む内腺(移行領域)に良性腫瘍(りょうせいしゅよう)が発生するのに対し、前立腺がんは主に尿道から離れた外腺(辺縁領域)に悪性腫瘍(あくせいしゅよう)が発生します。前立腺肥大症では排尿に関連する症状が現れやすく、前立腺がんでは現れにくいです。前立腺肥大症と前立腺がんが合併していることもありますが、それぞれはまったく別の病気で、前立腺肥大症から前立腺がんに変化することはありません。

前項で述べたとおり、早期の前立腺がんの多くは自覚症状が現れません。そのようななかで、少しでも早く発見するために有用なのが“PSA検査(血液検査)”です。詳しくは検査の項で述べますが、この検査ではPSAの血中濃度を測定することで、前立腺の病気の可能性を調べることができます。前立腺がんのみを検出する検査ではないものの、PSA値が高い場合には前立腺に“何らか”の異常があることが疑われます。前立腺がんは50歳以上の方に発症しやすい病気ですので、50歳を超えたら自覚症状の有無に関係なく一度前立腺がん検診を受けることをおすすめします。

一般的に前立腺がん検診は50歳以上での受診が推奨されていますが、家族歴がある場合には40歳代から検診の受診が推奨されています。

また、以前検査を受けた際に、PSA値が基準値(4.0ng/mL)以下であっても、それに近しい数値だった場合には年に1回程度の頻度で検査を受けることをおすすめします。PSA値は加齢によって上昇しますので、たとえば50歳で2.5ng/mLだった方は、年齢を重ねるうちに基準値を超える可能性があります。先述のとおり、PSA値が高いからといって必ずしも前立腺がんであるとは限らないものの、もしも発症した場合でも速やかに治療ができるよう、「自分は大丈夫」とは思わず定期的に自身の健康状態をチェックするようにしましょう。

ここでは、前立腺がんを疑った場合に、主に行われる検査について紹介します。

前立腺がんを疑った場合、まずは採血によるPSA検査を行います。PSA(前立腺特異抗原)は前立腺でつくられるタンパク質の一種です。通常PSAは主に精液中に分泌されますが、がんや炎症が生じて前立腺組織が壊れると、血液中にも漏れ出します。そのため、血中のPSA値を測定することで前立腺の異常の確認に役立ちます。なお、PSA値はさまざまな要因で上昇するため、期間を空けて再度採血を行うこともあります。

直腸診は医師が肛門(こうもん)から指を挿入し、前立腺の状態を直接触って確かめる検査です。前立腺の表面に凹凸がないか、左右非対称がないかなどを確認します。

PSA検査や直腸診を行い前立腺がんが疑われる場合には、MRI検査を実施します。MRI検査を行うことで、前立腺の形状や大きさを画像で確認することが可能です。MRI検査のみで確定診断をすることはできませんが、前立腺生検(後述)を行うべきかどうか判断する材料の1つになります。

また、がんの広がりや転移の有無を確認する際にも画像検査を行います。具体的な方法として、全身MRI検査やCT検査、骨シンチグラフィなどがあり、患者さんの状態に応じて実施します。前立腺がんは骨やリンパ節に転移しやすい特徴があるため、これらの検査を行ってがんの状態を精査し、治療方針を決定していきます。

ここまでお伝えした検査などで前立腺がんが疑われる場合は、確定診断を得るために前立腺生検を行います。前立腺生検は、肛門から超音波を発する機械を挿入して行います。画面上に映し出される超音波画像で前立腺を観察しながら、前立腺に細い針を刺して複数箇所から組織を採取します。当院では、静脈麻酔下*で行いますので痛みを感じることはほとんどありません。採取した組織は顕微鏡で観察して、がん細胞の有無や悪性度を調べます。

*麻酔科標榜医:山瀬 裕美先生

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