インタビュー

口唇口蓋裂の症状に対する対応とは

口唇口蓋裂の症状に対する対応とは
玉田 一敬 先生

東京都立小児総合医療センター 形成外科医長

玉田 一敬 先生

この記事の最終更新は2016年04月13日です。

口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)は、唇や口蓋に癒合不全があり、つながっていない状態です。そのため、ミルクが飲みづらかったり、うまく食事が食べられなかったりといった哺乳・摂食の問題が起きる可能性があります。これを助けるために特殊な器具を用いたり、飲み方を工夫したりすることが必要です。その他、歯並びに対するサポートや言語に関する評価も必要となってきます。口唇口蓋裂のお子さんに現れる症状にどのように対応すればよいのか、東京都立小児総合医療センター形成外科医長の玉田一敬先生にお話しいただきました。

口唇口蓋裂を持って生まれても、直接母乳を飲める赤ちゃんもいますし、飲ませ方や哺乳瓶の乳首に工夫が必要な赤ちゃんもいます。さらには生まれてすぐのミルクの飲みづらさが主症状で入院する赤ちゃんもいます。

哺乳の問題については口唇にテープを貼ったり、口蓋裂に対して口蓋床を装着したりすることで症状の改善が期待できます。口蓋床は「プレート」ともいわれていて、顎の発育や歯茎の並び具合を誘導すること、哺乳状態を改善すること等を目的として使用されます。

東京都立小児総合医療センターで使用されている口蓋床(提供:矯正歯科 井口暁先生)

 

東京都立小児総合医療センターで使用されている口蓋裂模型(提供:矯正歯科 井口暁先生)

その他の症状としては、以下のようなことが起きる可能性があります。

・言葉をしゃべるようになったときに空気が鼻に漏れて明瞭に発音することができない

・鼻へ食べ物が頻繁に回ってしまい不快感の原因となる

滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)になりやすい

・成長に伴って歯並びの乱れが見られるようになる 

こういった問題を未然に防ぐために、あるいはそういった問題を解決するために、様々な治療が行われます。

●ミルクの飲ませ方について

口唇口蓋裂を持って生まれた赤ちゃんが、あまり上手にミルクを飲めない場合、まずミルクの飲ませ方を指導します。

直接母乳を与えることは、赤ちゃん自身の免疫力を育て、母子のスキンシップを図るためにも非常に重要なことだといえます。ただし、一番大切なことは赤ちゃんがきちんと大きくなっていくことであり、母乳を直接与えることが難しい場合は柔軟に対応することが必要です。

最近は様々なタイプの口唇口蓋裂用哺乳瓶が開発されており、少しずつ形態に違いがあります。乳首の良し悪しの問題ではなく、相性もありますので、お子さんの飲みやすいものを選択して使っていただければよいでしょう。

ミルクを飲ませるときには、可能であれば裂が生じている部分に挟み込ませるような飲ませ方をしないほうが望ましいです。また、哺乳時間は10~15分を目安に、乳首の形状や穴の大きさを設定することをお勧めします。赤ちゃんがミルクを上手く吸えなければ、コップや注射器等で口に垂らす方法もあります。

●言語指導

口蓋形成術を行う時期は、言語の発達が著しい時期でもあります。そのため、構音の明瞭さ(発音がはっきりしているかどうか)に関して、言語聴覚士による構音のチェックが行われます。

口蓋裂の手術後に、鼻咽腔閉鎖不全(口と鼻を完全に分けることができず、おしゃべりするときに口から鼻に空気が漏れてしまったりすること)が残ってしまった場合には、言語訓練を行ったり、外科的な治療を行ったりすることが必要となる場合があります。

●歯科指導

顎裂を伴う口唇裂や、口蓋裂のお子さんの場合、元来からある上あごの骨の問題や手術操作による影響等から、将来矯正歯科的な治療が必要となることも多いです。

一般の方がイメージされる、いわゆる「矯正装置」をつける前にも、口腔内の衛生環境の管理をはじめとする様々な準備事項があります。したがって、一貫した治療の早い時期から、歯科的見地からも診療を行っていくことが重要です。

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