ひとくちに「耳痛」といっても痛む場所によって病気が異なります。痛む場所以外にも、痛みの種類、片耳か両耳に起こるかなどで原因は異なるため、原因に応じた対処が必要です。兵庫医科大学病院副院長で耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室主任教授の阪上雅史先生に「耳痛」を伴う疾患とその治療法についてお話を伺いました。
原因でもっとも多いのは外耳炎です。耳たぶを引っ張ったり、押したりするだけでズキズキずるような痛みがあります。次に多いのが急性中耳炎で、耳の奥のほうで痛みを感じます。以上の2つが大半を占めます。また咽頭炎によって扁桃腺が腫れると放散痛(病気の原因部位とかけ離れた部位に現れる痛みのこと)で耳に痛みを感じることがあります。また外耳道の周りには顎関節があるため、顎関節症の場合では口を開けたり閉じたりすると痛むことがあります。ウイルスが原因で発生する帯状疱疹はヘルペスとも呼ばれます。キリキリ・ピリピリするような強い痛みを生じます。また、外傷や外耳道異物で痛みを感じることもあります。
外耳道には分泌物を出す耳垢腺・皮脂腺の2つの腺があります。その部分に感染によって炎症が起こってできるできものが痛みの原因になっています。急性中耳炎の痛みも感染が原因で起こっており、とくに膿が出る寸前で鼓膜が膨らんでしまっている状態では強い痛みを感じます。
対処法は2つに共通しますが、耳内クリーニングと抗生剤・ステロイド剤の点耳、もしくは抗生剤を内服します。帯状疱疹に関しては抗ウイルス剤、咽頭炎には鎮痛剤と抗生剤を使います。また、顎関節症については当院では歯科口腔外科にゆだね、かみ合わせのバランスを調整するための治療を行います。
急性中耳炎で鼓膜が膨らんでいる場合は、鼓膜切開を行って膿を外に出すと痛みがすっと取れます。鼓膜は手術後1週間ほどで再生します。外耳炎の場合、耳内クリーニングをするだけでよく、手術をするケースはまずありません。老人性難聴に代表される感音難聴は手術をしてもよくならないため、手術をすることはありません。生活に支障が出る場合は、補聴器を装用して日常会話の助けとします。補聴器を装用しても日常会話が困難な場合(重度難聴)は人工内耳を考慮します。
兵庫医科大学病院 病院長
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