尿路に石のような塊ができ、「出産をはるかに超える痛み」と喩えられるほどの強い痛みを引き起こす「尿路結石症」は、現在日本で急増しています。この原因のひとつに、肉中心に偏った食生活の欧米化が関係しているといわれています。本記事では、尿路結石症を引き起こしやすい食生活や、積極的に摂取すべき栄養素について、国際医療福祉大学病院腎泌尿器外科部長の内田克紀先生にお話しいただきました。
尿路結石の多くは腎臓で作られ、これが尿管や膀胱に移動することで痛みや血尿をはじめとする様々な症状が引き起こされます。尿路結石は上部尿路(腎杯・腎盂・尿道)に結石ができるものと下部尿路(膀胱・尿道)にできるものに分類され、全尿路結石症患者のうち96%以上が前者の上部尿路結石症となっています。
シュウ酸カルシウム/リン酸カルシウム/尿酸/シスチン/リン酸マグネシウムアンモニウム
このうち、カルシウム結石が92%と最も多くなっており(内訳:シュウ酸カルシウム結石72%、リン酸カルシウム結石8%)、次いで尿酸結石が5%、リン酸マグネシウムアンモニウムが2%、感染結石であるシスチン結石が1%という順になっています。
尿路結石症の年間罹患率は10年ごとの統計調査のたびに増加しており、2005年に報告された最新のデータによると、日本における罹患率は10人に1人という数字に達しています。特に30~60代の男性に多くみられ、年間罹患率は男性では7人に1人、女性では15人に1人と差があり、男女比は2.4:1となっています
尿路結石症には食事の偏りや運動不足などが関係しているため、「メタボリックシンドロームの前段階、もしくは隣り合わせの病気」として捉えられています。メタボリックシンドロームは男性に多いため、メタボリックシンドローム予備軍である尿路結石症患者にも男女差が生じているのではないかと考えます。
一方、下部尿路結石の男女比は3.2:1とさらに男性に多くなっています。特に60歳以上の男性に多く、膀胱まで下降した上部尿路結石が前立腺肥大症などによる尿路通過障害により、そのまま膀胱で増大することによるものと思われます。
尿路結石症の発症には、食事や既往歴(現在および過去の病歴)、家族歴や尿路の奇形、ストレスなど、多くの因子が関係しています。このうち、近年罹患率が急増している原因として、生活様式の変化、特に食生活の欧米化(高脂肪食化)との関係が注目されています。
たとえば肉中心の食事など、高たんぱく高脂肪に偏った食生活を続けていると、カルシウムやシュウ酸、尿酸などが尿中へと放出する量が増加し、「結晶」(塊)となってしまいます。この結晶が集まり、増大したものが結石です。
動物性たんぱく質のほか、過剰摂取が結晶化を引き起こすとされる食品には次のようなものがあります。
ほうれん草などの青菜類/たけのこ/紅茶/コーヒー/ココア/玉露や抹茶などの高級茶/バナナ/チョコレート/ナッツ類
ビールなどのアルコール/魚卵
1日当たりのアルコール摂取の目安量
日本酒1合・ビール500ml・ウイスキー60ml
前項で挙げた食品の過剰摂取だけでなく、カルシウム不足も尿路結石の原因となります。
食事により摂取したカルシウムは、腸管中で結晶の原因となるシュウ酸と結合し、便となって排出されます。カルシウムの摂取量が少ないとフリーのシュウ酸が腸管から吸収され、その結果、尿中に排泄されるシュウ酸が増加して尿路結石の原因となります。
ですから、たとえばシュウ酸の多いほうれん草をカルシウムの多い雑魚などの小魚と共に食べたり、紅茶にミルクを入れたり、たけのことわかめを合わせるレシピなどは、非常に理にかなっています。日本人はもともとカルシウムの摂取量が少ないので、1日600mg~800mg程度のカルシウムを意識的に摂るよう、日ごろから食事に工夫を加えていくことが大切です。
国際医療福祉大学病院腎泌尿器外科 部長 教授
内田 克紀 先生の所属医療機関
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