巨細胞性動脈炎は、側頭動脈炎とも呼ばれ、リウマチ性多発筋痛症と相互に合併することの多い病気です。また、この側頭動脈炎は失明につながる可能性があり、膠原病のなかでの救急疾患の1つです。側頭動脈炎とはどのような病気なのでしょうか。沖縄県立中部病院の金城光代先生にお話をお聞きしました。
巨細胞性動脈炎は、大きな血管(大動脈またはそれにつながる動脈)に起こる動脈炎です。新規発症の頭痛を特徴とし、高齢の女性に多い病気です。注意が必要なのは、失明の原因となるからです。しばしば頭の外側にある側頭動脈(図)にも炎症が起きるため、側頭動脈炎とも呼ばれます。リウマチ性多発筋痛症の患者さんのうち5~20%に併って起こります。また、巨細胞性動脈炎の方の半分にリウマチ性多発筋痛症が起こります。
基本的には原因不明です。リウマチ性多発筋痛症と同様に年齢との関係があり、50歳以上の方に多く起こります。また、スカンジナビアの方に多く起こる点もリウマチ性多発筋痛症と同様です。一方で、リウマチ性多発筋痛症と異なる点としては、遺伝との関連が指摘されつつあることが挙げられます。
このようにさまざまな症状がありますが、基本的な考え方としては「全身症状と新規発症の頭痛」が特徴的です。
何より危険な「失明」の危険性はどのように予測すればよいのでしょうか?
まず、何より大切なのは「視力障害」です。複視といって、ものが二重に見えたときにはすぐに受診しなくてはいけません。もう1つの特徴としては「顎のだるさ」です。特に、噛んでいると顎がだるくなっていくというのは顎の虚血症状(血の通りが悪くなっていく)の現れです。これらの症状があるときには、失明が目の前に迫っている危険な状況と考えられます。これらは、さほど頻度の高いものではありませんが緊急事態なので、すぐに病院に行かねばなりません。
上記は以前から使われているものですが、現在も分類基準として使われています。
急性期治療(発症後すぐの治療)としては、「ステロイドパルス療法」という大量のステロイドによる治療を行います。特に、視力に危険があり失明の恐れがあるときにはすぐにステロイドパルス療法を始めます。この場合、側頭動脈生検(体の組織を採取して検査すること)などによる確定診断を待っていられないため、診断が確定する前に治療を開始します。
失明の予防として、低用量アスピリンが推奨されており、併用されています。
まず、先述したように、巨細胞性動脈炎は失明を起こしうるという点が危険であり理由です。もうひとつの危険性としては、「大血管炎」を引き起こす可能性もあるということです。これは、側頭動脈に炎症がなく、大動脈だけ大血管炎が起きてくる可能性もあります。つまり、頭痛などの症状もなく大動脈炎だけができることがあるということです。大動脈の炎症の結果、大動脈瘤ができることがあります。
大動脈瘤とは、血管が膨らんでしまうことを指します。膨らむだけであれば問題はありませんが、大動脈瘤ができると血管が破裂してしまうリスクが高くなります。「不明熱」という形で、頭痛は起こらないものの胸部大動脈瘤が起きてしまうリスクが普通の方と比較して17倍になります。大動脈解離という血管の壁が裂けてしまう状態になる可能性も高くなり、これは寿命や生命予後(病気になったあと何年生きられるか)にも関わります。
さらに、別の危険性もあります。これは、巨細胞性動脈炎のほうがリウマチ性多発筋痛症よりもはるかに大量のステロイドを使わなければいけないということです。こうなると、圧迫骨折や免疫抑制(身体の免疫機能を抑えてしまうため感染症などにかかりやすくなる)といったステロイドによる合併症も比較にならないほど高い率で起きます。そのため、ステロイドの合併症を慎重にモニタリングしていく必要があります。
沖縄県立中部病院 総合内科 リウマチ・膠原病・内分泌科 チーフ
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リウマチ性多発性筋痛症で動悸に異常をきたすことはありますか?
更年期障害のホルモンの薬を頂きまして 少し 動悸がましになりましたが循環器も検査を予定しております。 リウマチ性多発性は広域でいう膠原病でしょうか? 頭痛が時々あるので巨細胞の合併症を恐れています。 まだまだ元気でいたいです。 なかなか症状が医師には伝えることがつたわらず不安になることもしばしば。 感染症のリスクも 不安です。 なるべく神経を乱さないようにしていますが かえって大丈夫そうに思われたりして まじめに診てもらいたいといつも病院で思います。
30代で血圧(上140、下が110)は通院すべきでしょうか。
【相談対象者の健康状況】 夫に6年前から慢性的な下半身のしびれや痛みがあり、ペインクリニック、整形外科、泌尿器科、肛門科、心療内科等様々な診療科で検査・診察を受けてきましたが、原因が特定できていません。 慢性骨盤痛症候群の可能性が高いと言われましたが、治療を2年ほど続けても改善せず、現在、自宅療養中です。 【今回相談したいこと】 血圧計で計測した際、上が140で下が110が表示され続けているため、血圧に痛みが関係するのか等以下について教えていただきたいです。 ①食生活は減塩を続けており、定期的に散歩しているにも関わらず血圧が下がらないため、痛みが血圧に影響するのでしょうか。 ②おでこ(こめかみ部分)に血管が浮き出ていることがよくあるのですが、30歳でよく起こることでしょうか。気にしなくても問題ないでしょうか。 ③上記血圧について、詳細の検査等受ける場合、何科を受診すべきでしょうか。
17日午後から締め付けるような頭痛と発熱あり
17日午後から締め付けるような頭痛(後頭部から側頭部にかけて)と発熱(38.8度)があり、18日朝、家近くのクリニックを受診し、解熱剤を処方された。薬が効いている間は、少し熱下がるが、また38度以上になり、その繰り返しです。頭痛は一向に痛みが引かず、頭が割れるような痛みが続いています。18日夜、あまりの痛さに救急にも行ったが、朝もらった解熱剤で様子みてとのこと。 インフルは陰性でした。 会社でも買い物行く時も、外出る時はマスクしてるし、外食も最近は行っていません。 もしかしてコロナ? 一人暮らしなので同居人もいません。 とにかく頭痛を少しでも楽にしたいです。
パルス療法の次は、どんな治療か、
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