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椎間板ヘルニアの手術

椎間板ヘルニアの手術
泉 雅文 先生

北青山D.CLINIC 脳神経外科

泉 雅文 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年08月06日です。

椎間板ヘルニアとは、背骨を構成する骨の間にある「椎間板」がなんらかの要因で突出し、神経に触れたり炎症を起こしたりすることで発症します。記事2『椎間板ヘルニアはどのように治療するの? 選択肢と保存療法の詳細』では、椎間板ヘルニアに対する保存療法についてご説明しました。本記事では、椎間板ヘルニアの手術について、北青山Dクリニックの泉雅文(いずみ まさふみ)先生にお話を伺います。

椎間板ヘルニアのみの場合、おもに内視鏡下ヘルニア摘出術(MED法・PED法)、経皮的髄核摘出術(PN法)、ヘルニア摘出術(LOVE法)といった手術を行うことがあります。また、脊椎側弯症、あるいは脊柱管狭窄症腰椎すべり症などを合併している場合には、腰椎固定術、部分椎弓切除術などを行う場合もあります。

椎間板ヘルニアに対する手術にはさまざまな方法がありますが、基本的にはヘルニアを摘出するという目的は共通であり、そのアプローチが異なります。治療の際は、ヘルニアの状態と患者さんの希望を考慮し、手術法を選択します。

内視鏡下ヘルニア摘出手術には、おもに2つの方法があります。そのひとつであるMED法は、全身麻酔で行う治療です。

背部を1.5cmほど切開して外筒管を刺し入れ、内視鏡を患部まで挿入します。そして、内視鏡の映像を画像モニターで確認しながら、ヘルニアを摘出します。傷口が小さく体へのダメージが低いことが利点です。

もうひとつの内視鏡下ヘルニア摘出手術であるPED法は、局所麻酔でも実施可能な治療です。PEDは、特殊な細い内視鏡を使用し、MEDとは異なるアプローチで、より小さな切開創で手術を行う点が特徴です。

基本的には、うつ伏せの体位で治療を行います。背部を8mmほど切開して外筒管を刺し入れ、内視鏡を患部まで挿入します。そして、内視鏡の映像を画像モニターで確認しながらヘルニアを摘出します。(イラスト「PED法」を参照)

PED法は、PLDDでは治療効果が十分に期待しづらいタイプの椎間板ヘルニアにも対応が可能ですが、すべての椎間板ヘルニアに対応できるわけではありません。傷口が小さく、日帰りで実施可能です。

PLDD…椎間板ヘルニアのレーザー治療(詳しくは記事3『椎間板ヘルニアのレーザー治療(PLDD)』をご覧ください)

PED法

経皮的髄核摘出術(PN法)は、原則的に局所麻酔で行います。背部に直径4mmほどの管を刺し入れ、特殊な鉗子を挿入して X線透視下(もしくはMR透視下)で確認しながら、椎間板の一部(髄核)を摘出します。髄核を摘出することにより椎間板の内容積を減らし、全体の内圧を減少させて症状の改善を試みます。内視鏡やPLDDの登場により、その適応はあまり多くなくなったと考えられます。

LOVE法とは、背中側から5~6cmほど切開して腰椎の一部を削り、椎弓の一部を切除してヘルニアを摘出する手術です。全身麻酔下で行います。近年、顕微鏡下手術が発達したことで、比較的小さな傷口で手術を行えるようになりました。手術用顕微鏡を用いて行う術式を「マイクロLOVE法」と呼びます。

首の椎間板ヘルニアに対する手術には、頚椎前方固定術、頚椎椎弓(ついきゅう)形成術などの方法があります。首の場合は、椎間板ヘルニア単独で発症するというより、脊椎管狭窄症やすべり症などを併発しているケースが多いです。

頚椎前方固定術とは、頚部の皮膚と骨を前方から切開し、骨や椎間板を切除することで、脊髄や神経根の圧迫をとりのぞく方法です。椎間板を切除した部分は、腰骨(骨盤の骨)や人工スペーサー(挟んで空間を確保する器具)で固定します。

極端に支持性が低くなることを避けるため、頚椎前方固定術の適応となるのは2椎間までとなります。

頚椎前方固定術

頚椎椎弓形成術とは、圧迫された頸髄(脊髄のうちもっとも上部にあり脳に近い部分)の除圧を目的とした手術です。

首の後ろを縦に切開し、椎弓(ついきゅう)(首の骨の後方部分)に切り込みを入れて脊柱管(神経の通り道)を広げます。そののち、人工の骨や金属性のプレートを挿入し固定することで、頸髄の除圧を試みます。

頚椎椎弓形成術

椎間板ヘルニアの手術による合併症には、以下の通りさまざまなものがあります。

  • 神経損傷による下肢麻痺、下肢知覚鈍麻、排尿排便障害
  • 手術による(きず)部分の感染
  • 椎間板の炎症
  • 硬膜(神経を包む膜)の損傷による脊髄液の漏出と髄膜炎
  • 創部分の血腫(血のこぶ)形成による神経麻痺・下肢痛
  • 腹部の血管損傷による術中の出血

保存療法が長期間におよび、ヘルニアによる脊髄や神経の圧迫が著しい場合には、手術が成功したとしても、しびれなどが後遺症として残る可能性があります。そのような意味では、手術の適応がある場合、その時期を適切に見極めることが非常に重要といえます。

通常のヘルニア摘出後の「再手術率」を再発率とするなら、5年後で4〜15%という報告があります。椎間板ヘルニアは、姿勢や生活習慣など「環境的な要因」で起こることが多いです。そのため、再発を防ぐためには、椎間板ヘルニアの原因を取り除く生活(姿勢に注意する、運動習慣をつけるなど)を心がけることが大切です。

(椎間板ヘルニアの原因については、記事1『椎間板ヘルニアはなぜ起こる? 原因・症状』をご覧ください。)

先生

近年、内視鏡下の手術法が進歩したこともあり、椎間板ヘルニアの治療法のバリエーションは増え、手術のハードルも低くなっています。しかしながら、椎間板ヘルニアの治療の基本は「保存療法」です。一方で、「手術」を行うべき症例も存在します。その場合には、適切なタイミングで手術を行うことがとても大切です。選択肢として、記事3でお話ししたレーザー治療などもあります。気になることがあれば主治医などに相談をしてください。

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