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顔面が赤くなる“酒さ”の治療法とは?〜薬の種類や保険適応の有無〜

顔面が赤くなる“酒さ”の治療法とは?〜薬の種類や保険適応の有無〜

東北大学大学院 医学系研究科・医学部 皮膚科 准教授、東北大学病院 皮膚科 副科長

山﨑 研志 先生

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酒さは頬や鼻、額などの顔面が赤くなる病気のことです。症状が悪化するにつれて、丘疹(きゅうしん)(小さな盛り上がり)や膿疱(のうほう)が溜まったもの)を伴うこともあります。酒さの原因は明らかではないものの、日々の生活における外的な刺激などによって症状が悪化することが分かっています。そのため治療では、まずは生活指導を実施したうえで、薬物治療などを行う必要があります。

本記事では、具体的にどのように治療を進めていくのかを詳しく解説します。

酒さの治療方針を決めるうえで重要なことは、診断において酒さと似たような症状が見られる他の疾患との鑑別です。

頻度が高い疾患としては、接触皮膚炎花粉症・花粉性皮膚炎、光線過敏症脂漏性皮膚炎尋常性ざ瘡にきび)、毛包虫性皮膚炎などがあります。また、これらと比べて頻度は高くないものの、見逃してはいけない疾患として、全身性エリテマトーデス皮膚筋炎などの膠原病(こうげんびょう)、好酸球性毛包炎顔面播種状粟粒性狼瘡(がんめんはしゅじょうぞくりゅうせいろうそう)などが挙げられます。

また、これらの疾患は、酒さと同時に発症しやすいといった特徴もあります。適切な治療を行うためには、問診で患者から詳細な症状を聞き出したり、アレルギー検査などによって全身をくまなく調べたりして、除外すべき疾患や合併症の有無を確認することが非常に重要です。

他疾患との鑑別や合併症の有無が確認できたら、治療へと進みます。治療では、症状を悪化させる要因となる刺激を回避する生活指導に加えて、薬物治療や理学療法を組み合わせて行います。

酒さの症状を悪化させる要因を回避するよう、患者に対して生活指導を実施します。症状を悪化させる要因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 気温の変化(寒暖差)
  • 日光(紫外線)の照射
  • 乾燥
  • アルコールやカフェインの多量摂取
  • 香辛料のきいた刺激物の摂取
  • 精神的な緊張

など

特に、寒暖差や紫外線の照射、乾燥といった外的な刺激は、酒さの症状を悪化させる大きな要因となります。花粉が飛散する初夏、紫外線の強い夏、乾燥や室内外の寒暖差が大きくなる冬など、季節ごとの外的刺激の変化によって、どのように症状が出現するのかを患者から詳細に聞き取ることが、適切な生活指導のために大切です。

そのうえで、刺激が少なく保湿効果の高いスキンケア用品の使用をすすめたり、紫外線予防のためにサンスクリーン剤(日焼け止め)や日傘の使用を促したりします。

日本では、酒さに対して保険適用となっている薬剤は数少ないのが現状です(2020年8月時点)。専門医の判断のもと、自由診療として保険適用外の薬剤を使用しながら、薬物治療を進めていきます。

メトロニダゾールゲル

日本では、皮膚浸潤がんの潰瘍(かいよう)部位の殺菌・臭気の改善の目的にのみ保険適用となっている薬剤ですが、日本以外の数十か国では酒さの治療薬として使用が認められています。

酒さに対して、自由診療として使用される頻度が高い薬剤です。

タクロリムス軟膏

皮膚の赤みや腫れを抑える効果があります。ただし、日本ではアトピー性皮膚炎に対してのみ保険適用となっており、酒さに対しては自由診療として使用されます。海外でも酒さにたいしての使用は承認されてはいません。

イオウ・カンフルローション

皮膚を軟化させる効果があり、酒さに対して保険適用となっています。

ドキシサイクリン

丘疹や膿疱が主症状として見られるタイプの酒さに対し有効性が証明されている抗菌薬です。メトロニダゾール外用薬に加えて、3か月を目処に使用します。日本では、酒さ治療薬としては保険適用されていません。

ミノサイクリン塩酸塩

ドキシサイクリンと同様に、丘疹や膿疱が主症状として見られるタイプの酒さに対して有効性が証明されています。日本では、酒さ治療薬としては保険適用されていません。

抗ヒスタミン薬

花粉症花粉皮膚炎を合併している場合に使用します。

毛細血管の拡張によって赤みを生じているタイプの酒さに対しては、パルス色素レーザー治療とI P L(Intense Pulsed Light)といった理学療法が有効です。ただし、2020年8月時点では保険適用外の治療であり、施術回数や費用などを患者とよく話し合ったうえで実施する必要があります。

酒さは、薬物治療によって数か月程度で症状が改善することもありますが、なかには年単位で治療が必要なこともあります。そのような治療の経過においては、症状を悪化させる要因をきちんと理解し、それらを回避した生活を心がけることが大切です。また、昔から使用している日常品など、思わぬものが症状を悪化させている場合もあります。そのため、定期的にパッチテストなどを実施し、アレルギーについて探ることも重要です。長引く治療のなかで、少しでも疑問や不安を感じた場合には、医師に相談するようにしましょう。

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  • 東北大学大学院 医学系研究科・医学部 皮膚科 准教授、東北大学病院 皮膚科 副科長

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