酒さは主に顔面に生じる原因不明の慢性炎症性疾患で、頬や鼻、額など顔に赤み(紅斑)が現れ、進行すると赤いぶつぶつ(丘疹)や膿の集合体(膿疱)を生じることもあります。成人がかかる確率が高く、男女比をみると女性に多いという特徴があります。
一般的に酒さの症状の1つに湿疹があると思われていますが、酒さには湿疹が現れることがあるのでしょうか。本記事では、酒さと湿疹の違いや酒さの診断・治療方法などについて説明します。
酒さでは、湿疹が生じることはありません。湿疹とは皮膚表面に起こる炎症の総称で、一般的には“皮膚炎”とも呼ばれます。主な症状は、かゆみや軽度なヒリヒリ感などの炎症反応で、皮膚に赤み(紅斑)やできもの(丘疹)、水ぶくれなどがみられるとされています。
湿疹で生じる症状は酒さとよく似ていますが、それぞれは異なるもので発生する部位や症状、仕組みも違います。
まず、酒さは主に顔に症状が現れるのに対し、湿疹は体中さまざまな部位に現れる可能性があります。また、酒さではほてりやヒリヒリとした痛みを伴うことはありますが、湿疹のようにかゆみの症状が現れることはありません。
ただし、酒さは湿疹、いわゆる接触皮膚炎(かぶれ)やアトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎などが合併していることもあります。さらに、湿疹として漫然と治療されていることによって酒さ様皮膚炎に移行してしまうこともあるため、酒さの症状を理解したうえで、気になる症状がある場合は自己判断せずに医師に相談することが大切です。
酒さの主な症状は顔の赤みやほてりですが、ほかにもさまざまな症状が生じることがあります。この症状によって酒さはさらに細かく分類されます。
以下では、酒さの4つの分類とそれぞれの症状について説明します。
酒さの中でもっともよくみられるタイプです。一過性の顔の紅斑(赤み)とほてり感が主体で、“赤ら顔”とも呼ばれる症状がみられます。また、次に述べる第2度酒さのようににきびに似た丘疹が出ることもあるほか、拡張した毛細血管を確認できるケースもあります。
敏感肌の方がかかりやすく、紫外線によるダメージや温度差、化粧品などに刺激でヒリヒリとした痛みを感じることもあります。
2番目によくみられるタイプです。ほてりの症状が継続的に生じるほか、紅斑やにきび(ざ瘡)によく似た丘疹・膿疱、肌の乾燥などがみられます。
このとき生じる丘疹・嚢胞はにきびとは異なり、毛穴のつまり(面ぽう)によるものではありません。鼻の周辺はかゆみなどの症状が見られることもあります。
鼻部を中心に腫瘤を形成するタイプの酒さです。顎や額、耳、まぶたなどに腫瘤が生じることもあります。
男性に多くみられ、鼻の腫瘤(鼻瘤)では皮膚が厚くなり、おうとつのある特徴的な様子がみられます。
酒さの中でももっともまれなタイプで、眼瞼・眼球結膜の充血や炎症を伴います。赤み・ほてりなどの皮膚症状を伴うこともあれば、皮膚症状を伴わずに眼の症状が現れることもあります。
酒さの症状は治療によって病期が早期の段階に戻る可能性があり、早期受診・治療が非常に重要です。したがって、赤みや丘疹など、気になる症状がある場合は早めに皮膚科を受診して、専門医の指導のもと適切な治療を受けるようにしましょう。
酒さは湿疹をはじめ、酒さとよく似た症状を呈す病気がいくつかあるため、診断する際はほかの病気との鑑別が非常に大切です。また、接触皮膚炎などのように酒さと合併しやすい病気もあるため、病気が併存している可能性も含めて検査を行う必要があります。鑑別が必要な主な病気は以下のとおりです。
これらの病気の鑑別を行う場合、患者への問診のほか、アレルギー検査などさまざまな検査が行われます。
湿疹と酒さの症状は似ていますが、それぞれ異なる病気ということを理解したうえで、気になる症状がある場合は医師に相談するとよいでしょう。診断の結果、酒さである場合は薬物治療や理学療法を行います。特効薬はなく長期的な治療が必要ですが、早期に治療を行うことで回復したり進行を防いだりできるとされています。
また、酒さとそのほかの病気は鑑別が難しく、ときに合併していることもあります。そのため、治療を行った場合でも顔の湿疹が長期間続く、刺激物や日光、ストレスなどを避けても改善がみられないといった場合には、一度皮膚科専門医を受診することを検討しましょう。
高槻赤十字病院 名誉院長、同顧問/皮膚・形成外科センター長
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