【インタビュー】

クリップする
URLを入力して
記事をクリップしましょう
指定された URL のページが見つかりません
S664x430 875d8ed2 0aef 4f30 abe8 d816804518ba
全身性エリテマトーデス(SLE)の診断。診断基準には何が含まれる?
全身性エリテマトーデス(SLE)は様々な症状をあらわす疾患であり、病気の診断は慎重に行う必要があります。現在、日本では二種類の診断基準が使われており、一般的にはアメリカリウマチ学会(ACR)の1...
クリップに失敗しました
クリップ とは
記事にコメントをつけて保存することが出来ます。検索機能であとで検索しやすいキーワードをつけたり、読み返し用のメモを入れておくと便利です。
また、記事を読んで疑問に思ったこと、わからないことなどをコメントに書き、「医療チームのコメントを許可する」を選んで頂いた場合は、医師や看護師が解説をメールにてお送りする場合があります。
※ クリップ内容は外部に公開されません

全身性エリテマトーデス(SLE)の診断。診断基準には何が含まれる?

公開日 2015 年 12 月 01 日 | 更新日 2018 年 10 月 22 日

全身性エリテマトーデス(SLE)の診断。診断基準には何が含まれる?
古川 福実 先生

高槻赤十字病院 病院長

古川 福実 先生

全身性エリテマトーデス(SLE)は様々な症状をあらわす疾患であり、病気の診断は慎重に行う必要があります。現在、日本では二種類の診断基準が使われており、一般的にはアメリカリウマチ学会(ACR)の1982年基準(1997年改訂)が用いられています。一方、2012年にSLICC分類基準(Systemic Lupus International Collaborating Clinics)が発表され、この基準の検証が行われている最中です。全身性エリテマトーデス(SLE)の診断基準の変化について、和歌山県立医科大学皮膚科教授の古川福実先生にお話をお聞きしました。

全身性エリテマトーデス(SLE)における診断基準(1997年度改訂版)

全身性エリテマトーデス(SLE)は多様な症状が見られるため、その診断も診断基準にのっとって慎重に行われます。

全身性エリテマトーデス(SLE)の診断基準は一般的に、アメリカのリウマチ学会にて作成されており、下記11項目のうち1~4は皮膚粘膜症状・5~8は関節、心臓、腎臓、神経症状などの多臓器障害・9~11は血液検査による異常と分類されています。実際は、1~4の皮膚症状をすべて満たした場合、他の症状が無くても全身性エリテマトーデス(SLE)と診断されますが、ほとんどのケースでは抗核抗体の産生などの免疫学的異常も伴っています。

※正式には分類と呼びますが、一般的には基準と呼ばれているため、今回では基準という言葉を用いています。

  • アメリカリウマチ学会(ACR)の診断基準(1997年改訂版)

11項目

1.

頬部紅斑
Malar rash

鼻梁から鼻唇溝へ広がる紅斑、平坦なことも隆起していることもある

 

2.

円板状皮疹
Discoid rash

 

3.

日光過敏
Photosensitivity

日光に対する過敏な反応による皮疹

 

4.

口腔潰瘍
Oral ulcers

口腔、鼻咽頭の潰瘍、通常無痛性

 

5.

関節炎
Arthritis

2ヵ所以上の末梢性の非破壊性関節炎で、痛み・腫れ・関節液貯留を伴う

 

6.

漿膜炎
Serositis

次のいずれか:胸膜炎-胸痛・胸膜摩擦音・胸水、心膜炎-心電図・心膜摩擦音・心のう水

 

7.

腎障害
Renal disorder

次のいずれか:尿蛋白-0.5g/日以上または3+以上、細胞性円柱

 

8.

神経障害
Neurologic disorder

次のいずれか:痙攣、精神症状(薬剤、尿毒症、ケトアシドーシス、電解質異常を除く)

 

9.

血算異常
Hematologic disorder

次のいずれか:溶血性貧血、白血球減少(<4000/mm3)、リンパ球減少(<1500/mm3)、血小板減少(<100,000/mm3)

 

10.

免疫異常
Immunologic disorder

次のいずれか:抗DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体

 

11.

抗核抗体
Antinuclear antibody

抗核抗体の陽性(薬剤によるものを除外)

 

上記4項目以上でSLEと分類する(出現時期は一致しなくともよい)

 

  • 2012年 SLICCの診断基準(Systemic Lupus International Collaborating Clinics)

一方、2012年版のSLICCでは臨床症状と免疫症状の2種類からなり、非常に緻密な診断基準が設けられています。SLICCが2012年に発表した診断基準の臨床項目は以下のとおりです。

臨床11項目

1.

急性皮膚ループス
Acute cutaneous lupus

皮膚筋炎を除外。ループス頬部皮疹(頬部円板状皮疹は含まない)、水疱性ループス、SLEに伴う中毒性表皮壊死症、斑状丘疹状ループス皮疹、光線過敏ループス皮疹。あるいは、亜急性皮膚ループス(瘢痕を残さずに治る非硬化性の乾癬状あるいは標的状皮疹。炎症後の色素沈着異常や毛細血管拡張症を伴うことはある。)

2.

慢性皮膚ループス
Chronic cutaneous lupus

古典的円板状皮疹:限局(頸部より上)あるいは全身(頸部ならびに頸部以下)、過形成(疣贅状)ループス、ループス脂肪織炎(深在性ループス)、粘膜ループス、凍瘡状ループス、円板状ループスと扁平苔癬の重複など。

3.

口腔潰瘍
Oral ulcers

口蓋、頬部、舌、あるいは鼻腔潰瘍。ただし血管炎、ベーチェット病、ヘルペスなどの感染症、炎症性腸疾患、反応性関節炎、酸性食品など他の既知の病因を除く。

4.

非瘢痕性脱毛
Nonscarring alopecia

びまん性に薄い、あるいは壊れた毛髪がみられる傷んだ毛髪。ただし円形脱毛症、薬剤性、鉄欠乏、男性ホルモンによる脱毛症など他の既知の病因を除く。

5.

滑膜炎
Synovitis

2カ所以上の関節腫脹あるいは滑液貯留を伴う滑膜炎。または、2カ所以上の関節痛と30分以上の朝のこわばり。

6.

漿膜炎
Serositis

一日以上続く典型的な胸膜炎、または胸水、胸膜摩擦音。一日以上続く典型的な心外膜痛(臥位で痛み、前かがみ座位で軽減する)、または心嚢液貯留、心外膜摩擦音、心エコーによる心外膜炎。ただし感染症、尿毒症、Dressler心外膜炎など他の既知の病因を除く。

7.

腎症
Renal disorder

尿蛋白/クレアチニン比(または24時間尿蛋白)で一日500mgの尿蛋白が推定される。または赤血球円柱。

8.

神経症状
Neurologic disorder

痙攣、精神障害、多発単神経炎(血管炎など他の病因を除く)、脊髄炎、末梢神経障害、脳神経障害(血管炎、感染症、糖尿病などの他の病因を除く)。急性錯乱状態(中毒、代謝疾患、尿毒症、薬剤性などの他の病因を除く)。

9.

溶血性貧血
Hemolytic anemia

 

10.

白血球減少、リンパ球減少
Leukopenia or Lymphopenia

少なくとも一回は白血球<4000/mm3。ただしフェルティ症候群、薬剤性、門脈圧亢進など他の病因を除く。あるいは、少なくとも一回はリンパ球<1000/mm3。ただしステロイドによるもの、薬剤性、感染症など他の病因を除く。

11.

血小板減少
Thrombocytopenia

少なくとも一回は<100,000/mm3。薬剤性、門脈圧亢進症、血栓性血小板減少性紫斑病などの他の病因を除く。

  • 全身性エリテマトーデス(SLE)における免疫学的項目(2012年版)

前述のとおり、2012年版は臨床症状と免疫症状の2種類に分かれています。免疫学的項目に関して、具体的には以下の異常が診断基準となります。

免疫6項目

1.

ANA(抗核抗体)陽性

2.

抗dsDNA抗体陽性 ELISAでは2回以上

3.

抗Sm抗体陽性

4.

抗リン脂質抗体

ループス抗凝固因子陽性

梅毒血性反応生物学的擬陽性

カルジオリピン抗体(2倍以上・中高度以上)

β2glycoprotein1

5.

補体低値

低C3

低C4

低CH50

6.

溶血性貧血がなく直接クームス陽性

臨床11項目と免疫6項目からそれぞれ1項目以上、合計4項目でSLEと分類する

* 項目が同時に出現する必要はない

* 腎生検でSLEに合致した腎症があり抗核抗体か抗dsDNA抗体が陽性であればSLEと分類する

大阪大学大学院医学系研究科 免疫・アレルギー内科学「全身性エリテマトーデス(SLE)」より。一部改変)

診断基準の変化

全身性エリテマトーデス(SLE)の診断基準はアメリカリウマチ学会(ACR)の1982年基準(1997年改訂)に基づいて行われていましたが、2012年にSLICC分類基準(Systemic Lupus International Collaborating Clinics)が発表され、診断基準が改良されました。これにより、過去のACRと比較して、臨床的項目と血液学的異常項目の独立がなされ、免疫学的項目では補体低値の項目が追加となりました。

日本における診断基準での問題

前項でアメリカの全身性エリテマトーデス(SLE)の診断基準が改良されたことをご紹介しましたが、日本で現在用いられている診断基準(1997年改訂版)ではまだ免疫学的項目の補体低値が入っていません。これは大きな問題であり、日本においても早急な改訂が求められています。

 

京都大学医学部を卒業後、同大学付属病院皮膚科・米国コロラド大学医学部皮膚科・浜松医科大学医学部皮膚科などを経て、1999年より和歌山県立医科大学皮膚科教授に就任。日本皮膚科学会の理事であり、特にアトピー性皮膚炎や全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとした膠原病の研究治療に関して著明な経歴を持つ。2011年より日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会理事長を務めるなど、学会活動も精力的に行っている。

関連記事