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全身性エリテマトーデス(SLE)の治療の選択肢と日常生活での注意点
全身性エリテマトーデス(SLE)の治療では、ステロイドが使われるようになり、死亡率が大きく低下しました。また、免疫抑制剤や新たな治療薬の登場によって治療の選択肢がさらに広がっています。薬物治療を...
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全身性エリテマトーデス(SLE)の治療の選択肢と日常生活での注意点

公開日 2016 年 12 月 09 日 | 更新日 2018 年 10 月 22 日

全身性エリテマトーデス(SLE)の治療の選択肢と日常生活での注意点
井畑 淳 先生

国立病院機構横浜医療センターリウマチ科部長

井畑 淳 先生

全身性エリテマトーデス(SLE)の治療では、ステロイドが使われるようになり、死亡率が大きく低下しました。また、免疫抑制剤や新たな治療薬の登場によって治療の選択肢がさらに広がっています。薬物治療を中心とした全身性エリテマトーデス(SLE)の治療について、国立病院機構横浜医療センターリウマチ科部長の井畑淳先生にお話をうかがいました。

全身性エリテマトーデス(SLE)の治療を大きく変えたステロイド

ステロイドの使用により死亡率が大きく下がった

全身性エリテマトーデス(SLE)の薬物治療では、副腎皮質ホルモンというステロイドが中心であり、主にプレドニゾロンという薬を使うことが多くなっています。ステロイドが使われる前の死亡率は今よりもかなり高く、4割を超えていたとされていますが、ステロイドをきちんと使えるようになってから死亡率が大きく下がりました。

ステロイドの長期使用による副作用の問題

薬イメージ

感染症にかかりやすくなるなどリスクもついてくる

ステロイドを多く使えばたしかに病気はよくなりますが、その分だけ副作用も強く出るようになります。長期的に使い続けることによって、たとえば背骨がボロボロになって背が縮んでしまったり、あるいは感染症にかかりやすくなって何度も入退院を繰り返すことになるかもしれないというリスクがあります。

全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんは通常よりも動脈硬化が進みやすいため、40代で心筋梗塞(しんきんこうそく)が起きることもあります。私が担当した患者さんの中にも、大動脈瘤乖離(だいどうみゃくりゅうかいり)を発症し、残念なことに30代の若さで出産後そのままお亡くなりになったというケースがありました。

ステロイドの長期使用は動脈硬化をより進める要因となることがわかっています。その患者さんも長くステロイドを使っていましたが、全身性エリテマトーデス(SLE)という病気そのものが動脈硬化を起こしやすいことに加えて、ステロイドの副作用がさらに動脈硬化を悪化させる要因となった不幸な例といえるでしょう。そういった意味でも、薬物治療では長い目で見て管理を行っていくことが大事です。

全身性エリテマトーデス(SLE)の治療における免疫抑制剤の役割

ステロイドとの併用により再燃を減らす

ステロイドだけを使っていると、薬の使用量を減らしていったときに症状の再燃が起きやすいという問題があります。これに対して、過去の研究において免疫抑制剤を併用することによって再燃を減らすことができるという報告がなされました。それ以来、特に腎臓の炎症に対しては免疫抑制剤を併用することが中心になってきています。現在ではステロイドを使う場合には、できるだけ炎症がひどいときにだけ使うようにして、炎症が治まったらステロイドは減らしていくようにするいうことが基本的な考え方になっています。

患者さんのライフステージに合わせた治療プランも大切

親子イメージ

若い女性の患者さんが多い全身性エリテマトーデス(SLE)では、妊娠・出産というのは切実な問題です。妊娠は病気を悪化させるリスク要因となるため、子どもを持ちたいという希望を叶えるためには病気のコントロールができていなければなりませんし、免疫抑制剤を使うことは難しくなります。そういったことも選択肢としながら総合的に治療方針を考えていかなければ、患者さんにとって納得できる治療にはならないと考えています。

免疫抑制剤はどのような目的で使われるのか

再燃の回避とステロイドの減薬という2つの意味をもつ

最近の研究では、免疫抑制剤を使うことによって、ステロイドを最初からまったく使わずに治療することができないかという試みも行われています。もちろんそれができれば、ある意味理想的な治療であるともいえるのですが、実際のところはそれでうまくいくケースも何割かあるというレベルです。やはりどうしようもなくなると、レスキューとしてステロイドで治療をすることになります。ですから、私自身は全身性エリテマトーデス(SLE)の治療においては、まだステロイドを完全に治療の中心から外すということはできないのではないかと考えています。

病気をコントロールする上で免疫抑制剤を使うということには、再燃の回避とステロイドの減薬という2つの意味があります。つまり病気が再び悪くなることを避けつつ、効果的にステロイドの量を減らすために免疫抑制剤を使っているのです。

免疫抑制剤もステロイドも異常な免疫反応だけを抑えることはできない

記事1「全身性エリテマトーデス(SLE)とはどのような病気?顔の湿疹や腎炎といった症状が特徴である全身性の免疫疾患」で最初に申し上げたように、この病気はある意味余分な免疫の反応が起きているという状態にあります。本来の正常な免疫反応も起きているのですが、同時に自分の体に不具合をもたらすような免疫反応が余分に起きているというのが、SLEを含むその他の免疫の病気にも共通するところです。

免疫抑制剤とステロイドのどちらも、異常な免疫反応だけを抑えるということはできません。本来の正常な免疫の反応も一緒に全部抑えてしまいます。その結果、全体として免疫の働きが低下することによって感染症にかかりやすくなるなどの副作用が出てきます。余分な免疫反応だけを抑えるという治療は残念ながらまだ開発されていないため、免疫全体を抑え過ぎてしまわないようにうまく調整していくということが治療の中心となっています。

免疫抑制剤の進歩、より副作用の少ない薬剤へ

点滴イメージ

全身性エリテマトーデス(SLE)の治療に使われてきた免疫抑制剤で、歴史のある薬としてよく知られているのはシクロホスファミド(エンドキサン®)です。これは内服薬として使用すると副作用が強いため、主に点滴で使われています。腎臓の炎症が悪化して従来であれば透析を受けなければならなかったような症例が、この薬を使うことによって透析を受けずに済むようになったという報告があります。このことは全身性エリテマトーデス(SLE)の治療において、ステロイド治療に次ぐ2番目のエポックメイキングな出来事であったといえます。

ただし、シクロホスファミド(エンドキサン®)には長期にわたって使うことによる副作用がありました。膀胱がんや尿管のがんを誘発する発がん作用があるほか、出血性膀胱炎という病気や卵巣機能の抑制による不妊などの副作用があることがわかっています。

そのため、シクロホスファミド(エンドキサン®)の使用にあたっては投与期間を短縮したりするといったことも行われましたが、海外ではこれに代わってミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®)という薬が中心に使われるようになってきています。これは経口の内服薬で、シクロホスファミド(エンドキサン®)よりも副作用が少なく、ほぼ同等の効果が得られるといわれています。

海外では症状が非常に重い患者を除けば、いわゆる寛解の導入と呼ばれるような、治療の初期の段階でこのミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®)を使っていくようになってきています。日本でも2015年に保険適応が拡大され、全身性エリテマトーデス(SLE)のループス腎炎に対して使えるようになったので、最近では国内でもかなり使っている患者さんが増えているものと思われます。

3種類の免疫抑制剤のうち、日本人のループス腎炎に有効なものは?

海外で先行して使われている薬剤のデータについては人種差などもあるため、日本で多くの患者さんに使っていくためには、やはり日本やアジアでの治療成績はどうなのかというデータが必要です。疾患に対する治療の感受性、すなわちその治療がどのくらい効くかということについての研究が進められており、現在の結果としてミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®)は日本やアジアでもそれなりに効果を示しているようです。

逆にタクロリムス(プログラフ®)という薬は海外では使われていませんが、ループス腎炎にはよく効くといわれており、日本では使うことができます。国内ではまだ十分なデータが出そろっていませんが、香港・アジアを中心に非常によいデータが出ていて、これもやはり治療には使える薬となっています。ですから、免疫抑制剤としての位置付けではシクロホスファミド(エンドキサン®)、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®)、タクロリムス(プログラフ®)の3種類がループス腎炎に対する治療の中心になる薬ということになります。

もうひとつ重要な点は薬の用量です。海外で使われている用量で日本人に対してそのまま使っていいのかどうか、それとも実はそこまでの用量は必要ないのではないかということもありますし、逆に一定量以上使わなければ十分な効果が得られないという場合もあります。

また、免疫の過抑制(かよくせい)という問題もあります。免疫抑制剤で免疫を抑えることによって副作用が増えてしまう可能性もあるので、それをどこまで抑えるのかということが重要です。

ハイドロキシクロロキン(プラケニル)とはどのような薬か

最近新しく使えるようになったものでは、ハイドロキシクロロキン(プラケニル®)という薬があります。もともとは抗マラリア薬として使われていた薬で、海外では40年ほど前から出ているものですが、日本でも2015年に全身性エリテマトーデス(SLE)の薬として承認されました。

これはきちんと副作用対策をすれば非常に使いやすい薬で、関節の痛みや皮膚の湿疹によく効くといわれています。また、全身性エリテマトーデス(SLE)の中でも重症型といわれるものにみられるような頭部の炎症に対しても、予防効果や再発抑制効果があるのでないかといわれています。

さまざまな治療の選択肢がある現在、患者さんにも正しい知識が必要とされる

診察イメージ

全身性エリテマトーデス(SLE)の治療において、病状が悪くなったときをどうするかという、いわゆる急性期に関しては本当にいい治療ができるようになっています。これまで述べてきたようにさまざまな薬があるということは、それだけ選択肢が広いということですから、仮に最初の治療がうまくいかなくても、患者さんには次の治療を提示することができます。

我々医師にとっては論文になっているデータも重要ですが、それが本当に自分の診ている患者さんに当てはまるのかどうかという視点も大切です。短期的にいいかどうかということだけではなく、それが目の前の患者さんの人生をよくしてあげられるのかどうかいうことも大事だと考えています。

全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんは若い女性が多いので、仕事を続けていくことや結婚して子供を産むことも含めたライフサイクルを、どこまでご本人の望むように遂げられるのかということを考える必要があります。

そのためには、それぞれの薬剤について長期の副作用を考慮した上で、それらを前もって予防していかなければなりません。さまざまな副作用に関してあらかじめ対策を立てておけば、患者さんはつまずくことなく人生を歩んでいくことができるでしょうし、ご本人が意識しなくてもトラブルなく過ごせるように指導できれば、それはある意味理想的な治療だといえるのかもしれません。

しかし、やはり患者さんにも病気に関する正しい知識をある程度持っていただく必要があります。たとえば、病気の状態が悪くなったときにはどうしたらいいか、日常生活ではどんなことに注意しなければならないかなど、私たちが患者さんとディスカッションをしていく上で最低限知っておいていただきたいこともあるのです。

紫外線対策などできることは対策をすることが大切

日焼け対策イメージ

全身性エリテマトーデス(SLE)にとってよくないとされているものには紫外線・ストレス・妊娠・感染症などがあります。たとえば紫外線に関していえば、日焼け止めの塗り薬を使い、帽子や長袖の衣服を着用するなどの工夫も大切ですし、出かける際に日差しの強い時間帯を避けるなどによって、行動の制限をあまり意識しないで生活できるようにすることも大事なのではないかと考えています。

私がこれまで診てきた患者さんの中には、ビーチバレーをやっていたために病気が悪くなって受診された方もいらっしゃいました。悪くなってしまったものは仕方がありませんし、病気が悪くなるからといってビーチバレーをあきらめなさいといえるのかどうかは難しい問題です。しかし、その患者さんの場合は入院しなければならないほど悪い状態になっていましたので、私は医師として、もう少し病気のことを考えたほうがいいのではないか、ということはお伝えしました。

どうしてもやりたいんだということを事前に言っていただければ、それに対してどうすればいいかということを一緒に考え、対応を話し合うこともできます。そういった意味でも、患者さんに正しい知識を身につけていただくことは大切です。

インターネット上の情報は症状が重い方の体験に基づいたものや特殊な症例など偏った情報が多く見受けられますが、実際には元気で普通の生活を送っている方もたくさんいらっしゃいます。また、逆にこんなときにはどうしたらいいのだろうと思ったときにも、根拠に基づいた正しい情報があれば、患者さん自身で早めに対策をとる手助けにもなるのです。

 

全身性エリテマトーデス(井畑淳先生)の連載記事

横浜市立大学医学部を卒業後、横浜市立大学大学院病態免疫制御内科学教室にて研究を行う。生体の免疫に深く関わる感染症・リウマチ・血液内科・呼吸器内科に精通。広範な知見と経験をもとに、膠原病リウマチ内科で診療に携わると同時に、後進の育成にも力を注いでいる。

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